1950年の新東宝作品というよりも、大日向伝映画である。
大日向は、『伊豆の踊子』や『若い人』での戦前の二枚目だったが、戦後は不振で、製作にも乗り出したのがこれである。
彼は、実は戦後銀座でホテル、進駐軍向けのラブホテルをやっていたが、当時、スターが副業をするのはタブーで、黙ってやっていた。
そこに就職したのが、笠原和夫で、ホテルでの悲喜劇をシナリオにしたのが、映画界への始まりだそうだ。
これは、東京の近郊、玉川学園の山野が舞台で、菜園や農業をやっている汐見洋、大日向伝、轟由起子、小林桂樹らの一家がいる。
対して、元は外航船の船長だった家の岡村文子一家が隣にいて、何かと対立しているが、娘の香川京子は、小林と恋仲というロミジュリ的関係である。
また、そこには足の悪い少年がいて、岡村は信仰するお呪いで直そうとするが、汐見家は、自分の力で歩けるように励まして、ついには歩けるようになる。
この頃、障害を持った少年、少女の話は多く、最後は勇気で直してしまうのは、困ったものだ。
最後、玉川学園の山野で『第九』がコーラスされ、模型の船が池に浮かび、皆が歓喜するところで終わる。
この程度の映画の気分が、もし大日向伝の精神だとすれば、後にブラジルに移民して失敗したのも当然だと思える。
衛星劇場