「荻須高徳展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー

日本橋三越本店新館7階ギャラリー
「荻須高徳展」
2011/12/27-2012/1/16



日本橋三越本店新館7階ギャラリーで開催中の「生誕110年記念 荻須高徳展」へ行ってきました。

2011年に生誕110年を迎えた洋画家の荻須高徳(1901-1986)は、25歳で渡仏後、一時期を除き、84歳で没するまでパリで滞在して絵画の制作を続けました。

今回のテーマは荻須が愛したパリとベネチアです。彼の地で描かれた風景画や人物画など約90点が展示されています。そして何とそのうち8割が今回初公開です。荻須の画業をまた新たにすることが出来るかもしれません。


「パリ 広告のある街角」1937年

荻須が特にパリで注目したのは何気ない街角、とりわけ石造りの堅牢な建物群です。彼は「霞たなびく日本の不透明な風景よりも、透明な空気の中に現れる色彩感豊かな」(*)フランスに強く惹かれました。

荻須の作風というと壁が前面にクローズアップされた建物が多く、人があまり描かれていない点もポイントかもしれません。また彼は「人間がいない建造物を描いたからと言って人間がそこに存在しないわけではなく、壁に通して人間が染み出ているから」(*)という言葉も残しました。

また葉の落ちた寒々しい街路樹をもよく描きましたが、それは「枝の曲がり具合や形、線の面白さ」(*)に魅了されていたからだそうです。


「ベネチア サン・マルコ広場」1935年

力強い筆致、それに面を強く意識した構図は、確かに西洋の重厚な建物の質感を巧みに伝えています。それに灰色のパリと水辺を取り込む明るいベネチアとでは、若干表現が変わっているのも興味深いところでした。


「黄色い壺のリラ」1976年

繰り返しますが初公開作品多数です。あまり見慣れない静物画や人物画も計10点ほど登場しています。同ギャラリーの空間に所狭しと飾られた風景画を追っていくと、あたかもその地に旅しているような気分になりました。

なお記事中の*印は全てキャプションからの引用(一部改変。)ですが、それらは全て荻須自身の語った言葉です。実は今回の展覧会では作品とともに、こうした荻須の残した言葉も紹介されています。そちらも見どころではないでしょうか。

会場は日本橋三越です。バーゲンシーズンということもあってか、館内は多くの人で賑わっていました。

「荻須高徳画文集―パリの街を愛し、生き、そして描いた/求龍堂」

1月16日まで開催されています。

「生誕110年記念 荻須高徳展」 日本橋三越本店新館7階ギャラリー
会期:2011年12月27日(火)~2012年1月16日(月)
休館:1月1日
時間:10:00~18:30(19時閉場) *最終日は17時半閉場
住所:中央区日本橋室町1-4-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅より直結。東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B11出口より徒歩5分。都営浅草線日本橋駅より徒歩5分。
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