都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「百椿図」 根津美術館
根津美術館
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」
1/7-2/21

根津美術館で開催中の「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」のプレスプレビューに参加してきました。
江戸時代、空前の園芸ブームが起こり、珍しい品種への注目が高まりましたが、その火付け役ともなったのが日本固有の種の椿であることをご存知でしょうか。

「百椿図」 伝狩野山楽 2巻 紙本着色 江戸時代
そうしたブームを背景に17世紀初頭、いわゆる寛永文化の世に制作されたのが、今回出品された「百椿図」です。
この作品を描いたのは京狩野家の祖、狩野山楽とも伝えられていますが、ともかくは全2巻、計24メートルにも及ぶ絵巻空間の中に、何と約100種にも及ぶ椿がこれ見よがしと登場していました。

「百椿図」 不動 人見竹洞
赤や白など、色鮮やかな椿そのものの美しい描写にも魅了されるところですが、この「百椿図」でとりわけ興味深いのは、青磁碗や水指、それに鼓や高杯など、身近にある様々な器物を花器に見立て、椿と取り合わせている点に他なりません。

「百椿図」 紅散椿 林鵞峰
まさに江戸時代のフラワーアレンジメントです。ここでは箒には白椿の花を、対のちりとりには紅色の椿の花びらを添えています。そうした誂えの妙味も、「百椿図」の大きな見どころでした。
なおこの「百椿図」の椿は現在、見る事の出来ない種もあるそうですが、それとともにかの時代の風習を知ることが出来るのもまた一興かもしれません。

「百椿図」 つなぎ
一例がこの大根です。これは当時、椿を他人に分ける時、水分を失わせないため、大根に挿して渡していたのだそうです。
また「百椿図」には光圀や羅山など、49名の貴人たちによる賛が記されています。
ちなみにこの作品をプロデュースしたのは明石藩主をつとめた松平忠国でしたが、その賛の蒐集が最後まで終わらず、息子の信之に至る二代に渡って書いてもらったそうです。椿にかける松平親子の想いが伝わるエピソードと言えるかもしれません。
また会場では「百椿図」の他に、椿に因んだ絵画や工芸品も展示されています。

「色絵椿文輪花向付」 尾形乾山 5口 江戸時代
そういえば乾山も椿をモチーフとした器をよく手がけていました。
椿は万葉集にも歌われるほど古くから愛された花でしたが、実際に絵画のモチーフとなったのは鎌倉時代になってからのことです。椿を巧みに水墨で描いた室町時代の「花鳥図」なども紹介されていました。

展示室2「天部の絵画」会場風景
さらに展示室2では「天部の絵画」と題し、たとえば弁財や吉祥天など、福徳にまつわる神を描いた作品も展示されています。

「銹絵富士山図茶壺」 野々村仁清 1口 江戸時代
また階上、展示室5の「山水の器」にあった、富士と三保松原の景色を簡素に示した仁清の「銹絵富士山図茶壺」も魅力ある品ではないでしょうか。

「龍図屏風 (龍虎図屏風のうち)」 雪村 6曲1双のうち1隻 紙本墨画 室町時代
その他では今年の干支にも因み、特別に出品された雪村の「龍図屏風」なども目を引きます。まさしく新春を祝うのに相応しい展覧会と言えそうです。
根津美術館アプリでも情報更新中です。

2月12日まで開催されています。
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」 根津美術館
会期:1月7日(土)~2月12日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)は休館。
時間:10:00~17:00
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」
1/7-2/21

根津美術館で開催中の「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」のプレスプレビューに参加してきました。
江戸時代、空前の園芸ブームが起こり、珍しい品種への注目が高まりましたが、その火付け役ともなったのが日本固有の種の椿であることをご存知でしょうか。

「百椿図」 伝狩野山楽 2巻 紙本着色 江戸時代
そうしたブームを背景に17世紀初頭、いわゆる寛永文化の世に制作されたのが、今回出品された「百椿図」です。
この作品を描いたのは京狩野家の祖、狩野山楽とも伝えられていますが、ともかくは全2巻、計24メートルにも及ぶ絵巻空間の中に、何と約100種にも及ぶ椿がこれ見よがしと登場していました。

「百椿図」 不動 人見竹洞
赤や白など、色鮮やかな椿そのものの美しい描写にも魅了されるところですが、この「百椿図」でとりわけ興味深いのは、青磁碗や水指、それに鼓や高杯など、身近にある様々な器物を花器に見立て、椿と取り合わせている点に他なりません。

「百椿図」 紅散椿 林鵞峰
まさに江戸時代のフラワーアレンジメントです。ここでは箒には白椿の花を、対のちりとりには紅色の椿の花びらを添えています。そうした誂えの妙味も、「百椿図」の大きな見どころでした。
なおこの「百椿図」の椿は現在、見る事の出来ない種もあるそうですが、それとともにかの時代の風習を知ることが出来るのもまた一興かもしれません。

「百椿図」 つなぎ
一例がこの大根です。これは当時、椿を他人に分ける時、水分を失わせないため、大根に挿して渡していたのだそうです。
また「百椿図」には光圀や羅山など、49名の貴人たちによる賛が記されています。
ちなみにこの作品をプロデュースしたのは明石藩主をつとめた松平忠国でしたが、その賛の蒐集が最後まで終わらず、息子の信之に至る二代に渡って書いてもらったそうです。椿にかける松平親子の想いが伝わるエピソードと言えるかもしれません。
また会場では「百椿図」の他に、椿に因んだ絵画や工芸品も展示されています。

「色絵椿文輪花向付」 尾形乾山 5口 江戸時代
そういえば乾山も椿をモチーフとした器をよく手がけていました。
椿は万葉集にも歌われるほど古くから愛された花でしたが、実際に絵画のモチーフとなったのは鎌倉時代になってからのことです。椿を巧みに水墨で描いた室町時代の「花鳥図」なども紹介されていました。

展示室2「天部の絵画」会場風景
さらに展示室2では「天部の絵画」と題し、たとえば弁財や吉祥天など、福徳にまつわる神を描いた作品も展示されています。

「銹絵富士山図茶壺」 野々村仁清 1口 江戸時代
また階上、展示室5の「山水の器」にあった、富士と三保松原の景色を簡素に示した仁清の「銹絵富士山図茶壺」も魅力ある品ではないでしょうか。

「龍図屏風 (龍虎図屏風のうち)」 雪村 6曲1双のうち1隻 紙本墨画 室町時代
その他では今年の干支にも因み、特別に出品された雪村の「龍図屏風」なども目を引きます。まさしく新春を祝うのに相応しい展覧会と言えそうです。
根津美術館アプリでも情報更新中です。

2月12日まで開催されています。
「百椿図 椿をめぐる文雅の世界」 根津美術館
会期:1月7日(土)~2月12日(日)
休館:月曜日。但し1月9日(月・祝)は開館、翌10日(火)は休館。
時間:10:00~17:00
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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