夜、適当にチャンネルを廻していると、『悲愁物語』をBS松竹東急でやっている。
昔から、松竹は映画配給もやっていて、サイレント時代には洋画配給では、主力館を持っていて、活弁には黒澤明の兄の須田貞明もいて、トーキー移行の際には争議委員長にもなっている。
だが、組合と会社の板挟み、さらに愛人との問題から彼は、自殺してしまう。
兄の家に居候していた黒澤明は、仕方なく東宝の先行企業であるPCLの助監督試験を受けることになる。
戦後も、松竹は洋画配給のチェーンを持っていて、松竹洋画チェーン・SYチェーンを維持していた。今は、伊勢佐木町の横浜シネマリンとなっている館は、横浜のSYチェーンだった。
1977年、突然に松竹で公開された『悲愁物語』は、当時最盛期だった梶原一騎先生の三協映画の制作で、元日活の鈴木清順の10年ぶりの映画だった。
業界ゴロのような原田芳雄が、女子新人ゴルフプロの白木葉子を、名人トレーナーの佐野周二の猛訓練で育てて、優勝させる。
そして、テレビタレント、スターになる。その彼女を「追っかけてくる」変な男が元日活の野呂圭介であるのは、笑えるが、ワンカットだけ出てくる刑事の宍戸錠と言い、元日活の失業組の救済映画でもある。併映の竹下景子主演の『雨のめぐり逢い』も、元日活の監督野村孝だった。
この辺は、梶原得意の「スポコン」ものだが、鈴木や脚本の大和屋竺らに、そうした興味はないようで、話は彼女を巡る、繊維会社幹部の仲谷昇、広告代理店の岡田真澄、そして原田らの白木を巡る争いと、彼女に憧れる平凡な主婦の江波杏子や左時枝らの過剰反応に興味は移っていく。
江波が「豪邸・・・」という白木が原田と住んでいる新居が出てくるが、貧乏な松竹の美術なので、到底豪邸には見えない。
いろいろとあるが、最後、白木の豪邸に、主婦らが大挙して押しかけて滅茶滅茶にするが、白木葉子の弟の少年が、白木をピストルで撃って殺してエンド。
いったい、この映画はなんだろうと公開当時も思ったが、今回見てもやはり理解不能。
白木葉子は、これでしか見たことがないが、松竹の大部屋女優だったのだろうか。
1970年代なので、彼女の水着姿やヌードも出てくる。