都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「百椿図」 根津美術館
根津美術館
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」
1/7-2/21

根津美術館で開催中の「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」のプレスプレビューに参加してきました。
江戸時代、空前の園芸ブームが起こり、珍しい品種への注目が高まりましたが、その火付け役ともなったのが日本固有の種の椿であることをご存知でしょうか。

「百椿図」 伝狩野山楽 2巻 紙本着色 江戸時代
そうしたブームを背景に17世紀初頭、いわゆる寛永文化の世に制作されたのが、今回出品された「百椿図」です。
この作品を描いたのは京狩野家の祖、狩野山楽とも伝えられていますが、ともかくは全2巻、計24メートルにも及ぶ絵巻空間の中に、何と約100種にも及ぶ椿がこれ見よがしと登場していました。

「百椿図」 不動 人見竹洞
赤や白など、色鮮やかな椿そのものの美しい描写にも魅了されるところですが、この「百椿図」でとりわけ興味深いのは、青磁碗や水指、それに鼓や高杯など、身近にある様々な器物を花器に見立て、椿と取り合わせている点に他なりません。

「百椿図」 紅散椿 林鵞峰
まさに江戸時代のフラワーアレンジメントです。ここでは箒には白椿の花を、対のちりとりには紅色の椿の花びらを添えています。そうした誂えの妙味も、「百椿図」の大きな見どころでした。
なおこの「百椿図」の椿は現在、見る事の出来ない種もあるそうですが、それとともにかの時代の風習を知ることが出来るのもまた一興かもしれません。

「百椿図」 つなぎ
一例がこの大根です。これは当時、椿を他人に分ける時、水分を失わせないため、大根に挿して渡していたのだそうです。
また「百椿図」には光圀や羅山など、49名の貴人たちによる賛が記されています。
ちなみにこの作品をプロデュースしたのは明石藩主をつとめた松平忠国でしたが、その賛の蒐集が最後まで終わらず、息子の信之に至る二代に渡って書いてもらったそうです。椿にかける松平親子の想いが伝わるエピソードと言えるかもしれません。
また会場では「百椿図」の他に、椿に因んだ絵画や工芸品も展示されています。

「色絵椿文輪花向付」 尾形乾山 5口 江戸時代
そういえば乾山も椿をモチーフとした器をよく手がけていました。
椿は万葉集にも歌われるほど古くから愛された花でしたが、実際に絵画のモチーフとなったのは鎌倉時代になってからのことです。椿を巧みに水墨で描いた室町時代の「花鳥図」なども紹介されていました。

展示室2「天部の絵画」会場風景
さらに展示室2では「天部の絵画」と題し、たとえば弁財や吉祥天など、福徳にまつわる神を描いた作品も展示されています。

「銹絵富士山図茶壺」 野々村仁清 1口 江戸時代
また階上、展示室5の「山水の器」にあった、富士と三保松原の景色を簡素に示した仁清の「銹絵富士山図茶壺」も魅力ある品ではないでしょうか。

「龍図屏風 (龍虎図屏風のうち)」 雪村 6曲1双のうち1隻 紙本墨画 室町時代
その他では今年の干支にも因み、特別に出品された雪村の「龍図屏風」なども目を引きます。まさしく新春を祝うのに相応しい展覧会と言えそうです。
根津美術館アプリでも情報更新中です。

2月12日まで開催されています。
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」 根津美術館
会期:1月7日(土)~2月12日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)は休館。
時間:10:00~17:00
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」
1/7-2/21

根津美術館で開催中の「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」のプレスプレビューに参加してきました。
江戸時代、空前の園芸ブームが起こり、珍しい品種への注目が高まりましたが、その火付け役ともなったのが日本固有の種の椿であることをご存知でしょうか。

「百椿図」 伝狩野山楽 2巻 紙本着色 江戸時代
そうしたブームを背景に17世紀初頭、いわゆる寛永文化の世に制作されたのが、今回出品された「百椿図」です。
この作品を描いたのは京狩野家の祖、狩野山楽とも伝えられていますが、ともかくは全2巻、計24メートルにも及ぶ絵巻空間の中に、何と約100種にも及ぶ椿がこれ見よがしと登場していました。

「百椿図」 不動 人見竹洞
赤や白など、色鮮やかな椿そのものの美しい描写にも魅了されるところですが、この「百椿図」でとりわけ興味深いのは、青磁碗や水指、それに鼓や高杯など、身近にある様々な器物を花器に見立て、椿と取り合わせている点に他なりません。

「百椿図」 紅散椿 林鵞峰
まさに江戸時代のフラワーアレンジメントです。ここでは箒には白椿の花を、対のちりとりには紅色の椿の花びらを添えています。そうした誂えの妙味も、「百椿図」の大きな見どころでした。
なおこの「百椿図」の椿は現在、見る事の出来ない種もあるそうですが、それとともにかの時代の風習を知ることが出来るのもまた一興かもしれません。

「百椿図」 つなぎ
一例がこの大根です。これは当時、椿を他人に分ける時、水分を失わせないため、大根に挿して渡していたのだそうです。
また「百椿図」には光圀や羅山など、49名の貴人たちによる賛が記されています。
ちなみにこの作品をプロデュースしたのは明石藩主をつとめた松平忠国でしたが、その賛の蒐集が最後まで終わらず、息子の信之に至る二代に渡って書いてもらったそうです。椿にかける松平親子の想いが伝わるエピソードと言えるかもしれません。
また会場では「百椿図」の他に、椿に因んだ絵画や工芸品も展示されています。

「色絵椿文輪花向付」 尾形乾山 5口 江戸時代
そういえば乾山も椿をモチーフとした器をよく手がけていました。
椿は万葉集にも歌われるほど古くから愛された花でしたが、実際に絵画のモチーフとなったのは鎌倉時代になってからのことです。椿を巧みに水墨で描いた室町時代の「花鳥図」なども紹介されていました。

展示室2「天部の絵画」会場風景
さらに展示室2では「天部の絵画」と題し、たとえば弁財や吉祥天など、福徳にまつわる神を描いた作品も展示されています。

「銹絵富士山図茶壺」 野々村仁清 1口 江戸時代
また階上、展示室5の「山水の器」にあった、富士と三保松原の景色を簡素に示した仁清の「銹絵富士山図茶壺」も魅力ある品ではないでしょうか。

「龍図屏風 (龍虎図屏風のうち)」 雪村 6曲1双のうち1隻 紙本墨画 室町時代
その他では今年の干支にも因み、特別に出品された雪村の「龍図屏風」なども目を引きます。まさしく新春を祝うのに相応しい展覧会と言えそうです。
根津美術館アプリでも情報更新中です。

2月12日まで開催されています。
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」 根津美術館
会期:1月7日(土)~2月12日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)は休館。
時間:10:00~17:00
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「北京故宮博物院200選」(後編 清明上河図) 東京国立博物館
東京国立博物館
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

前編「宋・元絵画」、中編「清朝の文化」に続きます。東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
さて今回の故宮展において半ば電撃的に出品が決まったのが、「中国が世界に誇る至宝」(公式サイトより引用)、「清明上河図」です。中国でも滅多に出ることのない神品、また現地で公開される際も数時間待ちになるという人気作が、初めて国外、つまりは海を渡り、ここ日本へとやってきました。
12世紀、殆ど詳しいことが分かっていない謎の宮廷画家、張択端によって描かれたのは、北宋の首都・開封に集う庶民たちの日常の生活でした。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
作品の縦の長さは僅か25センチ弱(横は5メートル)と、決して大きくはありません。しかしながらその狭い空間には、まさに絹糸一本に一つの線、或はそれ以上とも言えるほどに細かい線によって、たとえば少年に引かれるロバや物売り、そして軒先で洗濯中の女性に船上で騒ぐ人々といった、何ら飾り立てのない人々の生活が事細かに表現されています。
ともかくこれほど細密な線描、精緻な表現で描かれた作品を他に見たことがありません。これが人の手で描かれたということがにわかには信じられないほどでした。
またその細密表現と並び、作品において印象に深いのは、全体を眺める視点、安定した構図感と、図版では伝わりにくい彩色の美しさです。
言ってしまえばここに登場する庶民たちは雲の上から眺める神の視点で描かれています。
それこそ手を伸ばしても届く距離にはありませんが、たとえば遠い風景を双眼鏡でのぞき込んだ時に対象が拡大されて見えるのと同じように、目を近づけて凝らせば凝らすほど、ここに描かれた人々の日常が、さも実際に動いているかのように浮き上がってくるわけです。
有りのままの日常をダイレクトに写すというこの徹底した写実表現は、もちろん人々の生き生きとした様子こそ示されているものの、どこか全体を見渡すゆるぎのない、言わば超然として視点があるように感じてなりません。背筋がぞっとするほどに突き詰められたリアリズムがここに実現していました。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
さて既に大きな話題になっていますが、最後に触れたいのは混雑の状況です。初日から入場制限がかかり、この「清明上河図」に至っては連日、最大で2時間から3時間、あるいはそれを超えるほどの待ち時間が発生しています。
ここ数日は展覧会への入場、つまり「清明上河図」以外の観覧に関しての待ち時間は解消されましたが、「清明上河図」に関しては1月24日で展示が終了することもあり、今度さらに混雑に拍車がかかることも予想されます。
一番待ち時間を少なく観覧する方法としては朝、開館時間よりもかなり前に正門前に並び、開館と同時に入場、そのまま「清明上河図」(第一会場の最後。)へと進むのが良いそうです。
如何せん小さな作品でもあるので、壁画や大きな絵画を見るのと同じようにはいきません。そうした作品の性質上もあってか、どうしても長大な行列が出来てしまうそうですが、ともかくもご観覧には十分な時間的余裕をもって出かけください。
なお混雑状況については公式サイトで随時更新されています。
「北京故宮博物院200選」公式サイト
また「清明上河図」に関しては公式サイトの「清明上河図であそぼう」のコーナーがおすすめです。
「清明上河図であそぼう」
作品の全編にわたってWEB上で拡大して楽しむことが出来ます。ともかく会場では長蛇の列もあり、観覧時間も数分と僅かです。あらかじめこちらで見たいポイントを絞るのも良いかもしれません。
また博物館公式ブログ「1089ブログ」にも「清明上河図」の見どころが紹介されています。
「ようこそ日本へ!清明上河図! 前編/後編」@1089ブログ
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
前編「宋・元絵画」
中編「清朝の文化」
「清明上河図」は1月24日で展示が終わりますが、それを除いたとしても見応えのある展覧会と言えるのではないでしょうか。故宮展では過去最大スケールというのにも納得しました。

「琺瑯蓮唐草八卦文炉」 1口 清時代・康熙年間(1662-1722)
2月19日まで開催されています。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

前編「宋・元絵画」、中編「清朝の文化」に続きます。東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
さて今回の故宮展において半ば電撃的に出品が決まったのが、「中国が世界に誇る至宝」(公式サイトより引用)、「清明上河図」です。中国でも滅多に出ることのない神品、また現地で公開される際も数時間待ちになるという人気作が、初めて国外、つまりは海を渡り、ここ日本へとやってきました。
12世紀、殆ど詳しいことが分かっていない謎の宮廷画家、張択端によって描かれたのは、北宋の首都・開封に集う庶民たちの日常の生活でした。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
作品の縦の長さは僅か25センチ弱(横は5メートル)と、決して大きくはありません。しかしながらその狭い空間には、まさに絹糸一本に一つの線、或はそれ以上とも言えるほどに細かい線によって、たとえば少年に引かれるロバや物売り、そして軒先で洗濯中の女性に船上で騒ぐ人々といった、何ら飾り立てのない人々の生活が事細かに表現されています。
ともかくこれほど細密な線描、精緻な表現で描かれた作品を他に見たことがありません。これが人の手で描かれたということがにわかには信じられないほどでした。
またその細密表現と並び、作品において印象に深いのは、全体を眺める視点、安定した構図感と、図版では伝わりにくい彩色の美しさです。
言ってしまえばここに登場する庶民たちは雲の上から眺める神の視点で描かれています。
それこそ手を伸ばしても届く距離にはありませんが、たとえば遠い風景を双眼鏡でのぞき込んだ時に対象が拡大されて見えるのと同じように、目を近づけて凝らせば凝らすほど、ここに描かれた人々の日常が、さも実際に動いているかのように浮き上がってくるわけです。
有りのままの日常をダイレクトに写すというこの徹底した写実表現は、もちろん人々の生き生きとした様子こそ示されているものの、どこか全体を見渡すゆるぎのない、言わば超然として視点があるように感じてなりません。背筋がぞっとするほどに突き詰められたリアリズムがここに実現していました。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
さて既に大きな話題になっていますが、最後に触れたいのは混雑の状況です。初日から入場制限がかかり、この「清明上河図」に至っては連日、最大で2時間から3時間、あるいはそれを超えるほどの待ち時間が発生しています。
ここ数日は展覧会への入場、つまり「清明上河図」以外の観覧に関しての待ち時間は解消されましたが、「清明上河図」に関しては1月24日で展示が終了することもあり、今度さらに混雑に拍車がかかることも予想されます。
一番待ち時間を少なく観覧する方法としては朝、開館時間よりもかなり前に正門前に並び、開館と同時に入場、そのまま「清明上河図」(第一会場の最後。)へと進むのが良いそうです。
如何せん小さな作品でもあるので、壁画や大きな絵画を見るのと同じようにはいきません。そうした作品の性質上もあってか、どうしても長大な行列が出来てしまうそうですが、ともかくもご観覧には十分な時間的余裕をもって出かけください。
なお混雑状況については公式サイトで随時更新されています。
「北京故宮博物院200選」公式サイト
また「清明上河図」に関しては公式サイトの「清明上河図であそぼう」のコーナーがおすすめです。
「清明上河図であそぼう」
作品の全編にわたってWEB上で拡大して楽しむことが出来ます。ともかく会場では長蛇の列もあり、観覧時間も数分と僅かです。あらかじめこちらで見たいポイントを絞るのも良いかもしれません。
また博物館公式ブログ「1089ブログ」にも「清明上河図」の見どころが紹介されています。
「ようこそ日本へ!清明上河図! 前編/後編」@1089ブログ
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
前編「宋・元絵画」
中編「清朝の文化」
「清明上河図」は1月24日で展示が終わりますが、それを除いたとしても見応えのある展覧会と言えるのではないでしょうか。故宮展では過去最大スケールというのにも納得しました。

「琺瑯蓮唐草八卦文炉」 1口 清時代・康熙年間(1662-1722)
2月19日まで開催されています。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「北京故宮博物院200選」(中編 清朝の文化) 東京国立博物館
東京国立博物館
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

前編「宋・元絵画」に続きます。東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
展覧会の章立てとして第一部「故宮博物院の至宝」、第二部「清朝宮廷文化の精粋」とあるように、会場後半で展示されているのは中国最後の王朝、清にまつわる様々な品々です。

「明黄色彩雲金龍文こく絲朝袍」1領 清時代・嘉慶年間(1796-1820)
第二会場の入口は皇帝の礼服、「明黄色彩雲金龍文こく絲朝袍」が待ち構えます。その黄色の鮮やかな色合いに引かれる方も多いのではないでしょうか。
またこうした衣服で特に印象深いのは「孔雀はね地真珠珊瑚雲龍文刺繍袍」です。

「孔雀はね地真珠珊瑚雲龍文刺繍袍」 1領 清時代・乾隆年間(1736-1795)頃
これこそ清朝においても最も技術が際立った乾隆期につくられた吉服ですが、そこにあしらわれた精緻な紋様に要注目です。
なんと図柄のコウモリには真珠や珊瑚のビーズが、また服の一部には孔雀の羽などが用いられています。よく日本の文化の一つの特質として「バサラ」などいう言葉がありますが、この色に模様に鮮烈な刺繍を見ていると、そのようなイメージもわきあがってくるかもしれません。

「乾隆帝像」 1幅 清時代・乾隆元年(1736)
またその清朝の文化、政治、経済の爛熟期に在位した乾隆帝の肖像では、即位の年、25歳の時に描かれたという「乾隆帝像」を見逃すことは出来ません。西洋の肖像画法を用いて表されたこの作品は、一連の乾隆帝肖像画の中でも最良に位置づけられるとのことでした。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
さてここで第二部において最も興味深い絵巻が登場します。それが王き等による「康熙帝南巡図巻」です。
ゆうに20メートルをこえる絵巻が二つ並んでいる姿だけでも壮観ですが、ここには清の第四代の皇帝である康煕帝が1684年から1707年にかけて6度南巡した様子が事細かに記されています。

「康熙帝南巡図巻 第12巻」 王き等筆 1巻(12巻のうち) 清時代・康熙30年(1691)
この南巡図巻は計12巻あり、うち9巻が現存、そして1、9~12が故宮、2と4がパリのギメ、そして3と7がアメリカのメトロポリタン美術館に収蔵されているそうですが、今回は故宮の2点、11と12巻が出品されました。
12巻は最終巻です。康煕帝が南巡を終え、北京、ようは紫禁城へと帰還する姿が描かれています。整然と並ぶ康煕帝一行の最後には、「天子万年」という人文字が記されていました。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
さて清代宮廷に陳列されていたという青銅器から陶磁器、また卓などを経由すると、このセクションでも最大の見せ場と言える展示が登場します。
それが故宮内部、歴代皇帝が日常の起居、政務を行った養心殿のすぐ西側にあった書斎、三希堂の再現展示に他なりません。

「三希堂」再現展示
乾隆帝はこの八平米ほどの小さな室内に王羲之の書の他、様々な文具等をもちこみ、約60年余りの歳月を過ごしました。
ちなみにこの三希堂の中にある文物はいずれもレプリカではなく本物です。臨場感のある展示ではないでしょうか。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
ラストはチベットの仏教美術品です。たとえば乾隆帝が北京で初めてチベットの仏教僧院を造営するなど、清朝とチベット仏教はただならぬ関係にあったそうですが、法具や「大威徳金剛立像」など、見応えのある作品もいくつか紹介されていました。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
それでは後編「清明上河図」へと続きます。
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
前編「宋・元絵画」
後編「清明上河図」
2月19日まで開催されています。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

前編「宋・元絵画」に続きます。東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
展覧会の章立てとして第一部「故宮博物院の至宝」、第二部「清朝宮廷文化の精粋」とあるように、会場後半で展示されているのは中国最後の王朝、清にまつわる様々な品々です。

「明黄色彩雲金龍文こく絲朝袍」1領 清時代・嘉慶年間(1796-1820)
第二会場の入口は皇帝の礼服、「明黄色彩雲金龍文こく絲朝袍」が待ち構えます。その黄色の鮮やかな色合いに引かれる方も多いのではないでしょうか。
またこうした衣服で特に印象深いのは「孔雀はね地真珠珊瑚雲龍文刺繍袍」です。

「孔雀はね地真珠珊瑚雲龍文刺繍袍」 1領 清時代・乾隆年間(1736-1795)頃
これこそ清朝においても最も技術が際立った乾隆期につくられた吉服ですが、そこにあしらわれた精緻な紋様に要注目です。
なんと図柄のコウモリには真珠や珊瑚のビーズが、また服の一部には孔雀の羽などが用いられています。よく日本の文化の一つの特質として「バサラ」などいう言葉がありますが、この色に模様に鮮烈な刺繍を見ていると、そのようなイメージもわきあがってくるかもしれません。

「乾隆帝像」 1幅 清時代・乾隆元年(1736)
またその清朝の文化、政治、経済の爛熟期に在位した乾隆帝の肖像では、即位の年、25歳の時に描かれたという「乾隆帝像」を見逃すことは出来ません。西洋の肖像画法を用いて表されたこの作品は、一連の乾隆帝肖像画の中でも最良に位置づけられるとのことでした。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
さてここで第二部において最も興味深い絵巻が登場します。それが王き等による「康熙帝南巡図巻」です。
ゆうに20メートルをこえる絵巻が二つ並んでいる姿だけでも壮観ですが、ここには清の第四代の皇帝である康煕帝が1684年から1707年にかけて6度南巡した様子が事細かに記されています。

「康熙帝南巡図巻 第12巻」 王き等筆 1巻(12巻のうち) 清時代・康熙30年(1691)
この南巡図巻は計12巻あり、うち9巻が現存、そして1、9~12が故宮、2と4がパリのギメ、そして3と7がアメリカのメトロポリタン美術館に収蔵されているそうですが、今回は故宮の2点、11と12巻が出品されました。
12巻は最終巻です。康煕帝が南巡を終え、北京、ようは紫禁城へと帰還する姿が描かれています。整然と並ぶ康煕帝一行の最後には、「天子万年」という人文字が記されていました。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
さて清代宮廷に陳列されていたという青銅器から陶磁器、また卓などを経由すると、このセクションでも最大の見せ場と言える展示が登場します。
それが故宮内部、歴代皇帝が日常の起居、政務を行った養心殿のすぐ西側にあった書斎、三希堂の再現展示に他なりません。

「三希堂」再現展示
乾隆帝はこの八平米ほどの小さな室内に王羲之の書の他、様々な文具等をもちこみ、約60年余りの歳月を過ごしました。
ちなみにこの三希堂の中にある文物はいずれもレプリカではなく本物です。臨場感のある展示ではないでしょうか。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
ラストはチベットの仏教美術品です。たとえば乾隆帝が北京で初めてチベットの仏教僧院を造営するなど、清朝とチベット仏教はただならぬ関係にあったそうですが、法具や「大威徳金剛立像」など、見応えのある作品もいくつか紹介されていました。

第二部「清朝宮廷文化の精粋」展示室風景
それでは後編「清明上河図」へと続きます。
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
前編「宋・元絵画」
後編「清明上河図」
2月19日まで開催されています。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「北京故宮博物院200選」(前編 宋・元絵画) 東京国立博物館
東京国立博物館
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
中国文明を象徴するともされる北京の故宮博物院ということで、これまでにも収蔵品を何度か国外で公開する機会はありましたが、今回ほど幅広いジャンルの文物が出品されたことは一度もありませんでした。
とりわけ重要なのは、かつては門外不出とされてきた、中国美術史上でも重要な宋・元時代の書画が約40点ほど展示されていることです。

第1部「故宮博物院の至宝」展示室風景
その中には今回、中国本土以外で初めて公開されることになった神品「清明上河図」も含まれていますが、単に見るべきものがその一点だけでなく、出品作のいずれもが粒ぞろいの品であるのも重要なポイントかもしれません。
展覧会の構成は以下の通りです。
第1部 「故宮博物院の至宝」皇帝たちの名品
第2部 「清朝宮廷文化の精粋」多文化のなかの共生
第1章 清朝の礼制文化―悠久の伝統
第2章 清朝の文化事業―伝統の継承と再編
第3章 清朝の宗教―チベット仏教がつなぐ世界
第4章 清朝の国際交流―周辺国との交流
初めに宋元期の書画を据え、古代からの青銅器、玉器、また明清の染織品や陶磁器などを展観した上で、後半に故宮博物院こと紫禁城が名実共に中国の中心だった清の文化を表す様々な文物を紹介する流れとなっていました。
「清明上河図」を除き、総計200点が全会期中公開されているという、質量ともに充実した展覧会です。(出品リスト)というわけで拙ブログでは前編に「宋・元絵画」、中編に「清朝の文化」、そして後編を「清明上河図」と分け、その内容をご紹介していきたいと思います。
さてこの冒頭、宋元期の書画こそ、本展のハイライトとしても過言ではないかもしれません。
まず面白いのが、北宋期、太湖石に「神護」という文字が現れた事蹟を描いた趙佶(徽宗)の「祥龍石図巻」です。この時代、こうした文字が浮かび上がった奇岩を瑞物として貴重に扱っていたそうですが、その岩が重厚感のある堂々たるタッチで示されています。

「長江万里図巻 」趙ふつ筆 1巻 南宋時代・12世紀
また奇岩と言えば忘れられないのが、雄大な長江の風景を描いた「長江万里図巻」です。それこそ靄に隠れた岩山の立ち並ぶ上流より一気呵成、わきたつ河の波紋、そして浮かぶ船、さらにはそこに集う人々が、精緻な描写で表されています。
これを見て大観の生々流転を思い出しました。その景色を追っていくと、あたかも実際に船に乗り、長江を下って楽しんでいるかのような旅情をも味わえる作品と言えるかもしれません。

右、「双鈎竹図軸」李えん筆 1幅 元時代・14世紀。中央、「清ひ閣墨竹図軸」柯九思筆 1幅 元時代・至元4年(1338)。
中国絵画でよく目にする竹をモチーフとした2点の作品もまた忘れることが出来ません。「双鈎竹図軸」では岩場に切り立つ竹の様子を俯瞰的な形にて、また「清ひ閣墨竹図軸」では柔らかくニュアンスに富んだ墨の筆致にて、時に風に靡くような竹を描いています。
また「双鈎竹図軸」の作者、李かんは中国ではじめて詳細な画竹の解説書、ようは竹の描き方を本に著した人物だそうです。うっすらと緑色を帯びた笹の濃淡は、確かに真に迫るものがありました。

「出水芙蓉図冊」 1枚 南宋時代・13世紀
また総じてモノトーン調の絵画が多い中、一際鮮やかな彩色で目を引くのが「出水芙蓉図冊」ではないでしょうか。君子や多子の象徴ともされ、古来より中国では尊重された蓮を描いたこの作品は、ほのかに桃色を帯びた色味が大変に魅力的でした。
さて「清明上河図」を含めても今回、私が最も感動したのが趙孟ふの「水村図巻」に他なりません。

「水村図巻」 趙孟ふ筆 1巻 元時代・大徳6年(1302)
既に中国山水画史上最高の傑作とも名高い作品ではありますが、実物を前にして、その美しい山水の景色が生み出す類い稀な叙情性には強く心を打たれました。
繊細な淡墨の筆致は、水辺と大地、はたまた大気までが渾然一体となった中国の田園を、それこそ平面的な二次元を超えたかのような奥行きと広がりのある三次元的空間に表現しています。
またこの静まり返った風景の中にも生命、ようは小鳥や漁労の人々が小さくとも描き入れられている点も見逃せません。大自然の中で生きる人々の暮らしがまさに牧歌的と言える様子にて示されていました。

「方盤」 1口 戦国時代・前5世紀
この後は紀元前16世紀の玉にはじまり、春秋戦国期の青銅器、さらには時代を超えて宋の青磁から元の漆工、また清の刺繍に至る様々な工芸、装飾の品々が待ち構えています。

中央右、「爵」 1口 西周時代・前10-前9世紀
非常にデコラティブな青銅器は以前、東博での中国文明展でもいくつか楽しむことが出来ましたが、たとえば鳥を象った「爵」の巧みなバランス感覚に則った造形美や、虎の脚を持ち、容器の内外面を魚や亀などの無数の紋様で埋めた「方盤」などからは、改めて古代中国の青銅器の技術に感服せざるを得ませんでした。

左、「青花龍濤文八角瓶」 景徳鎮窯 1964年河北省保定市出土 1口 元時代・14世紀
またコバルトを含む顔料で美しい青の模様を描く「青花龍濤文八角瓶」など南宋、元の陶磁器においても、東博ご自慢の歴史的なガラスケースを用いることによって、より美しさが際立っていたのではないでしょうか。絵画に並び、こうした工芸品も今回の展覧会の大きな見どころと言えるのかもしれません。
それでは中編・「清朝の文化」へと続きます。
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
中編「清朝の文化」
後編「清明上河図」
2月19日までの開催です。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
中国文明を象徴するともされる北京の故宮博物院ということで、これまでにも収蔵品を何度か国外で公開する機会はありましたが、今回ほど幅広いジャンルの文物が出品されたことは一度もありませんでした。
とりわけ重要なのは、かつては門外不出とされてきた、中国美術史上でも重要な宋・元時代の書画が約40点ほど展示されていることです。

第1部「故宮博物院の至宝」展示室風景
その中には今回、中国本土以外で初めて公開されることになった神品「清明上河図」も含まれていますが、単に見るべきものがその一点だけでなく、出品作のいずれもが粒ぞろいの品であるのも重要なポイントかもしれません。
展覧会の構成は以下の通りです。
第1部 「故宮博物院の至宝」皇帝たちの名品
第2部 「清朝宮廷文化の精粋」多文化のなかの共生
第1章 清朝の礼制文化―悠久の伝統
第2章 清朝の文化事業―伝統の継承と再編
第3章 清朝の宗教―チベット仏教がつなぐ世界
第4章 清朝の国際交流―周辺国との交流
初めに宋元期の書画を据え、古代からの青銅器、玉器、また明清の染織品や陶磁器などを展観した上で、後半に故宮博物院こと紫禁城が名実共に中国の中心だった清の文化を表す様々な文物を紹介する流れとなっていました。
「清明上河図」を除き、総計200点が全会期中公開されているという、質量ともに充実した展覧会です。(出品リスト)というわけで拙ブログでは前編に「宋・元絵画」、中編に「清朝の文化」、そして後編を「清明上河図」と分け、その内容をご紹介していきたいと思います。
さてこの冒頭、宋元期の書画こそ、本展のハイライトとしても過言ではないかもしれません。
まず面白いのが、北宋期、太湖石に「神護」という文字が現れた事蹟を描いた趙佶(徽宗)の「祥龍石図巻」です。この時代、こうした文字が浮かび上がった奇岩を瑞物として貴重に扱っていたそうですが、その岩が重厚感のある堂々たるタッチで示されています。

「長江万里図巻 」趙ふつ筆 1巻 南宋時代・12世紀
また奇岩と言えば忘れられないのが、雄大な長江の風景を描いた「長江万里図巻」です。それこそ靄に隠れた岩山の立ち並ぶ上流より一気呵成、わきたつ河の波紋、そして浮かぶ船、さらにはそこに集う人々が、精緻な描写で表されています。
これを見て大観の生々流転を思い出しました。その景色を追っていくと、あたかも実際に船に乗り、長江を下って楽しんでいるかのような旅情をも味わえる作品と言えるかもしれません。

右、「双鈎竹図軸」李えん筆 1幅 元時代・14世紀。中央、「清ひ閣墨竹図軸」柯九思筆 1幅 元時代・至元4年(1338)。
中国絵画でよく目にする竹をモチーフとした2点の作品もまた忘れることが出来ません。「双鈎竹図軸」では岩場に切り立つ竹の様子を俯瞰的な形にて、また「清ひ閣墨竹図軸」では柔らかくニュアンスに富んだ墨の筆致にて、時に風に靡くような竹を描いています。
また「双鈎竹図軸」の作者、李かんは中国ではじめて詳細な画竹の解説書、ようは竹の描き方を本に著した人物だそうです。うっすらと緑色を帯びた笹の濃淡は、確かに真に迫るものがありました。

「出水芙蓉図冊」 1枚 南宋時代・13世紀
また総じてモノトーン調の絵画が多い中、一際鮮やかな彩色で目を引くのが「出水芙蓉図冊」ではないでしょうか。君子や多子の象徴ともされ、古来より中国では尊重された蓮を描いたこの作品は、ほのかに桃色を帯びた色味が大変に魅力的でした。
さて「清明上河図」を含めても今回、私が最も感動したのが趙孟ふの「水村図巻」に他なりません。

「水村図巻」 趙孟ふ筆 1巻 元時代・大徳6年(1302)
既に中国山水画史上最高の傑作とも名高い作品ではありますが、実物を前にして、その美しい山水の景色が生み出す類い稀な叙情性には強く心を打たれました。
繊細な淡墨の筆致は、水辺と大地、はたまた大気までが渾然一体となった中国の田園を、それこそ平面的な二次元を超えたかのような奥行きと広がりのある三次元的空間に表現しています。
またこの静まり返った風景の中にも生命、ようは小鳥や漁労の人々が小さくとも描き入れられている点も見逃せません。大自然の中で生きる人々の暮らしがまさに牧歌的と言える様子にて示されていました。

「方盤」 1口 戦国時代・前5世紀
この後は紀元前16世紀の玉にはじまり、春秋戦国期の青銅器、さらには時代を超えて宋の青磁から元の漆工、また清の刺繍に至る様々な工芸、装飾の品々が待ち構えています。

中央右、「爵」 1口 西周時代・前10-前9世紀
非常にデコラティブな青銅器は以前、東博での中国文明展でもいくつか楽しむことが出来ましたが、たとえば鳥を象った「爵」の巧みなバランス感覚に則った造形美や、虎の脚を持ち、容器の内外面を魚や亀などの無数の紋様で埋めた「方盤」などからは、改めて古代中国の青銅器の技術に感服せざるを得ませんでした。

左、「青花龍濤文八角瓶」 景徳鎮窯 1964年河北省保定市出土 1口 元時代・14世紀
またコバルトを含む顔料で美しい青の模様を描く「青花龍濤文八角瓶」など南宋、元の陶磁器においても、東博ご自慢の歴史的なガラスケースを用いることによって、より美しさが際立っていたのではないでしょうか。絵画に並び、こうした工芸品も今回の展覧会の大きな見どころと言えるのかもしれません。
それでは中編・「清朝の文化」へと続きます。
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
中編「清朝の文化」
後編「清明上河図」
2月19日までの開催です。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「荻須高徳展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
日本橋三越本店新館7階ギャラリー
「荻須高徳展」
2011/12/27-2012/1/16

日本橋三越本店新館7階ギャラリーで開催中の「生誕110年記念 荻須高徳展」へ行ってきました。
2011年に生誕110年を迎えた洋画家の荻須高徳(1901-1986)は、25歳で渡仏後、一時期を除き、84歳で没するまでパリで滞在して絵画の制作を続けました。
今回のテーマは荻須が愛したパリとベネチアです。彼の地で描かれた風景画や人物画など約90点が展示されています。そして何とそのうち8割が今回初公開です。荻須の画業をまた新たにすることが出来るかもしれません。

「パリ 広告のある街角」1937年
荻須が特にパリで注目したのは何気ない街角、とりわけ石造りの堅牢な建物群です。彼は「霞たなびく日本の不透明な風景よりも、透明な空気の中に現れる色彩感豊かな」(*)フランスに強く惹かれました。
荻須の作風というと壁が前面にクローズアップされた建物が多く、人があまり描かれていない点もポイントかもしれません。また彼は「人間がいない建造物を描いたからと言って人間がそこに存在しないわけではなく、壁に通して人間が染み出ているから」(*)という言葉も残しました。
また葉の落ちた寒々しい街路樹をもよく描きましたが、それは「枝の曲がり具合や形、線の面白さ」(*)に魅了されていたからだそうです。

「ベネチア サン・マルコ広場」1935年
力強い筆致、それに面を強く意識した構図は、確かに西洋の重厚な建物の質感を巧みに伝えています。それに灰色のパリと水辺を取り込む明るいベネチアとでは、若干表現が変わっているのも興味深いところでした。

「黄色い壺のリラ」1976年
繰り返しますが初公開作品多数です。あまり見慣れない静物画や人物画も計10点ほど登場しています。同ギャラリーの空間に所狭しと飾られた風景画を追っていくと、あたかもその地に旅しているような気分になりました。
なお記事中の*印は全てキャプションからの引用(一部改変。)ですが、それらは全て荻須自身の語った言葉です。実は今回の展覧会では作品とともに、こうした荻須の残した言葉も紹介されています。そちらも見どころではないでしょうか。
会場は日本橋三越です。バーゲンシーズンということもあってか、館内は多くの人で賑わっていました。
「荻須高徳画文集―パリの街を愛し、生き、そして描いた/求龍堂」
1月16日まで開催されています。
「生誕110年記念 荻須高徳展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
会期:2011年12月27日(火)~2012年1月16日(月)
休館:1月1日
時間:10:00~18:30(19時閉場) *最終日は17時半閉場
住所:中央区日本橋室町1-4-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅より直結。東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B11出口より徒歩5分。都営浅草線日本橋駅より徒歩5分。
「荻須高徳展」
2011/12/27-2012/1/16

日本橋三越本店新館7階ギャラリーで開催中の「生誕110年記念 荻須高徳展」へ行ってきました。
2011年に生誕110年を迎えた洋画家の荻須高徳(1901-1986)は、25歳で渡仏後、一時期を除き、84歳で没するまでパリで滞在して絵画の制作を続けました。
今回のテーマは荻須が愛したパリとベネチアです。彼の地で描かれた風景画や人物画など約90点が展示されています。そして何とそのうち8割が今回初公開です。荻須の画業をまた新たにすることが出来るかもしれません。

「パリ 広告のある街角」1937年
荻須が特にパリで注目したのは何気ない街角、とりわけ石造りの堅牢な建物群です。彼は「霞たなびく日本の不透明な風景よりも、透明な空気の中に現れる色彩感豊かな」(*)フランスに強く惹かれました。
荻須の作風というと壁が前面にクローズアップされた建物が多く、人があまり描かれていない点もポイントかもしれません。また彼は「人間がいない建造物を描いたからと言って人間がそこに存在しないわけではなく、壁に通して人間が染み出ているから」(*)という言葉も残しました。
また葉の落ちた寒々しい街路樹をもよく描きましたが、それは「枝の曲がり具合や形、線の面白さ」(*)に魅了されていたからだそうです。

「ベネチア サン・マルコ広場」1935年
力強い筆致、それに面を強く意識した構図は、確かに西洋の重厚な建物の質感を巧みに伝えています。それに灰色のパリと水辺を取り込む明るいベネチアとでは、若干表現が変わっているのも興味深いところでした。

「黄色い壺のリラ」1976年
繰り返しますが初公開作品多数です。あまり見慣れない静物画や人物画も計10点ほど登場しています。同ギャラリーの空間に所狭しと飾られた風景画を追っていくと、あたかもその地に旅しているような気分になりました。
なお記事中の*印は全てキャプションからの引用(一部改変。)ですが、それらは全て荻須自身の語った言葉です。実は今回の展覧会では作品とともに、こうした荻須の残した言葉も紹介されています。そちらも見どころではないでしょうか。
会場は日本橋三越です。バーゲンシーズンということもあってか、館内は多くの人で賑わっていました。

1月16日まで開催されています。
「生誕110年記念 荻須高徳展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
会期:2011年12月27日(火)~2012年1月16日(月)
休館:1月1日
時間:10:00~18:30(19時閉場) *最終日は17時半閉場
住所:中央区日本橋室町1-4-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅より直結。東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B11出口より徒歩5分。都営浅草線日本橋駅より徒歩5分。
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1月の展覧会・ギャラリーetc
あっという間に三が日も過ぎてしまいました。今月中に見たい展覧会などをリストアップしてみました。
展覧会
・「建築、アートがつくりだす新しい環境」 東京都現代美術館(~1/15)
・「渋谷ユートピア1900-1945」 渋谷区立松濤美術館(~1/29)
・「日本の新進作家展vol.10 写真の飛躍」 東京都写真美術館(~1/29)
#会期中、出品作家とゲストによる対談あり(全5回)→スケジュール
・「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」(後期展示) 山種美術館(~2/5)
・「没後150年 歌川国芳展」(後期展示) 森アーツセンターギャラリー(~2/12)
・「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」 根津美術館(1/12~2/12)
#講演会「草花図の衝撃」 講師:安村敏信(板橋区立美術館館長) 1/28 14:00~ 往復ハガキにて要事前申込。(1/14まで。当日消印有効。)
・「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展」 国立新美術館(1/14~2/12)
#出品作家ギャラリートークあり→スケジュール
・「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館(~2/19)
#「清明上河図」は1月24日まで展示。
・「三代 山田常山」 出光美術館(1/7~2/19)
・「フェアリー・テイル 妖精たちの物語」 三鷹市美術ギャラリー(1/7~2/19)
#講演会「妖精と日本~私の妖精コレクション~」 講師:井村君江(うつのみや妖精ミュージアム名誉館長) 1/29 14:00~ 三鷹市芸術文化センターにて。要予約。
・「石子順造的世界 美術発・マンガ経由・キッチュ行」 府中市美術館(~2/26)
#トークイベント「アートの消えるところ」 出演:中沢新一、椹木野衣 1/21 14:00~ 予約不要、無料。
・「ルドンとその周辺 夢見る世紀末」 三菱一号館美術館(1/17~3/4)
・「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」 原美術館(1/7~3/11)
・「今和次郎 採集講義」 パナソニック 汐留ミュージアム(1/14~3/15)
・「松井冬子展」 横浜美術館(~3/18)
・「パリへ渡った 石橋コレクション 1962年、春」 ブリヂストン美術館(1/7~3/18)
#1月8日は開館60周年を記念して無料。
#特別講演「60周年を迎えて」 講師:島田紀夫(ブリヂストン美術館館長) 1/8 14:00~ 先着130名。
・「重森三玲 北斗七星の庭」 ワタリウム美術館(~3/25)
・「難波田史男の15年」 東京オペラシティアートギャラリー(1/14~3/25)
・「大阪市立東洋陶磁美術館コレクション 悠久の光彩 東洋陶磁の美展」 サントリー美術館(1/28~4/1)
・「野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿」 国立新美術館(1/18~4/2)
#アーティスト・トーク「自作を語る」 講師:野田裕示 1/21 14:00~ 先着250名。
・「抽象と形態:何処までも顕れないもの」 DIC川村記念美術館(1/14~4/15)
#学芸員によるギャラリートーク 1/2/ 14:00~
#千葉市美術館との無料シャトルバス 1/14、15、21、22、28、29日→運行スケジュール
ギャラリー
・「ミヤケマイ個展 膜迷路」 Bunkamura Gallery(~1/12)
・「入江明日香展」 シロタ画廊(1/10~1/21)
・「白井忠俊 千年螺旋」 INAXギャラリー(1/7~1/28)
・「第6回 shiseido art egg three」 資生堂ギャラリー(1/6~1/29)
・「東北画は可能か?」 ニュートロン東京(1/11~29)
・「巧術 2.51」 ラディウム-レントゲンヴェルケ(1/13~2/10)
・「小西真奈展」 ARATANIURANO(1/14~2/18)
・「鎌田友介展」 児玉画廊|東京(1/21~2/25)
・「増子博子 新しい街より」 Gallery Jin Projects(1/28~2/25)
1月はじまりの展覧会がまた目白押しですが、この中で私が特に注目しているのが、7日より原美術館で始まる「ジャン=ミシェル オトニエル」展です。

「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」 原美術館(1/7~3/11)
パリを拠点に活躍するオトニエルはガラス玉を駆使したインスタレーションで知られていますが、かつてパリのポンピドゥーセンターで開催された個展は、3ヶ月間で20万人を動員するほどの人気だったそうです。
図版でも美しいオトニエルの作品は原美術館の邸宅空間でもきっと映えるに違いありません。これは是非とも楽しみにしたいと思います。
さて当初のチラシのキャッチーなデザインでも話題となったルドン展がいよいよ三菱一号館美術館ではじまります。

「ルドンとその周辺 夢見る世紀末」 三菱一号館美術館(1/17~3/4)
本チラシが仮チラシ(上画像)より一転してシンプルになったのには驚かされましたが、それにあわせて同展のサイトがまた非常に意欲的なものとなっています。是非ご覧ください。(上記リンク先。)
私のかけがえのない画家の一人である難波田史男の回顧展が初台のオペラシティではじまります。

「難波田史男の15年」 東京オペラシティアートギャラリー(1/14~3/25)
そう言えばこの画家を初めて知り、虜となったのも、同館のコレクション展でした。なお今回は所蔵品に加え、国内の美術館やコレクターより集められた全240点もの作品が展示されるそうです。没後としては最大規模の個展になるのかもしれません。
今月に入って大規模な展示替えを行った山種美術館の「ベスト・オブ・山種コレクション展」と、森アーツセンターでの「歌川国芳展」(1/19に展示替え予定。)の後期展示もまた見逃せないのではないでしょうか。

なお両展示についてはそれぞれプレス内覧の様子を拙ブログにまとめてあります。宜しければご覧ください。
「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」 山種美術館(後期:1/3~2/5)
「没後150年 歌川国芳展」 森アーツセンターギャラリー(後期:1/19~2/12)
今年の冬はよく冷えます。体調に注意して行動したいものです。
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
展覧会
・「建築、アートがつくりだす新しい環境」 東京都現代美術館(~1/15)
・「渋谷ユートピア1900-1945」 渋谷区立松濤美術館(~1/29)
・「日本の新進作家展vol.10 写真の飛躍」 東京都写真美術館(~1/29)
#会期中、出品作家とゲストによる対談あり(全5回)→スケジュール
・「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」(後期展示) 山種美術館(~2/5)
・「没後150年 歌川国芳展」(後期展示) 森アーツセンターギャラリー(~2/12)
・「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」 根津美術館(1/12~2/12)
#講演会「草花図の衝撃」 講師:安村敏信(板橋区立美術館館長) 1/28 14:00~ 往復ハガキにて要事前申込。(1/14まで。当日消印有効。)
・「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展」 国立新美術館(1/14~2/12)
#出品作家ギャラリートークあり→スケジュール
・「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館(~2/19)
#「清明上河図」は1月24日まで展示。
・「三代 山田常山」 出光美術館(1/7~2/19)
・「フェアリー・テイル 妖精たちの物語」 三鷹市美術ギャラリー(1/7~2/19)
#講演会「妖精と日本~私の妖精コレクション~」 講師:井村君江(うつのみや妖精ミュージアム名誉館長) 1/29 14:00~ 三鷹市芸術文化センターにて。要予約。
・「石子順造的世界 美術発・マンガ経由・キッチュ行」 府中市美術館(~2/26)
#トークイベント「アートの消えるところ」 出演:中沢新一、椹木野衣 1/21 14:00~ 予約不要、無料。
・「ルドンとその周辺 夢見る世紀末」 三菱一号館美術館(1/17~3/4)
・「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」 原美術館(1/7~3/11)
・「今和次郎 採集講義」 パナソニック 汐留ミュージアム(1/14~3/15)
・「松井冬子展」 横浜美術館(~3/18)
・「パリへ渡った 石橋コレクション 1962年、春」 ブリヂストン美術館(1/7~3/18)
#1月8日は開館60周年を記念して無料。
#特別講演「60周年を迎えて」 講師:島田紀夫(ブリヂストン美術館館長) 1/8 14:00~ 先着130名。
・「重森三玲 北斗七星の庭」 ワタリウム美術館(~3/25)
・「難波田史男の15年」 東京オペラシティアートギャラリー(1/14~3/25)
・「大阪市立東洋陶磁美術館コレクション 悠久の光彩 東洋陶磁の美展」 サントリー美術館(1/28~4/1)
・「野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿」 国立新美術館(1/18~4/2)
#アーティスト・トーク「自作を語る」 講師:野田裕示 1/21 14:00~ 先着250名。
・「抽象と形態:何処までも顕れないもの」 DIC川村記念美術館(1/14~4/15)
#学芸員によるギャラリートーク 1/2/ 14:00~
#千葉市美術館との無料シャトルバス 1/14、15、21、22、28、29日→運行スケジュール
ギャラリー
・「ミヤケマイ個展 膜迷路」 Bunkamura Gallery(~1/12)
・「入江明日香展」 シロタ画廊(1/10~1/21)
・「白井忠俊 千年螺旋」 INAXギャラリー(1/7~1/28)
・「第6回 shiseido art egg three」 資生堂ギャラリー(1/6~1/29)
・「東北画は可能か?」 ニュートロン東京(1/11~29)
・「巧術 2.51」 ラディウム-レントゲンヴェルケ(1/13~2/10)
・「小西真奈展」 ARATANIURANO(1/14~2/18)
・「鎌田友介展」 児玉画廊|東京(1/21~2/25)
・「増子博子 新しい街より」 Gallery Jin Projects(1/28~2/25)
1月はじまりの展覧会がまた目白押しですが、この中で私が特に注目しているのが、7日より原美術館で始まる「ジャン=ミシェル オトニエル」展です。

「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」 原美術館(1/7~3/11)
パリを拠点に活躍するオトニエルはガラス玉を駆使したインスタレーションで知られていますが、かつてパリのポンピドゥーセンターで開催された個展は、3ヶ月間で20万人を動員するほどの人気だったそうです。
図版でも美しいオトニエルの作品は原美術館の邸宅空間でもきっと映えるに違いありません。これは是非とも楽しみにしたいと思います。
さて当初のチラシのキャッチーなデザインでも話題となったルドン展がいよいよ三菱一号館美術館ではじまります。

「ルドンとその周辺 夢見る世紀末」 三菱一号館美術館(1/17~3/4)
本チラシが仮チラシ(上画像)より一転してシンプルになったのには驚かされましたが、それにあわせて同展のサイトがまた非常に意欲的なものとなっています。是非ご覧ください。(上記リンク先。)
私のかけがえのない画家の一人である難波田史男の回顧展が初台のオペラシティではじまります。

「難波田史男の15年」 東京オペラシティアートギャラリー(1/14~3/25)
そう言えばこの画家を初めて知り、虜となったのも、同館のコレクション展でした。なお今回は所蔵品に加え、国内の美術館やコレクターより集められた全240点もの作品が展示されるそうです。没後としては最大規模の個展になるのかもしれません。
今月に入って大規模な展示替えを行った山種美術館の「ベスト・オブ・山種コレクション展」と、森アーツセンターでの「歌川国芳展」(1/19に展示替え予定。)の後期展示もまた見逃せないのではないでしょうか。

なお両展示についてはそれぞれプレス内覧の様子を拙ブログにまとめてあります。宜しければご覧ください。
「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」 山種美術館(後期:1/3~2/5)
「没後150年 歌川国芳展」 森アーツセンターギャラリー(後期:1/19~2/12)
今年の冬はよく冷えます。体調に注意して行動したいものです。
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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「博物館に初もうで 2012」 東京国立博物館
東京国立博物館
「博物館に初もうで 2012」
1/2-1/29

東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで 2012」へ行ってきました。
このところ毎年、2日はトーハクへの「展覧会詣」と決めていましたが、今年も変わることなく、上野の国立博物館へと出かけてきました。

単に作品を見るだけでなく、館全体でお正月の雰囲気を味わえるのも東博の良いところです。実のところ博物館に着いたのは午後2時を廻っていましたが、入口では和太鼓の勇壮な演奏も披露され、新春の華やいだ気分を盛り上げてくれました。

また東博前庭では獅子舞、さらには江戸の太神楽などのイベントも続きます。これだけでも十分に楽しめるのではないしょうか。

「博物館で初もうで」企画もすっかり板についてきた感がありました。

特集陳列「天翔ける龍」展示室風景
もちろん館内に入っても充実した作品がずらりと待ち構えています。まずは本館2階、特別1室、2室での特集陳列「天翔ける龍」です。
今年の干支「辰」に因み、日本や中国の龍をモチーフとした作品が何点も集められています。

「龍濤螺鈿稜花盆」 14世紀 元時代
その中でも一推しなのが、中国・元時代の漆のお盆、「龍濤螺鈿稜花盆」です。盆の中央には艶やかな螺鈿で装飾された龍が堂々と体をくねらせています。

「三彩貼花龍耳瓶」 8世紀 唐時代
その他では取っ手部分に龍を用いた三彩の瓶、「三彩貼花龍耳瓶」などにも目を奪われるのではないでしょうか。

「自在置物 龍」 明珍宋察 17世紀 江戸時代
また江戸時代の龍の自在置物などにも注目です。龍のモチーフは美術でもお馴染みであるだけに、工芸、絵画等、多様な作品で楽しむことが出来ました。
そしてもうひとつお目当てなのが、開館140周年を記念しての「新春特別公開」です。
総合文化展(平常展)の随所に同館の選りすぐりの名品たちが公開されています。

「風神雷神図屏風」 尾形光琳 17世紀 江戸時代
人気の光琳の「風神雷神図屏風」も大琳派展以来の出品だったのでしょうか。この日の館内はかなり混雑していましたが、より多くの人で賑わっていました。

「秋冬山水図」 雪舟等揚 15~16世紀 室町時代
そして国宝室では雪舟の「秋冬山水図」もお目見えです。こちらは去年の初もうで展でも出ていたので、この作品を見るとお正月という気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。

「色絵月梅図茶壺」 仁清 17世紀 江戸時代
またその他では仁清の「色絵月梅図茶壺」などもお正月ならではの艶やかな作品でした。
さて今年のトーハクはもうひとつ、新春の目玉があります。

それが言うまでもなく、中国が誇る神品「清明上河図」もやってきた特別展の「北京故宮博物院200選展」です。

平成館前の行列(1/2、14:30頃)
この日、初日でしたが、既に大きな話題になっていたからなのか、私が出向いた午後2~3時頃では、何と入場までに30分、そして「清明上河図」観覧にはさらに140分という長大な待ち時間が発生していました。
この「清明上河図」は中国本土でもあまり展示機会がありません。また現地でも公開された際には3時間や4時間待ちだったとも聞きました。しかしながらそれでもまさかここまで混雑するとは思いもよりません。率直なところこの140分という待ち時間には驚きました。

なお、閉館17時前に再度、混雑状況を確認しましたが、その時は入場の待ち時間こそなかったものの、「清明上河図」に関してはまだ100分を超える待ち時間がありました。規定の閉館時間後も、館内にはまだ多くの方が残っていたようです。
この日の観覧は断念しましたが、「清明上河図」を見るためには前もって相応の時間的余裕をとっておいた方が賢明です。また混雑情報は同展公式WEBサイトでも更新されています。そちらもご覧下さい。
「北京故宮博物院200選展」公式WEBサイト
ただ総合文化展だけでも十分に見応えがあるのはトーハクのやはり良いところではないでしょうか。結局、2~3時間、平常展内をぐるぐると見て歩いていましたが、さすがにかなりの充足感がありました。

「老猿」 高村光雲 明治26年
三が日、明日3日までのイベントも多くあります。「博物館に初もうで」のイベントスケジュールは同館公式サイトをご参照下さい。
博物館に初もうで@東京国立博物館
また開館140周年記念として1月9日まで毎日、先着1400名にプレゼントされる「土偶ストラップ」(海洋堂製)も、1月2日は開館直後にすぐ終了したそうです。狙っておられる方は朝一必須です。

新年特別公開は1月15日まで、また特集陳列「天翔ける龍」は1月29日まで開催されています。
「博物館に初もうで 2012」 東京国立博物館
会期:1月2日(月)~1月29日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「博物館に初もうで 2012」
1/2-1/29

東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで 2012」へ行ってきました。
このところ毎年、2日はトーハクへの「展覧会詣」と決めていましたが、今年も変わることなく、上野の国立博物館へと出かけてきました。

単に作品を見るだけでなく、館全体でお正月の雰囲気を味わえるのも東博の良いところです。実のところ博物館に着いたのは午後2時を廻っていましたが、入口では和太鼓の勇壮な演奏も披露され、新春の華やいだ気分を盛り上げてくれました。

また東博前庭では獅子舞、さらには江戸の太神楽などのイベントも続きます。これだけでも十分に楽しめるのではないしょうか。

「博物館で初もうで」企画もすっかり板についてきた感がありました。

特集陳列「天翔ける龍」展示室風景
もちろん館内に入っても充実した作品がずらりと待ち構えています。まずは本館2階、特別1室、2室での特集陳列「天翔ける龍」です。
今年の干支「辰」に因み、日本や中国の龍をモチーフとした作品が何点も集められています。

「龍濤螺鈿稜花盆」 14世紀 元時代
その中でも一推しなのが、中国・元時代の漆のお盆、「龍濤螺鈿稜花盆」です。盆の中央には艶やかな螺鈿で装飾された龍が堂々と体をくねらせています。

「三彩貼花龍耳瓶」 8世紀 唐時代
その他では取っ手部分に龍を用いた三彩の瓶、「三彩貼花龍耳瓶」などにも目を奪われるのではないでしょうか。

「自在置物 龍」 明珍宋察 17世紀 江戸時代
また江戸時代の龍の自在置物などにも注目です。龍のモチーフは美術でもお馴染みであるだけに、工芸、絵画等、多様な作品で楽しむことが出来ました。
そしてもうひとつお目当てなのが、開館140周年を記念しての「新春特別公開」です。
総合文化展(平常展)の随所に同館の選りすぐりの名品たちが公開されています。

「風神雷神図屏風」 尾形光琳 17世紀 江戸時代
人気の光琳の「風神雷神図屏風」も大琳派展以来の出品だったのでしょうか。この日の館内はかなり混雑していましたが、より多くの人で賑わっていました。

「秋冬山水図」 雪舟等揚 15~16世紀 室町時代
そして国宝室では雪舟の「秋冬山水図」もお目見えです。こちらは去年の初もうで展でも出ていたので、この作品を見るとお正月という気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。

「色絵月梅図茶壺」 仁清 17世紀 江戸時代
またその他では仁清の「色絵月梅図茶壺」などもお正月ならではの艶やかな作品でした。
さて今年のトーハクはもうひとつ、新春の目玉があります。

それが言うまでもなく、中国が誇る神品「清明上河図」もやってきた特別展の「北京故宮博物院200選展」です。

平成館前の行列(1/2、14:30頃)
この日、初日でしたが、既に大きな話題になっていたからなのか、私が出向いた午後2~3時頃では、何と入場までに30分、そして「清明上河図」観覧にはさらに140分という長大な待ち時間が発生していました。
この「清明上河図」は中国本土でもあまり展示機会がありません。また現地でも公開された際には3時間や4時間待ちだったとも聞きました。しかしながらそれでもまさかここまで混雑するとは思いもよりません。率直なところこの140分という待ち時間には驚きました。

なお、閉館17時前に再度、混雑状況を確認しましたが、その時は入場の待ち時間こそなかったものの、「清明上河図」に関してはまだ100分を超える待ち時間がありました。規定の閉館時間後も、館内にはまだ多くの方が残っていたようです。
この日の観覧は断念しましたが、「清明上河図」を見るためには前もって相応の時間的余裕をとっておいた方が賢明です。また混雑情報は同展公式WEBサイトでも更新されています。そちらもご覧下さい。
「北京故宮博物院200選展」公式WEBサイト
ただ総合文化展だけでも十分に見応えがあるのはトーハクのやはり良いところではないでしょうか。結局、2~3時間、平常展内をぐるぐると見て歩いていましたが、さすがにかなりの充足感がありました。

「老猿」 高村光雲 明治26年
三が日、明日3日までのイベントも多くあります。「博物館に初もうで」のイベントスケジュールは同館公式サイトをご参照下さい。
博物館に初もうで@東京国立博物館
新春イベント「和太鼓演奏」 屋外-正門内池前 1月3日(火) 11:00、13:30
新春イベント「獅子舞」 屋外-本館前 1月3日(火) 10:30、13:00
新春イベント「クラリネット・コンサート」 平成館 1月3日(火) 12:00、14:30
新春イベント「獅子舞」 屋外-本館前 1月3日(火) 10:30、13:00
新春イベント「クラリネット・コンサート」 平成館 1月3日(火) 12:00、14:30
また開館140周年記念として1月9日まで毎日、先着1400名にプレゼントされる「土偶ストラップ」(海洋堂製)も、1月2日は開館直後にすぐ終了したそうです。狙っておられる方は朝一必須です。

新年特別公開は1月15日まで、また特集陳列「天翔ける龍」は1月29日まで開催されています。
「博物館に初もうで 2012」 東京国立博物館
会期:1月2日(月)~1月29日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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謹賀新年 2012
新年明けましておめでとうございます。
本年も皆さまにとって素晴らしい一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。

元日はいかがお過ごしでしょうか。2日から開館する美術館も多いだけに、明日は展覧会詣という方も多いかもしれません。なお先日ですが、ブログに首都圏における美術館・博物館の休館情報をまとめました。宜しければご覧ください。
お正月は美術館と博物館 2012(お正月の美術館のイベントなどについて。)
年末年始の「美術館・博物館」休館情報 2011/2012
画像は今年の干支にも因んだ曾我蕭白の「雲龍図」です。いよいよ今春、3月20日より始まる東京国立博物館の「ボストン美術館日本美術の至宝展」で公開されます。
「ボストン美術館日本美術の至宝展」公式サイト
「ボストン美術館 日本美術の至宝展」記者発表会(発表会の様子をブログにまとめてあります。)
何かと厳しい世相ではありますが、今年はこの力強い龍の如く、上を向いて未来を切り開ければと思いました。
今年も細々と地道にブログを更新していくつもりです。いつもながらの駄文で恐縮ですが、またお付き合い下されば幸いです。
それでは本年もこの「はろるど・わーど」を宜しくお願いします。
本年も皆さまにとって素晴らしい一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。

元日はいかがお過ごしでしょうか。2日から開館する美術館も多いだけに、明日は展覧会詣という方も多いかもしれません。なお先日ですが、ブログに首都圏における美術館・博物館の休館情報をまとめました。宜しければご覧ください。
お正月は美術館と博物館 2012(お正月の美術館のイベントなどについて。)
年末年始の「美術館・博物館」休館情報 2011/2012
画像は今年の干支にも因んだ曾我蕭白の「雲龍図」です。いよいよ今春、3月20日より始まる東京国立博物館の「ボストン美術館日本美術の至宝展」で公開されます。
「ボストン美術館日本美術の至宝展」公式サイト
「ボストン美術館 日本美術の至宝展」記者発表会(発表会の様子をブログにまとめてあります。)
何かと厳しい世相ではありますが、今年はこの力強い龍の如く、上を向いて未来を切り開ければと思いました。
今年も細々と地道にブログを更新していくつもりです。いつもながらの駄文で恐縮ですが、またお付き合い下されば幸いです。
それでは本年もこの「はろるど・わーど」を宜しくお願いします。
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