指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『絢爛たる復讐』

2018年11月19日 | 映画

1946年の小石栄一監督の大映映画。

時代は明確ではないが、トルストイの『復活』を上演している劇団の話なので、大正時代だろう。

           

地方に来て恋仲になった人気俳優の小柴幹治を慕って、純情な娘の槙芙佐子が上京して劇団に来るが、小柴は『復活』のカチューシャ役の村田知恵子と熱愛していて、槙はまったく相手にしない。

劇団の演出家は月形竜之介で、背広姿の月形は珍しいが、演技はやはり上手い。

カチューシャは本来純情な女なのだが、「多情で淫婦のような村田では劇が壊れる」と月形は、村田と小柴を厳しく指導する。

すると村田はある日、幕間で居なくなってしまう。困った劇団は、月形の強い指示で槙を村田の代役に立てて舞台は大成功する。

「これで絢爛たる復讐なの」と思うが、欧米のサスペンスやミステリー小説が読まれていなかった当時では、こんなものだったのだろう。

木村威夫の美術は、元は幕内だった経験を生かして舞台裏の世界を上手く描いていると思う。作品に出てくる劇場は、昔の有楽座あたりをモデルにしているのだと思う。

中で劇団の俳優で小林桂樹に似た俳優がいたなと思ったら、やはり小林だった。大映時代の、東宝に移る前の小林桂樹だった。

国立映画アーカイブ

 

 



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