「ライアン・マッギンレー BODY LOUD!」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
「ライアン・マッギンレー BODY LOUD!」 
4/16~7/10



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「ライアン・マッギンレー BODY LOUD!」を見てきました。

赤い花園の中で横たわりながら天を仰ぐ一人の男性。見るまでもなく全裸です。左上方には黄色の葉をつけた木も生い茂っています。実際の景色なのでしょうか。何らかの舞台装置のようにも見えなくもありません。キャプションの言葉を借りれば「ユートピア」。どこか古代ギリシアのアルカディアを連想したのは私だけでしょうか。

写真家はライアン・マッギンレー。1977年にニュージャージー州に生まれたアメリカ人です。25歳でホイットニー美術館で個展を開催。「アメリカで最も重要な写真家」(展覧会サイトより)として評価されているそうです。

展示室内の撮影が出来ました。


「Mellow Meadow」 2012年

モチーフを端的に表すとしたら自然とヌードです。「Mellow Meadow」と題した一枚、一面の畑が広がっています。あまりにも広大。地平線が霞んで見えます。夕景でしょうか。左から黄色い光が差し込んでいました。空には雲。帯状になって浮いています。

写真では分かりにくいかもしれませんが、本作においても人影は全て裸。各々がヌードです。手を広げ、空を見やり、互いが思い思いに駆けています。何かをしているようで、そうでもありません。あくまでも自由。人工物も皆無です。さも自然や生命を謳歌しているかのようでした。



ヌードに時にありがちな卑猥さが殆ど感じられないのも特徴です。胸を露わにしては上半身を反らす女性。背後には真っ赤な葉をつけた樹木が広がります。実に華やか。さも彼女を祝福しているかのようです。構図はシンプル。だからこそ逞しく、また力強い。造形としての人の美しさが際立っています。


「Ivy(Judds Cherry)」 2015年

時に仮想と現実とが曖昧にも見えてきます。「Ivy」です。堂々たる大河。ちょうど滝のように水が落ちています。そこへ無数の木が横たわっています。一人の裸の男性が跨っていました。危うい。実際に可能なのでしょうか。ほか雪山を裸で駆ける男の作品なども俄かには現実と信じ難い。不思議な空間が現出しています。


「YEARBOOK」 2014年

ギャラリーの壁面の全てを用いてのヌードのインスタレーションには驚きました。全長30メートルです。男女は関係なく、皆全て裸。思い思いのポーズをしています。座って笑っていたり、髪を引っ張っておどけたり、ただ前を虚ろに見据えたりと様々。中には強く叫ぶかの如く口を大きく開けている人物もいます。一つとして同じ人、同じ姿、同じポーズはありません。

背景の色彩感覚も独特です。赤、緑、紫などの色があるかと思えば、突如、モノクロームが入り込みます。全てのモデルはマッギンレーの美意識に取り込まれたのでしょうか。色の主張は強い。ファンタジーとも呼びうる世界を表現しています。


左:「Larson」 2010年

一転してのモノクロームのポートレートシリーズが思いの外に魅惑的でした。もちろんモデルはヌード。ただしこちらはより表情が生き生きとしていて面白い。写真家との関係もより親密なように見えます。



日本の美術館では初めてでもある今回の個展。初めはやや戸惑いを覚えつつ、その後、会場を2巡、3巡すると、いつしか惹かれるものを感じるような展覧会でした。



なお撮影は自由に可能ですが、シャッター音は原則的にNGです。スマートフォンをお持ちの方はご注意下さい。

「美術手帖2012年12月号/特集:ライアン・マッギンレー/美術出版社」

7月10日まで開催されています。

「ライアン・マッギンレー BODY LOUD!」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:4月16日(土)~ 7月10日(日)
休館:月曜日。但し5月2日(月)は開館。
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。入場は閉館30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
 *( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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