指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『奴らを高くつるせ』

2021年04月09日 | 映画
1968年、イタリアから米国に戻ったクリント・イーストウッドの1作目。
MGMだが、彼の会社のマルパソがからんでいる。この頃から、彼は自作への意思があったのか。

                          
牛の群れを扱っていたカウボーイのイーストウッドは、いきなり9人組の男に襲われ、大木に首吊りされてしまう。
「持ち主から800ドルで買った」と、領収書を見せるが、相手にされない。
半死状態のところを、連邦保安官(ベン・ジョンソン)に助けられる。
彼は言う、「お前が牛泥棒なら死刑だが、それでも裁判受けてからの方がよい」
町に囚人馬車で連れて行かれ、獄に入れられるが、すぐに釈放される。
別の囚人の証言で、無罪が明らかになったとのことで、取られた金も11ドルだけ取り戻してくれる。そして、言われる
「保安官になれ、オクラホマ準州に60人いたが、皆いなくなった、20ドルでやってくれ」と。
オクラホマが州に昇格するのは、1907年なので、19世紀末のことだろう。

まず一人、一味を追いつめるが、発砲されて殺してしまうが、保安官からは、生け捕りにしてこいと言われ、ある一人を町の獄に投獄する。
そして、3人に追いつき、一番強そうな男と格闘になり、馬に乗せることができる。若者2人は、見ていて悪漢の側には立たない。途中での格闘もあるが、イーストウッドは、彼を馬の鞍にくくりつけて戻ってくる。と、絶賛され一躍有名になる。
裁判が行われ、男と若者2人も、死刑になる。牛泥棒は死刑で、イーストウッドは、「二人は、18と16歳だ」と減刑を主張するが、判決は変わらない。一応裁判で、陪審員もいる。
彼らの他、6人が絞首刑になることが決まると、町には人が集まってきて、ホテルも満員になる。
公開処刑は、好奇の的で、「他人の不幸は蜜の味」なわけだ。物売りも出て、大変な賑わいになる。
牧師がきて、囚人たちに懺悔をすすめ、群衆も賛美歌を歌った後に、全員に黒い袋が被せられて、縄が首にまかれて絞首刑が執行される。

最初の町の監獄に入れた保安官を通じて、犯人から奪った金800ドルを返してきて、和解を求めてくるが、拒否して残りの3人がいる牧場に行き、2人を殺すと、ボスのウィルソンは、許しを請い、自ら捕まる。
一度は保安官バッジを返すが、再び引き受けることで終わり。
中で、ヒンクルは言う、「誰かを許したって、住民が追いかけてリンチするだけで、それより裁判の方がよい」
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