「吉祥のかたち」 泉屋博古館分館

泉屋博古館分館港区六本木1-5-1
「新春展 吉祥のかたち」
1/5-2/17



会期初日に行ってきました。同館の所蔵品より、吉祥主題に因んだ文物が展示されています。泉屋博古館分館の新春展です。



定評のある住友コレクションを持ってすれば当然かもしれません。スペースの都合からか、出品数こそ多くありませんが、例えば工芸品一つをとっても、古くは前漢より唐時代の鏡から清の印材、または日本の江戸時代の金具から香山の陶器、五代清水六兵衛の置物など、ともかく一言では言い表せないほどの多様な品々が揃っています。中でも特に目立っているのは印章の数々です。住友の印の記された「鶏血石印材 住友友純」(清時代)からして珍しい品ではありますが、石にそのまま梅の木が彫られている「名士風流入研香」(清時代)は非常に美しい作品でした。小さな岩山に梅の木が添えられているとも言えるような、山水画ならぬ光景が示されています。



とは言え、やはり見入るのはいくつかの絵画作品です。蝶がまるで鳥のように花を猛々しくも啄む、王楚珍の「草花群蝶図」(清時代。1896)の色鮮やかな表現には目を奪われますが、吉祥ではお馴染みの寿浪人をよくぞここまで不気味な様で描いたと感心さえする狩野芳崖の「寿老人」(明治時代。1877-1886)の光景には度肝を抜かれました。ちょうどこの時期の日本画には、元来、日本絵画の持っていた要素と、怒涛のように流入してきた西洋のそれが奇妙に交じり合ったとも言える、半ばエキゾチックで表現主義的な烈しい絵も散見されますが、本作にもそういった要素が見出せるのではないでしょうか。鶴も鹿も、まるでロボットのような滑稽な出で立ちをして描かれてもいます。夢にでも化けで出てきそうな寿老人でした。



まさかこの吉祥展で抱一が紹介されているとは思いもよりません。それが軸三点の「蓬莱山・雪松・竹梅図」(江戸時代)です。中心は海面上に昇る陽を蓬莱山の上で望む鶴が、またその左右には瑞々しい白梅と粉雪の輝かしく舞う雪松図が構えています。そしてこの三点で特に印象深いのは、それぞれに見て取れるたらしこみの効果的な描写です。十二ヶ月花鳥図を思わせる竹梅図では、幹のたらしこみが緑も交じえて瑞々しく配され、また雪松図でも散らした粉雪と対比的なまでのそれが透明感のある幹や枝を象っています。また蓬莱島といえば亀も良く出てくる主題かと思いますが、これは一見しただけでは分かりにくいほど控えめに描かれていました。海上から陸地を偶然に見つけて、とぼとぼと登って来たような海亀です。

2月17日まで開催されています。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

「増殖するイメージ VISIONS」 高島屋東京店 美術画廊X

高島屋東京店6階 美術画廊X(中央区日本橋2-4-1
「増殖するイメージ VISIONS」
1/9-29



名和晃平、廣澤仁、元田久治、山田純嗣の各4名のアーティストによるグループ展です。モチーフ、またはイメージの増殖をテーマに、立体、及びリトグラフ作品が紹介されています。

ガラス粒でもお馴染みのピクセルシリーズで印象深い名和晃平では、まずトランプや花札などにモチーフを借りる、手のひらサイズの小さなオブジェがある意味でお手頃です。トランプなどの表面を、かの小さなガラス粒が増殖とも浸食ともとれるように覆い尽くし、キラキラと瞬きながら並んでいます。また今回の展示では、名和の平面作品も興味深く感じられました。特に、紫色のドットが画面を埋める「chips」と、まさに髪の毛のような線が瑞々しいグリーンの地を駆けた「hair」の二点が心にとまります。名和と記されなければ、彼であると分からない作品であるとも言えそうです。新鮮です。

さて、他3名の中で私が推したいのは、昨年11月の上野タウンアートミュージアムの記憶に新しい元田久治の『廃墟画』です。東京でも象徴的な場所、つまりはタワーや歌舞伎町、それに銀座四丁目などの光景が、都市の喧噪をそのままに、それこそ大地震にでも襲われたかの如く文字通り廃墟になって描かれています。作品、もしくは描写自体にはどこか既視感を覚える部分もありますが、例えば路面も剥がれ、ビルも折れ曲がった銀座では、その跡に草木が力強く生える様子も捉えられていました。廃墟の後の再生にも目が向けられているのかもしれません。

会期中は無休です。29日まで開催されています。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

「六本木クロッシング2007:未来への脈動」 森美術館

森美術館港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
「六本木クロッシング2007:未来への脈動」
2007/10/13-2008/1/14



昨年秋より開催されていながら、ついうっかりと見逃していた展覧会です。ジャンル、世代を超えて集う計36名(組)の現代アーティストが、多様なアートの可能性を模索します。2004年に次いでの第二回「六本木クロッシング」です。



今回のクロッシングの魅力として一番に挙げたいのが、作品、特にオブジェに見る、一種の職人技とも言える高い造形力です。この手の展示としてはお馴染みの映像アートや、森美の得意とするインスタレーションなども出品されていましたが、むしろそれより見入るのは、各作家がまさに精魂込めて作り上げ、また描いたようなオブジェや絵画の数々でした。そしてそれは、あの魅惑的な四谷シモンの人形が約10点ほど出ていることを見ても納得出来ます。「機械仕掛けの少女」らの並ぶ中で特に印象深かったのは、羽の生やした天使の人形「自前の愛」です。憂いの漂わせた、言い換えれば少年、少女期だけに持つ独特の切ない表情を顔にたたえた天使が、十字架を手に抱いて静かに佇んでいます。朽ち落ちた両足と、その骨組みも覗く体の様子が、どこかまた儚い生き様を象徴しているようでもありました。



精緻という点で、この展覧会の右に並ぶものがいないとさえ思うのは冨田悦子の銅版画です。1981年生まれの、一昨年にはじめて山本現代で個展を開催したという若いアーティストですが、生み出される作品にはその世界観を含めて強い魅力が感じられます。ともかく極限の細密な線にて象られた植物や動物が、有機的にも交わって一個の巨大なモチーフを作ることからして圧巻ですが、例えば花鳥画風の作品には若冲の濃密なイメージも重なって見えました。特に魚や動物たちが図像的に群れている版画には、かの「樹下鳥獣図屏風」のような雰囲気も感じられます。本展示で一推しの作家です。



職人技というよりも、作家の根気とも執念ともいえるようなものを感じるのは、新聞各面をそのままそっくりドローイングに写した吉村芳生の「ドローイング新聞」です。完成した作品よりもむしろその制作の過程に思いを馳せてしまうわけですが、いつの間にやら実物の新聞よりもじっくりと文を追ってしまうことにアートを感じてしまいます。またその他では、フィルムを24枚ほど重ねて、写し出された風景などをあたかも抽象画のように見せる、中西信洋の「レイヤードローイング」や、スポイトで一滴ずつ垂らした磁土を固めて焼いた、さかぎしよしおうのオブジェ、さらには生成する巨大生物とも洞窟ともいえるような名和晃平の作品なども印象に残りました。これらはどれも作家の細やかな技が冴えた作品と言えそうです。

三が日の森美術館は空いていました。14日、成人の日までの開催です。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )

お正月の東博にて。(2008年1月)

平常展の写真ツアーです。やはり正月に因むということもあるのでしょうか。吉祥主題の作品が多く展示されていました。


「黒楽鶴亀文茶碗」(19世紀) 仁阿弥道八
艶やかな黒楽に吉祥主題の組み合わせ。亀は見込み部分に描かれています。ありがたいお茶碗です。


「色絵月梅図茶壺」(17世紀) 仁清
まさに壮麗。豪華な金碧障壁画を見ているような味わいがあります。


「蹲花入」(16世紀) 信楽
人がうずくまっているように見えることから、このような名前がつけられたのだそうです。私にはどちらかというと人が肩をすくめているようにも見えますがどうなのでしょうか。


「比叡山」(1919) 速水御舟
霧に包まれた朝の叡山でしょうか。隆々とそびえ立っています。


「京名所八題」から(1916) 前田青邨
京名所を全八景にて捉えた墨画です。京町家の連なる光景が俯瞰的に描かれています。構図の勝利です。


「菩薩立像」(7世紀)
この時期では珍しい木彫の仏像です。エキゾチックな出で立ちをしています。


「織部向付」(17世紀)
形の遊び。蝶が羽を開いてとまっているようにも見えました。

 
「波涛図屏風」(1788) 円山応挙
今回の常設で一推しの作品です。弛みのない緊張感が、波を神々しい様にまで昇華させています。


「猩々舞図」(19世紀) 鈴木其一
抱一の様式を色濃く残しているようにも見えます。


「二見浦曙の図」(19世紀) 歌川国貞
眩しいばかりの朝焼です。絵の中の動きが巧みです。動画を見るかのようでした。

展示室がかなり混雑していたので撮影は遠慮しましたが、毎年恒例、国宝室での、等伯「松林図屏風」もしばらく眺めてきました。残念ながら、私は未だこの作品の魅力に気が付かないでいますが、今年は少なくとも左隻における空間の妙には少し触れられたような気がします。反面、右隻にはまだ「無」が大き過ぎました。(「松林図」は14日までの展示です。)

展示品の詳細等については公式HPをご参照下さい。

*関連エントリ
「博物館に初もうで(子年に長寿を祝う/吉祥 三寒三友を中心に)」(現在開催中の特集展示、及び陳列。)
東博で見たもの、写したもの。(2007年8月)
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )

「小堀遠州 美の出会い展」 松屋銀座

松屋銀座8階大催場(中央区銀座3-6-1
「大名茶人・遠州400年 小堀遠州 美の出会い展」
2007/12/30-2008/1/14



かの古田織部に茶道を習い、江戸時代の大名茶人としても名高い小堀遠州(本名、小堀政一。1579-1647)の業績を辿ります。松屋銀座で開催中の回顧展です。



遠州は茶人としてだけではなく、作庭や建築にまでを手がけたマルチな文化人です。また主にお茶を通じて、当時の後水尾天皇らの皇族や公家から将軍家光以下、伊達、前田の諸大名、さらには光悦らの文化人とも深く交流していました。もちろんこの展示では、そのような将軍家や大名らとの繋がりを示す書状などが多数紹介されています。後水尾天皇の書、または探幽筆、遠州賛による「松原の絵」などは、彼の幅広い交流の一端を示す作品とも言えそうです。



遠州の好みは「綺麗さび」と呼ばれる、端正のとれた美しいやきものです。自身が直接焼かせたものと、逆に埋もれていた作を発掘して世に知らしめた品(中興名物)の双方が紹介されていましたが、まずは釉薬が円を描くような穏やかな曲線美を見せる「瀬戸 春庵 瓢箪 茶入」(五島美術館蔵)や、全く澱みのなく、凛と佇む半筒形の器に、黄土色の釉薬が溢れんばかりにたっぷりとかけられた「高取 面 茶碗」(三井記念美術館蔵)などに惹かれました。またもう一点、忘れられないのは「油滴天目」(北村美術館蔵)です。油滴というよりも、のぎ目天目のような釉の流れる様子が美しい作品ですが、深い藍色に仄かな光も当たって、ぽっと照り出すような鮮やかな青みもたたえていました。

特に印象深かったのは、最晩年の光悦が遠州のために焼いたという「膳所光悦」です。膳所とは近江、現在の大津市の地名で、光悦がその地の砂を取り寄せて作ったことからこのような名前が付けられています。琳派の光悦というと、どこかモダンな造形を得意としていたようにも思えますが、ここに紹介されているのは、さながらそれ自身が深く瞑想しているかのような静けさをたたえた器です。形が円ではなく、やや四角張っている部分が光悦流なのかもしれません。

現在の小堀家宗家、13世家元の宗実氏のプロデュースによるプラチナ箔の「利庵」も展示されていました。これは愛知万博に展示されていたものを移設したものだそうです。

「目の眼 2008/2月号/里文出版」

作庭の業績については簡単な映像等の紹介で終っていましたが、まずは茶人としての遠州を知る良い機会でした。14日まで開催されています。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )

「目黒の新進作家 - 7つの作家、7つの表現 - 」 目黒区美術館

目黒区美術館目黒区目黒2-4-36
「目黒の新進作家 - 7つの作家、7つの表現 - 」
2007/12/4-2008/1/13



目黒と関係(在住、在学など。)する新進の若手アーティストを紹介します。7名の作家による、写真、絵画、インスタレーション等で構成された展覧会です。

出品作家は以下の7名です。公式HPより転載します。

東亭順(絵画)
石川直樹(写真)
源生ハルコ(絵画)
鈴木康広 (立体)
瀧健太郎 (映像)
野村恵子 (写真)
屋代敏博 (写真)



まずは、画廊の個展等でも印象深い東亭順のアクリル画を挙げたいと思います。大小様々に、また形も円や四角をとる支持体に描かれているのは、さながら空に浮かぶ雲とも、はたまた氷の結晶を拡大して見ているとも言えるような、淡い光の織りなす独特なパターンです。その統一された色彩感やモチーフが、展示室全体を一つのインスタレーションとして穏やかに包み込んでいますが、個々の作品におけるイメージは、モチーフの「空」だけに縛られない多様な心象風景をも生み出しています。絵画を見るというよりも、そこにある色や光を浴びているような感覚さえ受ける作品です。





写真では、SCAIの展示の記憶も新しい石川直樹と、主に南国の風景写真をドキュメンタリー風情にまとめあげる野村恵子が印象に残ります。岩盤の迫出す南仏の洞窟と住宅を捉えた石川の「ALTERED SPACE」からは、あまり人の営みを感じさせない、言い換えればその土地の持って来た長い歴史の記憶を呼び覚まし、また逆に野村恵子のシリーズは、南国全体が人間味を帯びているとでも言えるような、美しい風景に見え隠れする一種のドロドロとした生活の痕跡を強くにおわせていました。そのドラマに見入ります。

目黒区内の銭湯をモチーフとした、屋代敏博の「銭湯」シリーズは、まるで何かの騙し絵を見ているような気持ちにさせられる作品です。(上段、チラシ画像。)横尾忠則の「Y字路」ならぬ、一点を対称軸に左右へと開ける銭湯の光景がパノラマ的に捉えられていますが、そのミニマル的な構図の妙や不自然なほどに鮮やかな色の効果もあってか、何やら実際にはない、非現実の架空の場を見ているような気持ちにもさせられます。写真であるのに、模型かジオラマなどを撮って提示しているような作品と言えるかもしれません。不思議です。



会場で一際人気があったのは、大掛かりな装置を用いながらも、シンプルな美意識を見る鈴木康広の「まばたきの葉」でした。屋根にまで届くほど高い一つの煙突のような装置の中へ紙製の葉を何枚か入れると、それが上部へと一気に吹き上げられてパラパラと降ってきます。ちなみにタイトルの「まばたき」とは、その葉の落ちる様子を眺めれば一目瞭然です。思わず時間を忘れて、何度も葉を降らしてしまいました。

次の日曜日、13日まで開催されています。
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )

「吉祥 三寒三友を中心に」(博物館に初もうで) 東京国立博物館

東京国立博物館・東洋館第8室(台東区上野公園13-9
「吉祥 三寒三友を中心に」(博物館に初もうで・平常展)
1/2-27



東洋館での新春特集陳列です。お正月に因み、三寒三友(松竹梅)など、主に中国の吉祥画が展示されています。



一見、地味ではありますが、伝馬麟の「梅花双雀図」(南宋時代)はなかなか興味深い作品です。しっかりとした筆遣いにて細やかに表された梅の枝に、つがいの雀がひょいとのってじゃれ合っていますが、何故かそのうちの一羽、右手の雀は頭の部分だけしか描かれていません。その理由は不明ですが、もう一羽の雀が、さながら急に別の世界より飛び出して来た雀に驚いているようにも見えてしまいました。これは滑稽です。



竹と言う簡素なモチーフを用いながらも、迫力満点の構図で見入るのは、呉宏の「墨竹図」(清時代)でした。剛胆なタッチにて示された竹がまるで生き物のようにうごめき、あたかもゴウゴウと轟く風の音を伝えるかのような臨場感すらたたえています。また墨の濃淡だけで表した奥行き感も巧みです。その深い竹林の闇の奥をのぞき込んでいるかのようでした。



シャープな造形描写にて、梅の木を逞しくも表した「墨梅図」(清時代)も力強い作品です。まるで揺らぎのない線描や、直線上に伸びて重なる枝がどこか「前衛」という言葉も連想させますが、これは清朝三代皇帝、順治帝の描いた作品なのだそうです。この力漲る描写も、彼の皇帝としての自信や権力そのものより由来しているのかもしれません。



 

展示のハイライトは、沈銓、つまりは沈南蘋の大作屏風、「鹿鶴図屏風」(清時代)でしょう。松、桃、鶴に鹿などの吉祥の主題をとるモチーフが、右へ左へと、木立より荒々しい波打ち際、そして岩場へと場所を変えて広がるように描かれています。まずは彼らしい細かやな描写、例えば鶴の首筋に見る点描で示された見事な毛並みなどにも見入るところですが、特に印象深いのは、険しく、また鋭い瞳を見開く鹿の野性味に溢れた表現でした。全体より受ける濃密さという点においては、表現法こそ異なるものの、どこか中国画における若冲というようなイメージさえ感じさせます。最近、特に惹かれている画家の一人です。

約20点ほどの出品ですが、絵画中心だったせいか、本館の特集展示よりも楽しむことが出来ました。お見逃しなきようおすすめします。

1月27日までの開催です。

*関連エントリ
「子年に長寿を祝う」(博物館に初もうで) 東京国立博物館(本館・新春特集展示)
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )

「メトロ&ぐるっとパス」を買ってみました

昨年10月に発売された「ぐるっとパス」の新バージョンです。東京メトロ一日乗車券2枚と、パス一冊がセットになっています。いつもはパスだけを使うことが多いのですが、普段、画廊巡りなどでメトロ一日券を使うこともあり、今回はこのセット券を購入することにしました。



金額は2800円です。ぐるっとパスが通常2000円、またメトロ一日券が710円ということを考えると、メトロの一日券が2枚も入っていながら3000円を切るとは、なかなか安いと言えるのではないでしょうか。もちろんパスだけでもかなりお得なので、メトロ一日券をほぼ無料でもう1枚手に入れられるチャンスでもありそうです。

ぐるっとパス一冊2000+(メトロ一日券710×2枚)=3420円(通常価格)
メトロ&ぐるっとパス 2800円 差額620円

そもそもメトロは運賃が安いので、一日券分の710円を乗りこなすのはかなり大変なのですが、感覚的に言うと約4回ほど乗り降りすればほとんど元が取れます。実際、このパスを購入して使った昨日、都内の美術館を3カ所廻りましたが、交通費は一日券一枚だけで済みました。

 
 

最寄メトロ接続駅~230円~六本木一丁目(泉屋博古館・吉祥)~160円~目黒(目黒区美・新進作家)~190円~銀座(松屋・小堀遠州展)~190円~最寄メトロ接続駅 計770円 差額60円

ちなみに今回のパスで見るつもりでいる無料の展示は以下の通りです。ともかく出光がフリーになってからパスの利用価値がグンと増しました。



春のめざめ@山種美術館(1/5-3/9)
コレクションの地平 - 20世紀美術の息吹@ブリヂストン美術館(2/9-4/13)
王朝の恋@出光美術館(1/9-2/17)
建築の記憶@東京都庭園美術館(1/26-3/31)
目黒の新進作家@目黒区立美術館(12/4-1/13)
吉祥のかたち@泉屋博古館・分館(1/5-2/17)
光と彫刻の芸術 - ガラス - @大倉集古館(1/2-3/6)
池田満寿夫展@東京オペラシティアートギャラリー(1/26-3/23)
サイレント・ダイアローグ@ICC(11/23-2/17)

なおメトロ版の他に、同じ2800円にて都営交通の一日券2枚とセットになった「都営deぐるっとパス」も発売されています。こちらは都営をメインに使われる方に重宝しそうです。

*関連エントリ
東京メトロ一日乗車券で美術館巡り
都電・都バス・都営地下鉄一日乗車券の美術館割引
結果報告@ぐるっとパス(2007・夏)
「ぐるっとパス2006」 戦況報告!
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )

「子年に長寿を祝う」(博物館に初もうで) 東京国立博物館

東京国立博物館・本館特別1・2室(台東区上野公園13-9
「子年に長寿を祝う」(博物館に初もうで・平常展)
1/2-27



今年の「美術初め」も東博です。本館、平常展の2室を用いての恒例企画、新春特別展示を見てきました。子宝をも象徴するねずみと、長寿、吉祥などに因んだ作品が紹介されています。

 

今回の展示を見ると、幾ら十二支の一つとは言え、ねずみがこれほど身近な存在だったとは意外な感覚もしますが、ともかく絵だけではなく、器などにまでそのモチーフが多様に登場しています。サントリー美術館での絵巻も印象深かった「鼠草紙」(江戸時代)はまさにその王道を往く作品でもありますが、白鼠が大根をかじる様を伊万里に焼いた「染付鼠に大根図菊形皿」(江戸時代)には驚かされるものがありました。皿に鼠の絵とは、どこか使うのを躊躇ってしまいそうにもなりますが、この白鼠は豊饒の神でもある大黒天の使いなのだそうです。また肝心の大黒がいないのが不思議ですが、これは「大黒ねずみ」と「大根を食うねずみ」をかけているとのことでした。滑稽というよりも、それを取り合わたアイデアに感心します。全く思いつきません。



応挙門下という、白井直賢による「鼠図」(江戸時代)が充実しています。黒ねずみが三匹、何をするわけでもなく、ただ群れている様子が描かれていますが、そのフサフサした毛色やにょろっと伸びる尻尾などが実に細やかに表現されていました。リアルなねずみというのには何やら抵抗感も覚えてしまいますが、このような可愛らしいねずみであるなら大歓迎です。



吉祥主題としては、立派な鳳凰が無数の鳥を従える「百鳥図」(明時代)が圧倒的です。旭日の方へ向かって吼えるように立つ鳳凰を中心に、鶴や鳩などが縦横無尽に配されています。色がやや退色しているからか、一見するとそれほどの派手さは見られませんが、その鳳凰はまさに江戸絵画のそれへと引き継がれていく妖艶さをたたえています。見事でした。



鼠繋がりとして、浮世絵師、松雪斎銀光の描いた「鼠小僧次郎吉」(1874)の錦絵も興味深い品です。ちょうど囚われようとする時の光景が描かれているのでしょうか。刀を振りかざして勇ましく闘うような姿をとっています。

「子年に長寿を祝う」は今月27日までの開催です。

*関連エントリ
「吉祥 三寒三友を中心に」(博物館に初もうで) 東京国立博物館(東洋館・新春特集陳列)
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )

メモリアルイヤー・美術編 2008

クラシック音楽に次いでの美術編です。

生誕年

80年 イヴ・クライン(1928-1962) 澁澤龍彦(1928-1987) アンディ・ウォーホル(1928-1987) フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(1928-2000) ドナルド・ジャッド(1928-1994) ベルナール・ビュフェ(1928-1999)
100年 バルテュス(バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ)(1908-2001) 東山魁夷(1908-1999) 田中一村(1908-1977) アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)
150年 フェルナン・クノップフ(1858-1921)
200年 オノレ・ドーミエ(1808-1879)
350年 尾形光琳(1658-1716)
450年 本阿弥光悦(1558-1637)


没後年

15年 猪熊弦一郎(1902-1993) 杉山寧(1909-1993) 
20年 小磯良平(1903-1988) イサム・ノグチ(1904-1988) 
30年 岡鹿之助(1898-1978) ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978) 東郷青児(1897-1978) 安田靫彦(1884-1978)
35年 横山操(1920-1973) パブロ・ピカソ(1881-1973)
40年 藤田嗣治(1886-1968) マルセル・デュシャン(1887-1968)
45年 ピエロ・マンゾーニ(1933-1963)ジャン・コクトー(1889-1963)
50年 ジョルジュ・ルオー(1871-1958) 横山大観(1868-1958) モーリス・ド・ヴラマンク(1876-1958)
60年 松本竣介(1912-1948)
70年 エルンスト・キルヒナー(1880-1938) エルンスト・バルラハ(1870-1938)
80年 佐伯祐三(1898-1928)
90年 エゴン・シーレ(1890-1918) グスタフ・クリムト(1862-1918)
100年 橋本雅邦(1835-1908)
150年 歌川広重(1797-1858)
400年 狩野光信(1565-1608)

 

まず身近なのは、今月末より国立新美術館で展示も始まる、大観の没後50年でしょうか。「生々流転」をはじめとする代表作がズラリと揃う内容とのことで、改めて彼の画業に注目が集まることかと思われます。また日本画家つながりとしては、今年生誕100年を迎える東山魁夷にも注目です。大観とは微妙に会期が異なっていますが、こちらも東近美での回顧展が予定されています。見応えのある展示となりそうです。

「横山大観展」@国立新美術館(1/23-3/3)
「東山魁夷展」@東京国立近代美術館(3/29-5/18)

私としては生誕200年のドーミエにも注目したいところです。彼の作品を回顧的に見る展示にはなかなか接することが出来ませんが、2月より福島県立美術館にて「風刺の巨匠 ドーミエ版画展」と題した展覧会も予定されています。巡回の有無は不明ですが、一度まとめて見てみたい作家の一人です。

「風刺の巨匠 ドーミエ版画展」@福島県立美術館(2/16-3/13)

 

さて最後に是非挙げておきたいのが、光琳の生誕350年、光悦の生誕450年です。私も昨日初めて教えていただいたのですが、それぞれの生誕も記念しての展覧会、「大琳派展 - 継承と変奏 - 」が本年秋、東京国立博物館にて会期一ヶ月の限定で開催されます。これはメインの光琳を軸に、サブタイトルにもある「継承と変奏」、つまりは宗達、光悦、乾山、抱一、其一らと言った、まさに琳派の王道の絵師たちの作品を一堂に展観するもので、それぞれの代表作が計200点余りほど集まるようです。また琳派関連では、熱海のMOA美術館でも仮称「琳派展」が予定されています。琳派ファンにはたまらない一年となりそうです。

「大琳派展 - 継承と変奏 - 」@東京国立博物館(10/7-11/16)
「(仮称)琳派展」@MOA美術館(12/6-12/24)

音楽編同様、記念年の作家があればどうぞ情報を寄せて下さい。お待ちしております。

メモリアルイヤー・クラシック音楽編 2008

*関連エントリ
メモリアルイヤー 2007
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )

メモリアルイヤー・クラシック音楽編 2008

今年からは音楽と美術にわけて挙げたいと思います。本年に記念年を迎える音楽家です。

生誕年

80年 カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007) エフゲニー・スヴェトラーノフ(1928-2002) 
90年 ベルント・ツィンマーマン(1918-1970) レナード・バーンスタイン(1918-1990) ビルギット・ニルソン(1918-2005)
100年 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989) ヨーゼフ・カイルベルト(1908-1968) カレル・アンチェル(1908-1973) フーゴー・ディストラー(1908-1942) ルロイ・アンダーソン(1908-1975) 朝比奈隆(1908-2001) ホアキン・ニン=クルメル(1908-2004) オリヴィエ・メシアン(1908-1992) クルト・アイヒホルン(1908-1994) ダヴィッド・オイストラフ(1908-1974)
150年 ジャコモ・プッチーニ(1858-1924) ウジェーヌ・イザイ(1858-1931)


没後年

5年 ハンス・ホッター(1909-2003)
10年 クラウス・テンシュテット(1926-1998) ジョージ・ロイド(1913-1998) ジェラール・グリゼー(1946-1998) アルフレット・シュニトケ(1934-1998)
15年 ボリス・クリストフ(1914-1993) シモン・ゴールドベルク(1909-1993) エーリヒ・ラインスドルフ(1912-1993) モーリス・アブラヴァネル(1903-1993) タチアナ・ニコラーエワ(1924-1993) ルチア・ポップ(1939-1993)
20年 エフゲニー・ムラヴィンスキー(1903-1988) ジャチント・シェルシ(1905-1988) ヘンリク・シェリング(1918-1988)
30年 アラム・ハチャトゥリアン(1903-1978)
35年 ヨゼフ・シゲティ(1892-1973) イシュトヴァン・ケルテス(1929-1973) ハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900-1973) 近衛秀麿(1898-1973) オットー・クレンペラー(1885-1973) パブロ・カザルス(1876-1973) ブルーノ・マデルナ(1920-1973)
40年 トゥリオ・セラフィン(1878-1968) マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ(1895-1968) ヨン・レイフス(1899-1968) シャルル・ミュンシュ(1891-1968)
45年 フリッチャイ・フェレンツ(1914-1963) フリッツ・ライナー(1888-1963) カール・ハルトマン(1905-1963) パウル・ヒンデミット(1895-1963) 
50年 ヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)
60年 ヴォルフ=フェラーリ(1876-1948) フランツ・レハール(1870-1948) ウンベルト・ジョルダーノ(1867-1948)
80年 レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)
90年 クロード・ドビュッシー(1862-1918) アッリーゴ・ボーイト(1842-1918)
100年 エドワード・マクダウェル(1860-1908) リムスキー=コルサコフ(1844-1908) パブロ・デ・サラサーテ(1844-1908) アルベルト・ディートリヒ(1829-1908)

 

まずやはり印象深いのは、先日見た東京MXの特集やCD店頭など、既に盛り上がりの兆しを見せている感のある帝王カラヤンの生誕100年です。音源の豊富な彼のことなので、今後もメディア等に積極的に取り上げられていくことが予想されます。ちなみに彼と何かと比較されることも多いレニーも、少し中途半端ですが今年生誕90周年を迎えます。CDの再発等、注目もなされそうです。



作曲家では、没後100年のリムスキー=コルサコフ、それに没後50年のヴォーン・ウィリアムズあたりがやはり気になります。両者とも今年に限らず、今度コンサートでの登場回数も増えてくるのではないでしょうか。また上には挙げませんでしたが、今年のLFJのテーマ作曲家でもあるシューベルトは没後180年です。「未完成」や一部の歌曲、器楽曲だけでなく、オペラまで含むその制作の全貌を聴く機会が増えればとも思いました。

簡単に分かる範囲でリストアップしています。他にも記念年のアーティストがあればご教授していただけると幸いです。宜しくお願いします。

メモリアルイヤー・美術編 2008

*関連エントリ
メモリアルイヤー 2007
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

謹賀新年 2008

新年明けましておめでとうございます。
本年もみなさまにとって素晴らしい一年であるよう、心よりお祈り申し上げます。



いつものようにNHK-FMのバイロイトを聴きながら年越しを思っていましたが、それも既にネットラジオで聴いてしまっていたので、テレビをザッピングしていたところ偶然発見した、TOKYOMXのテレビのカラヤンのニューイヤーコンサート(1987年)を見て新しい年を迎えました。何でも今年、カラヤンの生誕100周年ということで、それを記念した特集番組でもあったようです。

ちなみに上の画像は、酒井抱一の「手鑑帖」より「富士山図」です。今年の元日の太平洋側は晴天とのことで、富士山をバックに鮮やかな初日の出が見られる箇所も多いのではないでしょうか。

それでは今年一年、この「はろるど・わーど」をどうぞ宜しくお願いします。
コメント ( 14 ) | Trackback ( 0 )
   次ページ »