酒井抱一「四季花鳥図巻」(巻下) 東京国立博物館

東京国立博物館・本館8室
酒井抱一「四季花鳥図巻」(巻下)
10/31~12/17

東京国立博物館の本館8室にて、酒井抱一の「四季花鳥図巻」(巻下)が公開されています。

「四季花鳥図巻」は1818年、根岸の庵居に「雨華庵」の額をかけた翌年に制作した作品で、抱一は上下の二巻に、四季の花鳥を描きました。巻子、箱の体裁ともに上質なことから、おそらくは、高位の家の吉事のために作られたとされています。



上下巻に示された植物は、全部で60種にも及び、禽鳥8種、昆虫9種を加えているのも特長です。草花は、琳派的な装飾性を帯びたものと、一転して写実的な描写が混在していました。とりわけ重要なのは、随所に昆虫が登場することです。

これまでの琳派、つまり宗達や光琳は、花鳥図において、昆虫を描き加えませんでした。よって自然の趣を琳派へと落とし込んだ、まさに江戸琳派の様式を確立した作品とも言われています。



中でも目立つのが、菊の花の蕾の上に乗るカマキリで、さも自らの存在感を示すかのように、前脚を振り上げていました。こうした虫は、円山四条派、ないし中国の伝統な草虫図、さらにこの頃に流行した博物図譜を参照したと考えられているそうです。



秋の冒頭は、白い萩と銀の月、そして丸い単純な朝顔の取り合わせで、いずれも琳派、特に光琳の様式に近い表現がとられています。



秋では楓の幹に赤ゲラが止まっていました。洗練された秋草の描写も魅力の一つです。随所に空気感、ないし風も感じられるかもしれません。



冬の到来を告げるのが雪でした。白梅には雪がシャーベット状に降り積もっています。またラストには隷書体で署名を記しています。印章は2つ押されていました。



撮影も可能です。抱一による、身近な草花や昆虫への、温かい眼差しも感じられるのではないでしょうか。その流麗な自然描写に心を惹かれました。



12月17日まで展示されています。

*写真は全て、酒井抱一「四季花鳥図巻 巻下」 江戸時代・文化15(1818)年 東京国立博物館

酒井抱一「四季花鳥図巻」(巻下) 東京国立博物館・本館8室(@TNM_PR
会期:10月31日(火) ~12月17日(日)
時間:9:30~17:00。
 *毎週金・土曜、および11月2日(木)は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し10月9日(月・祝)は開館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *特別展の当日チケットでも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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