「めでたい北斎」 すみだ北斎美術館

すみだ北斎美術館
「開館一周年記念 めでたい北斎~まるっとまるごと福づくし」
2017/11/21〜2018/1/21



北斎ゆかりの墨田の地に誕生した「すみだ北斎美術館」も、この11月で、開館1周年を迎えました。

それを祝しての展覧会です。そもそも江戸時代の趣味人たちは、新春におめでたい図像を描いた摺物を贈りあう風習がありました。ともかくタイトルが全てを物語ります。「めでたい」とあるように、右も左も、いわゆる吉祥主題の作品ばかりでした。

まずは七福神です。冒頭に北斎の「大黒酒宴図」が待ち構えます。酒を飲んでは上機嫌の大黒様です。魚屋北渓の「見立七福神」も佳品ではないでしょうか。見立とあるように、直接、七福神を描かず、例えば掛け軸の打ち出の小槌が大黒天を、また宝塔が毘沙門天を示しています。7つの神を探すのにさほど時間はかかりませんでした。


葛飾北斎「布袋図」 *前期展示

肉筆で目を引くのが、北斎の「布袋図」でした。丸々と太った布袋が、白く大きな袋の上に乗り、横笛を吹く姿を描いています。白い袋と布袋の腹の立体感が絶妙で、筆に迷いは見られませんでした。

七福神以外の神も登場します。中でも目を引くのは、芸能の神として知られる天臼女命と、導きの神として信仰を集める猿田彦大神でした。なお出展作品は何も北斎だけではありません。一門の作品もかなり多く出ていました。

神の次は吉祥モチーフです。生き物、草木、話のほか、様々にめでたい作品をずらりと紹介しています。ただし面白いのは、一見すると、どの辺がめでたいのか良く分からない作品が少なくないことです。例えば魚屋北渓は「塩竜図」を描いていますが、この竜は塩を食べ、鱗から塩を出し、精力剤として重宝されたという逸話から、おめでたい存在として知られていました。また北斎漫画からコウモリを描いた作品もありましたが、コウモリの漢字の読みが、中国でフウ、すなわち福に似ていたことから、やはり縁起の良い生き物だと考えられていたそうです。意外な事物にも、めでたいモチーフが潜んでいました。

新年のならわしも見逃せません。門松に羽子板、それに蹴鞠や凧揚げなどの定番のモチーフの中、1つ興味深かったのが、七草がゆを描いた作品でした。女性が粥を準備するため、まな板の上に草を載せ、刻もうとしていますが、この際に大きな音を立てるのが、より良いとされていました。とすれば、当時の人々は、一生懸命に草を叩いていたのでしょうか。何でも、田畑の鳥を追い払うイメージと重ねられていたそうです。知りませんでした。


葛飾北斎「目黒不動尊詣」 *前期展示

ラストは、目黒不動などの、めでたい場所を描いた作品が並びます。小品の摺物が多く、展示自体に派手さはありませんが、めでたいモチーフばかりに囲まれれば、楽しい気持ちにならないはずもありません。


出口ではおみくじを引くことも出来ます。ちょっとしたお正月気分も味わえるかもしれません。


魚屋北渓「兎の鹿島おどり」 *後期展示

最後に展示替えの情報です。前後期にて多数の作品が入れ替わります。

「開館一周年記念 めでたい北斎~まるっとまるごと福づくし」(出品リスト)
前期:11月21日(火)〜12月17日(日)
後期:12月19日(火)〜1月21日(日)


11月25日(土)と翌26日(日)には、美術館前の緑町公園にて、「開館1周年記念感謝祭」が行われるそうです。焼きそばやから揚げ、団子などを販売する飲食コーナーのほか、北斎缶バッジや版画スタンプなどの体験コーナーが開設されます。美術館の来場者のみならず、地域の方々を含めて、また盛り上がるかもしれません。



2018年1月21日まで開催されています。

「開館一周年記念 めでたい北斎~まるっとまるごと福づくし」 すみだ北斎美術館@HokusaiMuseum
会期:2017年11月21日(火) 〜 2018年1月21日(日)
休館:月曜日。
時間:9:30~17:30(入場は17:00まで)
料金:一般1000(800)円、大学・高校生・65歳以上700(560)円、中学生300(240)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *観覧日当日に限り、常設展も観覧可。
住所:墨田区亀沢2-7-2
交通:都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩5分。JR線両国駅東口より徒歩10分。
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