都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「メディチ家の至宝ールネサンスのジュエリーと名画」 東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
「メディチ家の至宝ールネサンスのジュエリーと名画」
4/22~7/5

東京都庭園美術館で開催中の「メディチ家の至宝ールネサンスのジュエリーと名画」を見てきました。
ルネサンス期のフィレンツェを支配したメディチ家。芸術家のパトロンでもありました。当地のウフィツィ美術館などには歴代の当主らの収集した美術品が数多く残されています。
さてタイトルにもある「ジュエリーと名画」。一体、何を表しているのでしょうか。実のところ、その殆どを占めるのはカメオと肖像画でした。カメオとは大理石や貝殻を浮き彫りにした装飾品。古代ギリシアに由来します。メディチ家の人物もこぞって集めました。そして肖像画とはメディチ家の人物を描いた絵画です。よって絵画は全て肖像画でした。

ルイジ・フィアミンゴ(?)「ロレンツォ・イル・マニフィコの肖像」 1550年頃 ウフィツィ美術館(銀器博物館)
はじまりはロレンツォ・イル・マニフィコ。コジモの孫でフィレンツェの黄金時代を築いた人物です。ルイジ・フィアミンゴによる「ロレンツォ・イル・マニフィコの肖像」はどうでしょうか。堂々たる姿です。オレンジ色のマントに身を包んでいます。左には繁栄を意味する月桂樹。葉をつけています。右手に注目です。何やらスマートフォンのようなものを持っていますが、実際のところは紙でした。彼の能力や業績を示す言葉が記されているそうです。
アーニョロ・ブロンズィーノの「マリア・デ・メディチの肖像」は日本初公開です。父はコジモ1世。スペインの貴族で母のエレオノーラは大変な美貌の持ち主だったそうです。ややあどけない表情です。胸に手を当ててはやや不安そうな眼差しをしています。彼女は17歳で亡くなったそうです。早すぎる死。嘆き悲しまれたに違いありません。

ジェルマン・ル・マニエ(?)「フランス王妃、カテリーナ・デ・メディチ(カトリーヌ・ド・メディシス)の肖像」 1547-1559年 ウフィツィ美術館(パラティーナ美術館)
威厳に満ちています。ジェルマン・ル・マニエによる「フランス王妃、カテリーナ・デ・メディチ(カトリーヌ・ド・メディシス)の肖像」です。ドレスが装飾の極みでした。真珠でしょうか。数え切れないほど編み込まれています。ちなみにカトリーヌは先のロレンツォの孫であるロレンツォ2世の子。出産後に両親を亡くし、孤児になりますが、後にフランスのアンリ・ド・ヴァロワ(アンリ2世)と結婚。10人の子を授かります。肖像は40歳の頃に描かれたそうです。

ヘレニスム工芸(カメオの断片) ベンヴェヌート・チェッリーニ(?)(金による補作)「男性像をともなう二頭立て戦車」 前1世紀(カメオの断片) 1530-1545年(金による補作) フィレンツェ国立考古学博物館
カメオでは「ナクソス島のバッコスとアリアドネ」が美しい。モチーフはギリシア神話。カメオ自体は3世紀の作品です。フレームをメディチ家の時代に作り上げています。金の細工も鮮やか。七宝の技術が用いられています。また「男性像をともなう二頭立て戦車」も興味深いのではないでしょうか。カメオが下部。何と紀元前1世紀の作品です。割れてしまったのかもしれません。上部は失われています。そこを金で補っているわけです。男性像の造形も至極細かい。高い技術があったことを伺わせます。

オランダの金工家「赤ん坊を入れたゆりかご」 1695年頃 ウフィツィ美術館(銀器博物館)
技術といえば「赤ん坊を入れたゆりかご」が驚異的でした。制作年は1695年。作者はオランダの金工家です。ゆりかごは金。大きさは5センチもありません。にも関わらず、極めて精密な装飾がなされています。赤ん坊は真珠です。羽毛布団に包まれた赤ん坊を半ば見立てるかのように象っています。しかもゆりかごは可動式です。これぞ超絶技巧と言えるのではないでしょうか。

ヨナス・ファルク、ミケーレ・カストルッチ、グアルティエーリ・ディ・アンニバレ・チェッキ、ジュリオ・パリージの下絵に基づく「コジモ2世・デ・メディチのエクス・ヴォート(奉納品)」 1617-1624年 ウフィツィ美術館(銀器博物館)
数センチほどの小さなカメオが多い中、一際目を引く、大きな作品がありました。「コジモ2世・デ・メディチのエクス・ヴォート(奉納品)」です。縦横50センチ超。コジモ2世が病気の治癒を祈願して祭壇に奉納した作品です。画中でも跪くのがコジモ2世。白と金のローブです。右手を差し出しています。意匠は大変に細かい。モザイク画です。横から見ると10センチくらい盛り上がって見えます。18世紀に一度、解体されたゆえに、現存するパネルはこの一枚のみ。その意味では貴重な作品でもあります。
ルネサンスはボッティチェリやレオナルド・ダ・ヴィンチ、それにミケランジェロを生み出した時代。しかし展示はあくまでもメディチ家に特化しているため、そうした同時代の芸術家らの参照は一切ありません。肖像画が20点。それに60点の装飾品が加わります。スペースからすればやや少なめでした。また何ぶんと小さいものが多い。カメオなどの細部を見るには単眼鏡などがあっても良いかもしれません。

ウエルカムルームのメディチ家の家系図がさり気なく良く出来ています。絵画を参照しての顔写真ならぬ顔絵画入りです。鑑賞の参考になりました。

館内はなかなか盛況でした。7月5日まで開催されています。
「メディチ家の至宝ールネサンスのジュエリーと名画」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:4月22日(金)~7月5日(火)
休館:毎月第2・第4水曜日(4/27、5/11、5/25、6/8、6/22)。
時間:10:00~18:00。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400(1120)円 、大学生1120(890)円、中・高校生・65歳以上700(560)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
「メディチ家の至宝ールネサンスのジュエリーと名画」
4/22~7/5

東京都庭園美術館で開催中の「メディチ家の至宝ールネサンスのジュエリーと名画」を見てきました。
ルネサンス期のフィレンツェを支配したメディチ家。芸術家のパトロンでもありました。当地のウフィツィ美術館などには歴代の当主らの収集した美術品が数多く残されています。
さてタイトルにもある「ジュエリーと名画」。一体、何を表しているのでしょうか。実のところ、その殆どを占めるのはカメオと肖像画でした。カメオとは大理石や貝殻を浮き彫りにした装飾品。古代ギリシアに由来します。メディチ家の人物もこぞって集めました。そして肖像画とはメディチ家の人物を描いた絵画です。よって絵画は全て肖像画でした。

ルイジ・フィアミンゴ(?)「ロレンツォ・イル・マニフィコの肖像」 1550年頃 ウフィツィ美術館(銀器博物館)
はじまりはロレンツォ・イル・マニフィコ。コジモの孫でフィレンツェの黄金時代を築いた人物です。ルイジ・フィアミンゴによる「ロレンツォ・イル・マニフィコの肖像」はどうでしょうか。堂々たる姿です。オレンジ色のマントに身を包んでいます。左には繁栄を意味する月桂樹。葉をつけています。右手に注目です。何やらスマートフォンのようなものを持っていますが、実際のところは紙でした。彼の能力や業績を示す言葉が記されているそうです。
アーニョロ・ブロンズィーノの「マリア・デ・メディチの肖像」は日本初公開です。父はコジモ1世。スペインの貴族で母のエレオノーラは大変な美貌の持ち主だったそうです。ややあどけない表情です。胸に手を当ててはやや不安そうな眼差しをしています。彼女は17歳で亡くなったそうです。早すぎる死。嘆き悲しまれたに違いありません。

ジェルマン・ル・マニエ(?)「フランス王妃、カテリーナ・デ・メディチ(カトリーヌ・ド・メディシス)の肖像」 1547-1559年 ウフィツィ美術館(パラティーナ美術館)
威厳に満ちています。ジェルマン・ル・マニエによる「フランス王妃、カテリーナ・デ・メディチ(カトリーヌ・ド・メディシス)の肖像」です。ドレスが装飾の極みでした。真珠でしょうか。数え切れないほど編み込まれています。ちなみにカトリーヌは先のロレンツォの孫であるロレンツォ2世の子。出産後に両親を亡くし、孤児になりますが、後にフランスのアンリ・ド・ヴァロワ(アンリ2世)と結婚。10人の子を授かります。肖像は40歳の頃に描かれたそうです。

ヘレニスム工芸(カメオの断片) ベンヴェヌート・チェッリーニ(?)(金による補作)「男性像をともなう二頭立て戦車」 前1世紀(カメオの断片) 1530-1545年(金による補作) フィレンツェ国立考古学博物館
カメオでは「ナクソス島のバッコスとアリアドネ」が美しい。モチーフはギリシア神話。カメオ自体は3世紀の作品です。フレームをメディチ家の時代に作り上げています。金の細工も鮮やか。七宝の技術が用いられています。また「男性像をともなう二頭立て戦車」も興味深いのではないでしょうか。カメオが下部。何と紀元前1世紀の作品です。割れてしまったのかもしれません。上部は失われています。そこを金で補っているわけです。男性像の造形も至極細かい。高い技術があったことを伺わせます。

オランダの金工家「赤ん坊を入れたゆりかご」 1695年頃 ウフィツィ美術館(銀器博物館)
技術といえば「赤ん坊を入れたゆりかご」が驚異的でした。制作年は1695年。作者はオランダの金工家です。ゆりかごは金。大きさは5センチもありません。にも関わらず、極めて精密な装飾がなされています。赤ん坊は真珠です。羽毛布団に包まれた赤ん坊を半ば見立てるかのように象っています。しかもゆりかごは可動式です。これぞ超絶技巧と言えるのではないでしょうか。

ヨナス・ファルク、ミケーレ・カストルッチ、グアルティエーリ・ディ・アンニバレ・チェッキ、ジュリオ・パリージの下絵に基づく「コジモ2世・デ・メディチのエクス・ヴォート(奉納品)」 1617-1624年 ウフィツィ美術館(銀器博物館)
数センチほどの小さなカメオが多い中、一際目を引く、大きな作品がありました。「コジモ2世・デ・メディチのエクス・ヴォート(奉納品)」です。縦横50センチ超。コジモ2世が病気の治癒を祈願して祭壇に奉納した作品です。画中でも跪くのがコジモ2世。白と金のローブです。右手を差し出しています。意匠は大変に細かい。モザイク画です。横から見ると10センチくらい盛り上がって見えます。18世紀に一度、解体されたゆえに、現存するパネルはこの一枚のみ。その意味では貴重な作品でもあります。
ルネサンスはボッティチェリやレオナルド・ダ・ヴィンチ、それにミケランジェロを生み出した時代。しかし展示はあくまでもメディチ家に特化しているため、そうした同時代の芸術家らの参照は一切ありません。肖像画が20点。それに60点の装飾品が加わります。スペースからすればやや少なめでした。また何ぶんと小さいものが多い。カメオなどの細部を見るには単眼鏡などがあっても良いかもしれません。

ウエルカムルームのメディチ家の家系図がさり気なく良く出来ています。絵画を参照しての顔写真ならぬ顔絵画入りです。鑑賞の参考になりました。

館内はなかなか盛況でした。7月5日まで開催されています。
「メディチ家の至宝ールネサンスのジュエリーと名画」 東京都庭園美術館(@teienartmuseum)
会期:4月22日(金)~7月5日(火)
休館:毎月第2・第4水曜日(4/27、5/11、5/25、6/8、6/22)。
時間:10:00~18:00。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1400(1120)円 、大学生1120(890)円、中・高校生・65歳以上700(560)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
*第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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