『須藤康花―光と闇の記憶―』 松本市美術館

松本市美術館
『須藤康花―光と闇の記憶―』 
2023/12/9〜3/24


須藤康花『夢幻2』

1978年に福島県に生まれた画家の須藤康花(すどう・やすか)は、幼少期にネフローゼ症候群を発症して入退院を繰り返しながら描くことに集中すると、多摩美術大学に進学して版画を研究するも、2009年に30歳という若さにて亡くなりました。

その須藤の美術館での初の大規模回顧展が『須藤康花―光と闇の記憶―』で、父が松本市内に設立した康花美術館の全面的な協力のもと、初期から晩年までの約180点の作品が展示されていました。


左:須藤康花『ヒマワリととんぼ』

まず冒頭は幼少期から10代前半の頃に描いた作品が並んでいて、明るく伸びやかなタッチで美しい田園を描いた『ヒマワリととんぼ』などに目がとまりました。

14歳の時に母を亡くした須藤は、母と同じ慢性肝炎を発症して体調が深刻となるもののの、16歳に静岡県に転居して絵の道へ進むべく沼津美術研究所に入所し、のちに東京へ移って多摩美術大学へ進学しました。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

須藤の木炭やデッサンによる一連の作品を前にして印象に深いのは、暗がりの中に淡く温かみのある光が差し込みつつ、幻視とも夢想的とも呼べるようなイメージが広がっていることでした。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

またそこには何か特定し得ない奇異な生き物や不思議な植物などが描かれていて、時に未知の世界の洞窟を思わせる風景が幻想的に表されていました。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

こうした主にモノクロームによるイリュージョン的な世界を描いた作品の一方で、温かみのある色彩によりリアルな風景を表したのが長野県麻績村(おみむら)でのスケッチでした。


『須藤康花―光と闇の記憶―』 展示作品

大学で版画を研究しつつ、週末には父とともに麻績村で移った須藤は、農作業に勤しみながら地域の子どもたちに絵を教えるなどして暮らしました。人のいない光景にどことない寂しさも感じられるものの、自然の光景を素直に捉えようとした須藤の制作のありようが伺えるかもしれません。


須藤康花『白夜』

20代の半ば過ぎに描かれ、ラストの「光と闇の記憶」に並んだ『幻葬』や『崩壊前夜』、それに『白夜』などの作品にも心を惹かれました。


須藤康花『幻葬』

いずれも深い闇を伴う洞窟のような空間からわずかな光が滲み出すように灯されていて、時に人影と思しきすがたも見ることができました。また銅版の技法に由来した、画面全体に広がる繊細な質感も魅惑的だったかもしれません。


須藤康花『崩壊前夜』

展示室内の撮影も可能です。

会期末での鑑賞となりました。3月24日まで開催されています。

『須藤康花―光と闇の記憶―』 松本市美術館@MatsumotoMuseum
会期:2023年12月9日(土) 〜 2024年3月24日(日)
休館:月曜日(休日の場合翌平日)、年末年始(12/29~1/3)
時間:9:00~17:00
 *入場は16時半まで。
料金:大人1000円、大学高校生・70歳以上の松本市民700円。
住所:長野県松本市中央4-2-22
交通:JR線松本駅から徒歩約12分。JR松本駅よりタウンスニーカー(市内周遊バス)東コース「伊織霊水(美術館北)」下車。
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