都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「戸谷成雄―現れる彫刻」 武蔵野美術大学美術館
武蔵野美術大学美術館
「戸谷成雄―現れる彫刻」
10/16〜11/11

1947年に生まれ、「日本の現代彫刻を牽引する」(解説より)戸谷成雄の個展が、武蔵野美術大学美術館にて開催されています。
入口のアトリウムからして圧巻でした。吹き抜けの中央には、高さ9メートルにも及ぶ、「雷神-09」がそびえ立っています。素材はもちろん木材で、下部が球形をなしていて、球の上から、細い柱のような突起が、天井付近に達していました。表面は、チェーンソーにより彫り込まれ、無数の襞が現れていました。一本の樹木が根を生やし、地面に食い込んでいるようにも見えなくはありません。実際には、「木が雷に打たれた姿から着想され、空に轟く雷の構造を反転させ」(解説より)ているそうです。雷神の例を引くまでもなく、神の現れを表現しているのでしょうか。その起立する様は、まさしく神々しいほどでした。
空間自体を作品に落とし込み、観客を内部へ取り込んだ、インスタレーション的な展開を見せているのも、興味深いところかもしれません。

「見られる扉Ⅱ」 1994年 *参考図版
その一つが「見られる扉Ⅱ」でした。展示室内には、高さ4メートル弱、横幅11メートルの壁が立ちはだかり、鑑賞者の行く手を阻んでいます。その壁には扉が7つあり、うち中央の1つのみが通行可能、つまりは向こう側に出入り出来る仕掛けになっていました。
ほかの6つの扉は塞がっていて、いずれも小さな覗き穴があり、向こう側を見やることだけが可能でした。通り抜けられる扉の内部は、やはり襞がたくさん現れていて、荒々しい木の質感を目の当たりにすることも出来ます。それ以外の壁の部分は、漆喰、ないし蝋で仕上がっていて、ほぼ平面でした。通り抜けて壁を振り返ると、ちょうど扉の部分に木の襞で穴を象った、先の面とは全く異なった景色が広がっていました。まるで古代の神殿の壁を前にしたかのようでした。

「境界からⅤ」 1997-1998年 *参考図版
「境界からⅤ」も面白い作品です。順に沿って進むと、高さ3メートル、横幅5メートル弱の壁が現れます。素材は木で、その高さゆえに、向こう側は一切見通せません。ただあるのは大きな穴で、やはり無数の襞が付けられていました。しかし穴は真っ暗で、一体、どれほど奥にのびているか分かりません。ブラックホールと表現するには語弊があるでしょうか。ただぽっかりと口を開けていました。
この作品は、何も穴だけではありませんでした。壁の裏側に回ると、先の「雷神」と同じく、柱状の突起部が、水平に突き出していることが見て取れます。長さは何と20メートルもあり、根元がやや膨み、空洞になっていたゆえに、真っ暗な穴として見えていたわけでした。つまり反対側から覗き込んでいたわけです。
「洞穴体」シリーズも迫力がありました。通路状のスペースには、高さ2メートルほどの木の壁が、4点、交互に立っています。例のチェーンソーによる襞が出来ていて、一部は隆起し、まるで海面のようなうねりを伴っています。溶岩の固まった、岩の表面とも呼べるかもしれません。生々しくもありました。
その裏へ回って驚きました。一転してフラットな表面に、荒々しい襞を伴った、木の塊がくっ付いています。得体の知れない動物が、屈んでいる姿のようにも見えました。なにやら不気味であり、また強い量感です。これほど表と裏で景色が違うとは思いませんでした。
出展は20点です。大型の旧作から近作を交えながら、アトリウムと2つの展示室を効果的に用いていました。これまでも私自身、戸谷の作品を、東京国立近代美術館の常設展示や、所沢の「引込線」のほか、都内のギャラリーなどで何度か目にしてきましたが、このスケールで見るのは初めてでした。充足感がありました。

カタログが充実していました。一般向けは1800円で、出展作品の図版だけでなく、過去のアーカイブも掲載されています。戸谷に関する書籍の一つの決定版になりそうです。

「やきものの在処」展示風景
なお、同じく美術館内の展示室4と5では、「やきものの在処」と題し、同大学所蔵の陶磁器コレクションを紹介する展示も行われています。

「やきものの在処」展示風景
タブレットを用いたデジタルデータの展示の試みもあります。こちらは一部の作品を除き、自由に撮影も出来ました。
日曜日はお休みです。お出かけの際はご注意下さい。
入場は無料です。11月11日まで開催されています。私はおすすめします。
「戸谷成雄―現れる彫刻」 武蔵野美術大学美術館(@mau_m_l)
会期:10月16日(月)〜11月11日(土)
休館:日曜日、祝日、10月30日(月)。
*10月29日(日)は特別開館。
時間:11:00~18:00
*土曜日、特別開館日は17時閉館。
料金:無料。
場所:東京都小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅下車徒歩約20分。JR線国分寺駅(バス停:国分寺駅北入口)より西武バスにて「武蔵野美術大学」下車。(所要約20分)
「戸谷成雄―現れる彫刻」
10/16〜11/11

1947年に生まれ、「日本の現代彫刻を牽引する」(解説より)戸谷成雄の個展が、武蔵野美術大学美術館にて開催されています。
入口のアトリウムからして圧巻でした。吹き抜けの中央には、高さ9メートルにも及ぶ、「雷神-09」がそびえ立っています。素材はもちろん木材で、下部が球形をなしていて、球の上から、細い柱のような突起が、天井付近に達していました。表面は、チェーンソーにより彫り込まれ、無数の襞が現れていました。一本の樹木が根を生やし、地面に食い込んでいるようにも見えなくはありません。実際には、「木が雷に打たれた姿から着想され、空に轟く雷の構造を反転させ」(解説より)ているそうです。雷神の例を引くまでもなく、神の現れを表現しているのでしょうか。その起立する様は、まさしく神々しいほどでした。
空間自体を作品に落とし込み、観客を内部へ取り込んだ、インスタレーション的な展開を見せているのも、興味深いところかもしれません。

「見られる扉Ⅱ」 1994年 *参考図版
その一つが「見られる扉Ⅱ」でした。展示室内には、高さ4メートル弱、横幅11メートルの壁が立ちはだかり、鑑賞者の行く手を阻んでいます。その壁には扉が7つあり、うち中央の1つのみが通行可能、つまりは向こう側に出入り出来る仕掛けになっていました。
ほかの6つの扉は塞がっていて、いずれも小さな覗き穴があり、向こう側を見やることだけが可能でした。通り抜けられる扉の内部は、やはり襞がたくさん現れていて、荒々しい木の質感を目の当たりにすることも出来ます。それ以外の壁の部分は、漆喰、ないし蝋で仕上がっていて、ほぼ平面でした。通り抜けて壁を振り返ると、ちょうど扉の部分に木の襞で穴を象った、先の面とは全く異なった景色が広がっていました。まるで古代の神殿の壁を前にしたかのようでした。

「境界からⅤ」 1997-1998年 *参考図版
「境界からⅤ」も面白い作品です。順に沿って進むと、高さ3メートル、横幅5メートル弱の壁が現れます。素材は木で、その高さゆえに、向こう側は一切見通せません。ただあるのは大きな穴で、やはり無数の襞が付けられていました。しかし穴は真っ暗で、一体、どれほど奥にのびているか分かりません。ブラックホールと表現するには語弊があるでしょうか。ただぽっかりと口を開けていました。
この作品は、何も穴だけではありませんでした。壁の裏側に回ると、先の「雷神」と同じく、柱状の突起部が、水平に突き出していることが見て取れます。長さは何と20メートルもあり、根元がやや膨み、空洞になっていたゆえに、真っ暗な穴として見えていたわけでした。つまり反対側から覗き込んでいたわけです。
「洞穴体」シリーズも迫力がありました。通路状のスペースには、高さ2メートルほどの木の壁が、4点、交互に立っています。例のチェーンソーによる襞が出来ていて、一部は隆起し、まるで海面のようなうねりを伴っています。溶岩の固まった、岩の表面とも呼べるかもしれません。生々しくもありました。
その裏へ回って驚きました。一転してフラットな表面に、荒々しい襞を伴った、木の塊がくっ付いています。得体の知れない動物が、屈んでいる姿のようにも見えました。なにやら不気味であり、また強い量感です。これほど表と裏で景色が違うとは思いませんでした。
出展は20点です。大型の旧作から近作を交えながら、アトリウムと2つの展示室を効果的に用いていました。これまでも私自身、戸谷の作品を、東京国立近代美術館の常設展示や、所沢の「引込線」のほか、都内のギャラリーなどで何度か目にしてきましたが、このスケールで見るのは初めてでした。充足感がありました。

カタログが充実していました。一般向けは1800円で、出展作品の図版だけでなく、過去のアーカイブも掲載されています。戸谷に関する書籍の一つの決定版になりそうです。

「やきものの在処」展示風景
なお、同じく美術館内の展示室4と5では、「やきものの在処」と題し、同大学所蔵の陶磁器コレクションを紹介する展示も行われています。

「やきものの在処」展示風景
タブレットを用いたデジタルデータの展示の試みもあります。こちらは一部の作品を除き、自由に撮影も出来ました。
【美術館】本日より、展示室2,3,アトリウム1では「戸谷成雄ー現れる彫刻」がOPENいたしました!彫刻学科教授、戸谷成雄先生の代表的な大型作品を一挙にご覧いただける機会です。ぜひお運びくださいませ。https://t.co/bVWKP1lLQd pic.twitter.com/GFbhJM4nUK
— 武蔵野美術大学 美術館・図書館 (@mau_m_l) 2017年10月16日
日曜日はお休みです。お出かけの際はご注意下さい。
入場は無料です。11月11日まで開催されています。私はおすすめします。
「戸谷成雄―現れる彫刻」 武蔵野美術大学美術館(@mau_m_l)
会期:10月16日(月)〜11月11日(土)
休館:日曜日、祝日、10月30日(月)。
*10月29日(日)は特別開館。
時間:11:00~18:00
*土曜日、特別開館日は17時閉館。
料金:無料。
場所:東京都小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅下車徒歩約20分。JR線国分寺駅(バス停:国分寺駅北入口)より西武バスにて「武蔵野美術大学」下車。(所要約20分)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )