都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「北京故宮博物院200選」(後編 清明上河図) 東京国立博物館
東京国立博物館
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

前編「宋・元絵画」、中編「清朝の文化」に続きます。東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
さて今回の故宮展において半ば電撃的に出品が決まったのが、「中国が世界に誇る至宝」(公式サイトより引用)、「清明上河図」です。中国でも滅多に出ることのない神品、また現地で公開される際も数時間待ちになるという人気作が、初めて国外、つまりは海を渡り、ここ日本へとやってきました。
12世紀、殆ど詳しいことが分かっていない謎の宮廷画家、張択端によって描かれたのは、北宋の首都・開封に集う庶民たちの日常の生活でした。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
作品の縦の長さは僅か25センチ弱(横は5メートル)と、決して大きくはありません。しかしながらその狭い空間には、まさに絹糸一本に一つの線、或はそれ以上とも言えるほどに細かい線によって、たとえば少年に引かれるロバや物売り、そして軒先で洗濯中の女性に船上で騒ぐ人々といった、何ら飾り立てのない人々の生活が事細かに表現されています。
ともかくこれほど細密な線描、精緻な表現で描かれた作品を他に見たことがありません。これが人の手で描かれたということがにわかには信じられないほどでした。
またその細密表現と並び、作品において印象に深いのは、全体を眺める視点、安定した構図感と、図版では伝わりにくい彩色の美しさです。
言ってしまえばここに登場する庶民たちは雲の上から眺める神の視点で描かれています。
それこそ手を伸ばしても届く距離にはありませんが、たとえば遠い風景を双眼鏡でのぞき込んだ時に対象が拡大されて見えるのと同じように、目を近づけて凝らせば凝らすほど、ここに描かれた人々の日常が、さも実際に動いているかのように浮き上がってくるわけです。
有りのままの日常をダイレクトに写すというこの徹底した写実表現は、もちろん人々の生き生きとした様子こそ示されているものの、どこか全体を見渡すゆるぎのない、言わば超然として視点があるように感じてなりません。背筋がぞっとするほどに突き詰められたリアリズムがここに実現していました。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
さて既に大きな話題になっていますが、最後に触れたいのは混雑の状況です。初日から入場制限がかかり、この「清明上河図」に至っては連日、最大で2時間から3時間、あるいはそれを超えるほどの待ち時間が発生しています。
ここ数日は展覧会への入場、つまり「清明上河図」以外の観覧に関しての待ち時間は解消されましたが、「清明上河図」に関しては1月24日で展示が終了することもあり、今度さらに混雑に拍車がかかることも予想されます。
一番待ち時間を少なく観覧する方法としては朝、開館時間よりもかなり前に正門前に並び、開館と同時に入場、そのまま「清明上河図」(第一会場の最後。)へと進むのが良いそうです。
如何せん小さな作品でもあるので、壁画や大きな絵画を見るのと同じようにはいきません。そうした作品の性質上もあってか、どうしても長大な行列が出来てしまうそうですが、ともかくもご観覧には十分な時間的余裕をもって出かけください。
なお混雑状況については公式サイトで随時更新されています。
「北京故宮博物院200選」公式サイト
また「清明上河図」に関しては公式サイトの「清明上河図であそぼう」のコーナーがおすすめです。
「清明上河図であそぼう」
作品の全編にわたってWEB上で拡大して楽しむことが出来ます。ともかく会場では長蛇の列もあり、観覧時間も数分と僅かです。あらかじめこちらで見たいポイントを絞るのも良いかもしれません。
また博物館公式ブログ「1089ブログ」にも「清明上河図」の見どころが紹介されています。
「ようこそ日本へ!清明上河図! 前編/後編」@1089ブログ
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
前編「宋・元絵画」
中編「清朝の文化」
「清明上河図」は1月24日で展示が終わりますが、それを除いたとしても見応えのある展覧会と言えるのではないでしょうか。故宮展では過去最大スケールというのにも納得しました。

「琺瑯蓮唐草八卦文炉」 1口 清時代・康熙年間(1662-1722)
2月19日まで開催されています。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「北京故宮博物院200選」
1/2-2/19

前編「宋・元絵画」、中編「清朝の文化」に続きます。東京国立博物館で開催中の「北京故宮博物院200選」のプレスプレビューに参加してきました。
さて今回の故宮展において半ば電撃的に出品が決まったのが、「中国が世界に誇る至宝」(公式サイトより引用)、「清明上河図」です。中国でも滅多に出ることのない神品、また現地で公開される際も数時間待ちになるという人気作が、初めて国外、つまりは海を渡り、ここ日本へとやってきました。
12世紀、殆ど詳しいことが分かっていない謎の宮廷画家、張択端によって描かれたのは、北宋の首都・開封に集う庶民たちの日常の生活でした。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
作品の縦の長さは僅か25センチ弱(横は5メートル)と、決して大きくはありません。しかしながらその狭い空間には、まさに絹糸一本に一つの線、或はそれ以上とも言えるほどに細かい線によって、たとえば少年に引かれるロバや物売り、そして軒先で洗濯中の女性に船上で騒ぐ人々といった、何ら飾り立てのない人々の生活が事細かに表現されています。
ともかくこれほど細密な線描、精緻な表現で描かれた作品を他に見たことがありません。これが人の手で描かれたということがにわかには信じられないほどでした。
またその細密表現と並び、作品において印象に深いのは、全体を眺める視点、安定した構図感と、図版では伝わりにくい彩色の美しさです。
言ってしまえばここに登場する庶民たちは雲の上から眺める神の視点で描かれています。
それこそ手を伸ばしても届く距離にはありませんが、たとえば遠い風景を双眼鏡でのぞき込んだ時に対象が拡大されて見えるのと同じように、目を近づけて凝らせば凝らすほど、ここに描かれた人々の日常が、さも実際に動いているかのように浮き上がってくるわけです。
有りのままの日常をダイレクトに写すというこの徹底した写実表現は、もちろん人々の生き生きとした様子こそ示されているものの、どこか全体を見渡すゆるぎのない、言わば超然として視点があるように感じてなりません。背筋がぞっとするほどに突き詰められたリアリズムがここに実現していました。

「清明上河図巻」 張択端筆 1巻 北宋時代・12世紀(展示期間~1/24)
さて既に大きな話題になっていますが、最後に触れたいのは混雑の状況です。初日から入場制限がかかり、この「清明上河図」に至っては連日、最大で2時間から3時間、あるいはそれを超えるほどの待ち時間が発生しています。
ここ数日は展覧会への入場、つまり「清明上河図」以外の観覧に関しての待ち時間は解消されましたが、「清明上河図」に関しては1月24日で展示が終了することもあり、今度さらに混雑に拍車がかかることも予想されます。
一番待ち時間を少なく観覧する方法としては朝、開館時間よりもかなり前に正門前に並び、開館と同時に入場、そのまま「清明上河図」(第一会場の最後。)へと進むのが良いそうです。
如何せん小さな作品でもあるので、壁画や大きな絵画を見るのと同じようにはいきません。そうした作品の性質上もあってか、どうしても長大な行列が出来てしまうそうですが、ともかくもご観覧には十分な時間的余裕をもって出かけください。
なお混雑状況については公式サイトで随時更新されています。
「北京故宮博物院200選」公式サイト
また「清明上河図」に関しては公式サイトの「清明上河図であそぼう」のコーナーがおすすめです。
「清明上河図であそぼう」
作品の全編にわたってWEB上で拡大して楽しむことが出来ます。ともかく会場では長蛇の列もあり、観覧時間も数分と僅かです。あらかじめこちらで見たいポイントを絞るのも良いかもしれません。
また博物館公式ブログ「1089ブログ」にも「清明上河図」の見どころが紹介されています。
「ようこそ日本へ!清明上河図! 前編/後編」@1089ブログ
*「北京故宮博物院200選」関連エントリ
前編「宋・元絵画」
中編「清朝の文化」
「清明上河図」は1月24日で展示が終わりますが、それを除いたとしても見応えのある展覧会と言えるのではないでしょうか。故宮展では過去最大スケールというのにも納得しました。

「琺瑯蓮唐草八卦文炉」 1口 清時代・康熙年間(1662-1722)
2月19日まで開催されています。*清明上河図の展示期間は1月24日まで。
「北京故宮博物院200選」 東京国立博物館
会期:1月2日(月・休)~2月19日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(祝)は開館。翌10日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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ゆっくりこの記事三部作読ませていただいて、きちんとまとめて下さっていることに、感謝です。
私のあわてて見に行った記録は、お粗末ですが、TBしました。
こんなに魅力的な展覧会、多勢の人がつめかけるのは、当たり前ですね。あたらしい魅力がいっぱい、一目でも見ておいて、ゆっくり本なども読もうと思っています。東京富士美術館でも3月から、やるそうなのでどんなものが出るのか楽しみになりました。
こんばんは。
拙記事、少しでもご参考いただけたようで嬉しいです。
清明上河図、本当にもの凄い人気ですよね。
まさかこれほどとは思いませんでした。
後ほどTB先を拝見させていただきます!
ありがとうございました。
思い切って見に行って、本当に感激しました。
こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
会期初日から展示最終日まで列が途切れることがなかったですね。
もう二度と見られないかもしれないと思うと、
改めてこの鑑賞体験が貴重なことだったと感じました。
実は内覧時も結局数分しか見られませんでしたが、
まだあのイメージが目に焼き付いています!