指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

松岡洋佑と安倍晋三

2015年01月01日 | 政治
昨日見た『バンクーバーの朝日』では、カナダの白人の蔑視が出てくるが、それは勿論アメリカでもあった。
そうしたアジア人への蔑視、偏見に対しては、果敢に戦うことが必要で、白人はそうした勇気あるものをこそ対等に扱うという信念を持っていた男がいた。
戦前、衆議院議員、満鉄副総裁や外務大臣を務めた松岡洋佑である。
実家が没落したため、渡米し苦学して大学を出た松岡は、欧米人は、力で応じてくる人間は尊敬するものだと信じていた。
その考えを外交政策にも応用し、彼は日・独・伊の三国同盟を推進した他、満州事変で日本が国際連盟で批難されると、脱退の演説で日本国内では英雄視される。
彼は、三国同盟にソ連を入れ四国同盟にし、それによって英米陣に対抗しようと構想していた。
だが、ソ連とドイツには相互に不信感があり、四国同盟など絵空事だったが、なんとかソ連とは中立条約を結び、これまた大手柄となり、日本に凱旋する。
その時は、日本とアメリカとの間で、日米交渉が進行していたが、彼抜きの交渉の進展に強い不快感を持ち、それを壊してしまう。
いずれにしても、「力には力」という彼の外交方針は、結局日本を戦争に導くことになるわけで、松岡洋佑は近衛文麿と並び、日本の戦争への道に大きな責任のあった人間である。

そして、この松岡家は、岸信介・佐藤栄作兄弟と縁戚になっており、特に佐藤栄作とは直接の関係を結んでいる。
だが、佐藤家には、意外にも好戦的な意識の政治家はなく、むしろ直接の血縁関係はない岸信介の孫である安倍晋三が、好戦的であるのは不思議だと思う。
戦後史では、汚名を着せられている松岡洋佑や岸信介の名誉を回復させたいのだろうか。
大変に興味深いことであると思う。