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経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

慢性人手不足の監査法人~だからオリンパスや大王製紙が・・・

2011-11-16 09:04:57 | 崩壊する上場企業の経理

 最近監査方法がどんどん細かくなってきた。そして2015年には、IFRSという会計ビックバンのセカンドステージが待ち構えている。そういう状況の中で、公認会計士の資格を持っている者が不足気味である。
 さらに追いうちをかけるように、不正監査の責を負い、みすず監査法人が閉鎖され、多くのクライアントが野に放たれた。そして、これらのクライアントを受け入れる他の大手監査法人は益々人手不足となる。

 とにかくインフラが整わないのに、あれこれとアメリカの言うことばかりに、忠実に従い過ぎるお国柄なのである。まあその問題は何度も触れているので、ここでは語らないことにするが、とにかく監査する人が圧倒的に少ないのは紛れもない事実なのだ。
 そのうえ決算が3月に集中し、決算発表の早期化が叫ばれる時代である。それで短期間に業務が集中し、経理マンはもとより監査を行う会計士も、毎日徹夜の連続となってしまった。だから体調を崩し、精神面でもだんだん嫌気がさしてくるのだ。こうして監査法人を退職した会計士を何人も知っている。

 このまま放置しておけば、学生たちが公認会計士に抱く魅力が薄れてゆくことは否めない。やがては、わざわざ難しい国家試験を受験してまで、公認会計士になろうとする若者はいなくなるだろう。
 そのうえ監査の仕事は、年々細かくなり毎年のように法律や監査指針が追加・変更されている。しかも毎年監査報酬を大幅値上げする訳にはゆかないし、機械化出来るわけでもないので、当然給科は上がりっこない。さらに不正を見逃せば、資格剥奪どころか資金力のない監査法人はたちまち倒産し、個人レベルの無限責任までつきまとうのだから堪らない。

 現状のままでは、日本の公認会計士には未来がないといってもよいくらいだ。この現状を打破するには、いくつかの提案がある。

 まず米国の監査法人なみに、有限責任にすることを検討すべきだ。なぜ米国では出来て、日本では出来ないのか。それには日本の社会構造や監査法人の歴史などが、深く関わってくる。
 米国の監査法人が有限化出来たのは、自己資本が充実しているからにほかならない。それに比べると、日本の監査法人は個人事務所の集合体に始まり、徒弟制度のなごりを引きずっており、監査報酬には限界がある。また会計士たちの給料も米国ほど高くない。

 そして当然の帰納として、自己資本も大きくはならないため、米国の監査法人のように有限化出来ないと言われている。また唯一の収入源であった税務の仕事も、税理士法人として別会社に分離されてしまった。
 また米国の監査法人のようなコンサルタント收入もない。このコンサル収入が一番大きいのだが、日本では大手証券会社等がこの役割を担っているのである。もっとも米国においても、エンロン事件以降、企業との癒着を防止するために、コンサル部門は別会社に分割されてしまった。だがそれまでの膨大な蓄積があったのだろう。

 結局大小を問わず大合併をして、二大政党よろしく二大監査法人に大統合するのが関の山かもしれない。ところで経費削減も睨んで、次のような改革を行ってはどうだろうか。

ほとんどの会計士が判断を持たず、マニュアル通りの監査しか行わないのだから、公認会計士補以上の有資格者だけで監査をするのはもったいない。会計士補の下に、日商簿記1級や税理士試験科目合格者を、アシスタントに出来る制度改革をしてはどうだろう。こうすれば、不足人員の確保と同時に人件費も削減出来るかもしれない。

大手監査法人の大部分が、地価の高い場所に建つ豪華なビルをオフィスにしている。しかもシニアクラスは、欧米並に個室を使用しているのだ。これは日本では無駄使いだろう。まして会計士はほとんど出張しているのだから、大部屋に長テーブルで充分ではないか。

 本来こうした企業努力があって、初めて利益を捻出できるのである。他人に対する経営アドバイスもよいが、まずは監査法人自身の経営改革を行ってみたら如何であろうか。

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売上至上主義でよいのかいな

2011-11-14 10:58:07 | 崩壊する上場企業の経理

 会社の大きさを計る目安としては、一般的に「売上高」が指標となる。
 同じく「資本金」とか「従業員数」というものもあるが、余りあてにならない場合がある。資本金が小さくとも大規模な会社は山ほどあるし、従業員数は業種によって大きく異なるからだ。
 もちろん売上高だって業種によって異なるし、本来手数料收入しかない商社などで、売上と仕入を両立てすれば、売上高が極端に膨らんでくる。
 それでも売上高にこだわる人が多いのは、判りやすいことに加え、その企業のパワーを感じるからであろうか。だから「おたくは年商なんぼでっか?」などと質問する。

 かくして売上高は、企業規模と活性度のバロメーターとなってしまった。だからどの会社の経営者たちも、「売上増」を旗印にしたがるのだ。
 もちろん大幅な増收増益ほど結構なことはない。また画期的な新製品がヒットすれば、それもありだ。しかし現実はそんなに甘くない。
 今日の過当競争市場で売上を大幅に増やすことは、並大抵の努力では達成出来ないだろう。ましてや飽食の時代で、欲しいものは既に買い尽くされているのだ。
 こうした状況下で、無理に売上を伸ばそうとすると、いらぬ経費や人件費をいたずらに消費することになる。また製造業であれば、採算の合わない設備投資に資金を投入しなくてはならない。

 結果として売上は少し増えたが、無理して売った結果、利益は横ばいか減少となる。そんな悪循環に陥ることが多いようである。
 また過剰な人員や設備を抱えたおかげで、将来に憂いを残すことになりかねない。
 そもそも企業は、いくら儲けるかが最終目標ではないのか。売上は減っても利益が増えればいいじゃないの。そして究極は無借金でキャッシュフローを増やすことである。
 昔から勘定合って銭足らずというではないか。売上が増えるだけじゃだめだが、利益が増えるだけでもだめなのである。その利益が現金化してこそ、初めて儲かったと威張りなさい。
 そのためには、付加価値の高い商品を開発して、組織をシンプルにするのが一番近道なのである。

 一般的には、1億円の利益をあげるためには、約10億円の売上が必要といわれている。それなのに、10億円の売上を達成するために、2億円も費用が増加してしまう。
 これでは、10億円の売上増があっても無意味である。というより逆ザヤになってしまったのだ。
 だが営業マンたちは、そんな事は承知とばかりに、売上増だけに血まなこになる。結果として会社が損をしても、知ったことではない。
 なぜなら、人事考課は売上高によって決められるからだ。個人にとっては、サラリーが増えないことには話にならないのだ。

 今どきは上場会社だって簡単に倒産する時代である。だから組織をシンプルにして過剰な設備投資はしないほうがよい。極論すれば赤字でも、資金ショートさえしなければ、倒産はしないのである。
 品質の良い高付加価値商品を、ゆっくりと売ることだ。そうすれば人も設備もいらないし、飽きられることもない。
 とは言っても、必ず出し抜く企業が現れて、一挙に市場を独占したがるのが現実である。だから人気商品にしてはいけない。
 沖縄のゴーヤが良い例である。人気商品になった途端に大企業が進出して、すぐに価格競争が始まり、やがてブームは去ってしまったのだ。だから地元で開発した小企業は大迷惑であり、大ヒットしたことを悔やんでいるという。

 話が少し横道にそれてしまったが、言いたいことは売上至上主義にメスを入れようということである。古いところではダイエー、近年破綻したNOVAや、赤福にしたって根本的な問題は、売上至上主義にあったのではないだろうか。
 なんと言おうが、最後に笑うのは、ユーザーのニーズを尊重しながらも、地道だが誠実な商いを続けている企業なのである。

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若手頼みの会計士

2011-11-12 08:39:49 | 崩壊する上場企業の経理

 第1回目の衝撃波発動は、平成10年の税法改正が引金となった。不況による税收不足が原因だったが、それまで認めていた賞与引当金、退職給与引当金などについて、税法上損金性を否定する税法を施行してしまったのである。
 本来であれば、消費税率をUPして歳入確保すべきだったが、当時から消費税改正はタブーであり、税率UPを口にする勇気ある政治家がいなかった。それでつい理屈に合わない『下手くそな税法改悪』をせざるを得なかったのだろう。

 その改悪に怒り狂ったのが、会計の専門家達だ。それまで税法の呪縛を不快に感じながらも、極力税務に合わせた会計制度を守ってきたが、この改悪には同調出来るはずもなく、ついに会計は、長年寄り沿っていた税務を離れて、1人歩きすることになってしまったのである。
 もちろん米国では、かなり昔から税務と会計は別居しており、そのための会計手法も確立されていた。これを米国人達は勝手に『グローバルスタンダード』と称して、従前より日本にも適用させようとシャカリキになっていたのだ。従って、すでに手法が確立しているため、日本の会計関係者も簡単に、新会計基準に乗り換える決断を下せたのである。

 まあ、税法改悪がなくとも日本が米国の奴属国である限り、早晩会計は米国基準とならざるを得なかっただろう。それを察知した大蔵官僚が、あえて税法改悪を行い、先手を打ったのかもしれない。
 前置きが長くなってしまったが、とにもかくにも、そんな訳で税法から離れて独自路線を歩き出した会計は、その後数年かけて、これでもかといわんばかりに、次から次へと新制度を創り始めたのである。

 それは『会計ビッグバン』と呼ばれ、これまでの日本的会計概念を根底から覆す難しい会計理論となって襲いかかってきた。
 それまでの長い間、会計は『取得原価主義』を中心に理論構築されていたのだが、『会計ビッグバン』以降はいきなり『時価主義』に塗り替えられてしまったのである。

 具体的には、『退職給付会計』、『税効果会計』、『金融資産の時価会計』、『新・貸倒引当金基準』、『減損会計』、『棚卸資産の時価法』、『リース会計』と続き、その後にさらにそれらを修正するIFRSへと続くのである。
 更には度重なる商法と証取法の改正、全面的な会社法の改正と、次から次へとよくネタが続くものだと呆れ果ててしまうくらい法令の塗り変えが続いてゆく。
 しかもこれらの大改正のほとんどは、アメリカさんに命令されて手をつけたものばかりである。アメリカの言い分も気に入らないが、それ以上に『今まで日本の官僚や政治家達は一体何をしていたのか!』と腹が立ってくる。

 ちょっと本線を外れてしまったが、くどくどと述べた通り、日本の会計構造が根底から崩れ、過去に全く経験し得なかった黒船会計の理論体系が、あっと言う間に構築されてしまったのだった。
 これだけ画期的で、複雑な会計に変貌してしまうと、過去の遺産で生きている大先生は勿論のこと、勉強することを忘れた一部の中堅会計士たちも、異世界に放り出されてしまったようなものである。生半可に昔の知識を振りかざすと余計に判らなくなってしまう。

 逆に不要になった過去の規則や経験などのない、マニュアル人間の若手会計士のほうが、新しい仕組みに対応出来るようになってしまったのである。
 こうして監査現場は若手中心となり、現場リーダーは、昔なら小僧っ子扱いされた20代後半の若者が担当することになってしまった。さらに大手監査法人においては、優秀な女性の会計士が増加している。

 それでもまだ年輩の会計士達の役割として、若手には出来ない『重要性の度合判断』をするという仕事が残されており、僅かにその存在価値を示すことが出来るという状況であった。
 ところが、である。前項で述べた通り、2000年に起こった『エンロン事件』が、更に会計のしくみを虚しい存在に落しこむ引金となってしまった。
 つまりエンロン社の不正を、見て見ぬ振りをしていた、世界最大の監査法人であるアーサー・アンダーセンが責任をとらされて解散へと追い込まれてしまったのである。
 これは世界的にも画期的な出来事であり、日本の大手監査法人も再編を余儀なくされることになるのだ。そしてこのエンロン事件を境に、世界の監査手法は異常に細かくなり、重要性の原則などは、事実上消減してしまうのであった。

 従って大手監査法人では、ますます年配の会計士の役割が少なくなり、彼等は監査報酬の値上げや、コンサルなどの新規受注に血道をあげることになる。つまり彼らはセールスマンになるしか存在価値がなくなってしまったのだ。他人事ではない。大企業の経理マンとて同じ事なのである。

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経理は女性に任せてしまえ

2011-11-04 13:30:56 | 崩壊する上場企業の経理

 大企業の男性は長くともおおむね5年で転勤になる。そして転勤先で同じ仕事をさせて貰えるとは限らない。そして役職につくと細かい実務は部下に任せ、情報収集と人間関係作りにばかり血道をあげるようになる。
 だから年をとればとるほど、現場の細かい実務などは判らなくなるものだ。もちろん細 かい実務はわからなくとも、本質的な技量を備え、仕事の流れをきっちり把握していれば 問題はない。
だが大半のオジさん達は、出世とゴルフと酒に夢中で、そんな当たり前の事さえ身につけていないのが現実なのだ。

 営業ならそれもいいだろう。しかしこと経理に関しては、それでは重要な判断が出来な くなり、監査法人や国税局などと戦うことが出来ない。ひいては銀行や株主などへ適切な 説明が出来ないばかりか、経営への諌言などはとても望めない。

 ここまで書いて気が付いたのだが、このダメオジさん達は、なんとなく「政治家」に似 ていないだろうか。勉強不足で官僚の書いたシナリオを棒読みする大臣たち。役員会などで、女の子や若者が作ったプレゼン資料通りに決算説明する経理担当重役たち。

 本来経理とは経営管理の略であり、経営に役立つ資料を作成し、場合によっては、経営者達に諌言することもあるはずだ。ところが最近は法令漬けと決算早期化のためか、単に法に基づく財務諸表作成係に落ちぶれてしまった。そしてそんな詰まらんことに大の男が、右往左往している状態なのである。戦略どころ か守ることで精一杯なのだ。

 そんな消極的で守りだけの経理なら、生理学的に男より女のほうが絶対に向いている。第一字は綺麗だし、丁寧でマメで整理整頓も優れている。そして勉強熱心だから、新しいシステムや法令にも迅速に対処出来る。

 それなのに、経理部の女性といえば、派遣社員ばかりで、相変わらずの単純作業。これでいいのか大企業!
 ただ「私にやらせて下さい」と手を挙げる女性が少ないという現実問題があることは否めないが、やはりまず会社側に発想の転換を求めたい。
 経理なんぞは、女性の仕事。男だったら机にかじりついていないで、どんどん戦いに出ようじゃないか。と叫ぶ私自体が、40年間経理漬けのオジさんなのだから、笑っちゃうのであるが・・・。

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予算なんてよさんか

2011-11-03 09:35:38 | 崩壊する上場企業の経理

 收益予測はやらないわけにはいかないが、どこの上場会社もそれと別に『予算制度』なるものが存在する。これってお役所なみに『ここまで、使ってよい』制度のようで、膨大な時間と労力をかけて運用していると思わないか。ところで、こんな制度が本当に必要あるのかな?
 常々そう思っているのだが、予算作成を簡略化すると、仕事がなくなり困る人がいるのだろうな。とすぐ余計な邪推をしてしまう。

 理論的には予算統制を行うことによって、いち早く企業経営を軌道修正し、無駄を排除して、収益向上に役立てるという制度なのだが、現実は形骸化している企業が多いような気がする。クラブ活動よろしく、単に自部門が使える費用を確保することに終始しているだけじゃないのか。
    また経理部に必ず削減要求されるものだから、予め多めの予算を出しておいて、いかにも削減したように見せかける。そうして全員が無駄に時間を潰し合い、自己満足だけの達成感を共有するのだ。

 それでも、まだ予算を作るだけなら可愛いのだが、今度は実績との差額を分析させて、増減理由書を提出させる。その増減理由書は、経営会議等の然るべき場所で、予実分析結果として発表される。
 ここまでは悪いことではないのだが、その後のフォローはほとんど無し。となると、それぞれの部署が残業したのは、一体何だったのか。だが誰も文句を言わない。 ・・・それから別途詳しく書くつもりだが、最近の税務調査では、企業の予算制度に着目して、これを調査資料として運用しているので要注意。

   既に予算制度は、各部署の課長以上の人のための年中行事となってしまったのだ。全くもって摩訶不思議な制度じゃないか。
   収益の予測ならパソコンを使ったシュミュレーションで十分だし、「各部署の経費は、前年実績の90%を目標とすること!」でいいじゃないの。ギリギリで生きている中小企業には、絶対出来ない贅沢な年中行事である。

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上場するメリットとは

2011-11-01 07:10:02 | 崩壊する上場企業の経理

 

 一昔前ならば、上場会社に就職出来れば公務員と同様に、ほぼ一生安定した生活を送れたものだった。ところがバブル崩壊後、拓銀破綻に始まる構造不況と、インターネットの発展により、上場神話は脆くも崩れ去ってしまう。

 追い討ちをかけるように、近年のITバブルの崩壊後、それは益々酷い状況に陥ってしまった。これにより10年に1社程度の上場企業の破綻が、毎月のように頻繁に起こるようになってしまったのだ。

 

 最大の原因がバブル崩壊であることは論を選ばないが、安易に上場出来るマザーズやヘラクレス市場の台頭にも問題がある。また決して悪い事ではないが、インターネットの発展に伴い、簡単にタレ込みが可能となったことにも一因があるだろう。

 具体的な被害が発生しなくとも、消費期限切れの原材料を使用した不二家事件のように、あっという間に破綻に追い込まれてしまうのだ。経営側の資質や、ポリシーの欠落による信用の失墜というものである。

 

 だから上場会社だからと言って、安穏としている時代ではないのである。さらには上場コストが猛烈に膨れあがってきている。一つにはコンプライアンス対策費用が大きい。次に株主対策も厳しくなった。昔は総会屋対策さえ怠らなければ、シャンシャンで総会が終わり、あとの1年間は寝て暮す~だった。しかし今どきそんな脳天気な会社はほとんどないだろう。

 

 またうるさい外国人大株主が急増し、その対策に大わらわ。そのうえ下手をすると会社を乗っ取られるので、その対抗策も準備しなくてはならない。そして従来おとなしかった個人株主さえも、ネット掲示板などを利用して攻撃をかけてくる。

 従って配当を増額したり、優待を設けたり、十分なIR活動をしなくては納まらないのだ。これらに要する人と金も半端ではない。

 

 とどめは会計制度の大変貌である。その大半が米国からの要求である。彼等はそれを「グローバルスタンダード」と称しているがとんでもない。正式に国際会計基準と呼ばれるのは、国際会計士連盟(IFAC)が作成したIFRSであり、ヨーロッパではこの基準に統合されている。米国の要求しているのは、米国基準と呼ばれる「ローカル基準」に過ぎないのだ。

 

 この米国基準を崇拝しているのは、米国と日本くらいであろう。極論すれば、米国の「ハゲタカファンド」のための会計基準と言っても過言ではないだろう。

  とは言うものの依然として、日本流にアレンジした「日本基準」が生きており、日本の会計をより複雑で難解な代物に仕立て上げているから始末が悪い。

 会計基準については、ここでの詳細な説明は割愛するが、今後本当の国際会計基準であるIFRSへの変更も待ち構えており、さらなる混乱と出費を招くことは確実である。

 

 また上場最大の魅力である「創業者利潤」は、オーナー個人の利潤であり、会社自体が儲かる訳ではない。それに最近の上場ラッシュと、ホリエモン逮捕後の新興市場不況により、過大なプレミアムも期待出来なくなってしまった。

 だとすると、税務計算上経費に出来ない株主配当金支払いの資金負担もバカにならない。金利の安い時期に私募債でも発行したほうが、長期的にはC/Fが向上するだろう。

 

 さて上場会社と言っても、実質個人会社のようなオーナー会社が沢山ある。現在マスコミを賑わしている大王製紙などが、その最たる存在であろう。こんな会社が上場する場合は、オーナーのメリットばかりに注目し、会社にとってのデメリットのほうを無視しがちなのだ。

 また証券会社などが、商売上美味しい話ばかりを持ちかけるので、勢い上場をめざすことになり易いのである。どうしても創業者利潤を得たいなら、上場をもって経営から身を引いて好きなことをしてくれと言いたい。

 

 さてもちろん非上場会社であっても、消費者の健康や利益と繋がっている企業では、トップのやりたい放題にも限界がある。ミートホープ社による「牛肉詐称事件」や、姉歯建築設計事務所による「構造計算書偽造事件」が記憶に新しい。まあ何にしても、法に触れるようなやり過ぎはいけない。

 

 最低限のコンプライアンスを守れない者は、経営者たる資格がないばかりか、人間としても失格ではないだろうか。これは上場・非上場以前の問題である。

 さて少し横道にそれた話を戻して、上場のメリット・デメリットを箇条書きにまとめてみよう。

 

●メリット

①何と言っても、多額の資金調達が出来、しかも返済が不要である

②上場というブランド力で優秀な新入社員が集め易くなるというのだが・・・上場会社のビリッケツにいるよりは、非上場のトップのほうが学生を集め易いこともある。

③ストックオプション等のインセンティブ付与により社員の士気を高められる

④上場時にオーナーが多額の創業者利潤を得られる

 

●デメリット

①上場時のイニシャルコストは当然としても、ランニングコストが年々大きくなる

②株主対策に神経と金を使わなくてはならない

③買収防止のためにも、株価の動向に気を使う必要がある

④低金利時代には、株主に支払う配当金の負担が大きく、しかも有税である

⑤上場していると、ネット掲示板などに、内部事情などを書き込まれる可能性が高い

 

 これを見ても判るように、上場のメリットよりもデメリットのほうがだんだん多くなっている。しかも、上場ブランドについては、昔のような威力は無い。

 例え非上場であっても、サントリーやロッテ、大塚製薬のように著名な会社のほうが、無名な上場会社よりも、学生には人気があるだろう。そして先に述べたように、もはや「上場会社は倒産しない」という神話は、脆くも崩れ落ちてしまったのだから・・・。

 

 もちろん莫大な設備投資や研究開発を行う超大企業にとっては、資金調達としての上場は必須である。

 だがヘラクレスやマザーズを初めとする新興企業の多くは、やるべき事を見出せず、集めた資金を遊ばせている会社が多い。無理に使うとドブに捨てるような投資や、六本木ヒルズのような家賃の高いビルに入居して、無駄使いをするのが関の山なのだ。

 

 さて話は変わるが、伝統ある東証一部上場会社であるブルドックソースは、特定の株主に株式転換出来ない「新株予約権の発行」を株主総会の特別決議で成立させた。 

 その後これを不服とした米系投資ファンドのスティール・パートナーズは、東京高裁に買収防衛策の発動差し止めを求めた仮処分申請を行ったが、東京高裁はこれを却下、ブルドックソースの買収防衛策発動が功を奏したのである。

 

 これをどう考えるかは非常に難しい。米国のハゲタカファンドの自己中心的行動にはかなりムカつくものの、ブルドックソースの対資本政策の甘さにも疑問を持つ。日本だからこの国ぐるみの防衛策が功を奏したが、海外であれば間違いなく買収されていただろう。

 

 さてブルドックソースの財務諸表をみれば一目瞭然であるが、本当に可愛らしい上場会社なのである。この程度の資本なら、わざわざ上場している必然性がないのではなかろうか。

 しかもブルドックソースという名前は、既に家庭ではブランドとなっており、日本人で知らない人はほとんどいないはずだ。こういう会社こそ自ら上場を廃止して、じっくりと品質の良い製品作りだけに励むべきなのである。

 

 ところで最近欧州の証券取引所で、上場を廃止する日本企業があとを絶たないが、これは会計基準の複雑化による負担回避が原因ではないだろうか。また2009年に上場廃止した企業は、なんと163社に及び、戦後の最高記録を塗り替えている。この中には経営破たんではなく、TOBなどにより自主的に上場廃止をした企業もかなり含まれていることに注目したい。

 

 これからの時代は、仕事が単調で息苦しい上場会社よりも、非上場で楽しく自由な創造力を発揮出来る会社が注目されるかもしれない。というより、そうなることを願ってやまないのだ。

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なんで1年中決算なの

2011-10-26 09:32:15 | 崩壊する上場企業の経理

 2005年度より上場会社には、四半期開示が義務付けられた。欧米では昔から四半期ごとに決算を行っていたが、会計後進国の日本でも、とうとうグローバル化の波に押し切られて、四半期開示をすることになってしまったのだ。
 当初は売上高の推移位で良かったのだが、段階的に厳しくなり、現状ではほぼ通常の決算と同様の開示が必要となってしまったのである。株主様にとっては情報開示回数が多いほうが良いのかもしれないが、四半期決算の数字に一喜一憂するのもどうなのかと思う。

 法人税の納税単位は1年または半年なので、正確な税金計算は出来ないし、季節変動の大きい企業では、3カ月間の営業成績を見ても余り意味がない。意味がないどころか、返って誤った判断を惹き起こすだろう。そしてハゲタカファンドが市場をあらしまくる格好の材料になるだけである。
 そんな半端な短期間の実績数値などよりも、将来の事業計画や收益見込みのほうが、本物の投資家には重要なはずだ。もちろんそれらを補足するための決算であることは判っているが、それならもっと簡便的な開示に出来ないのか。

 3月決算の場合、従来は6月の株主総会が終われば、次の中間決算までの2~3カ月間はゆったりと出来た。そしてその間に休息をとり、業務改善や知識の蓄積にとりかかったものだ。
 ところが現状ではそれさえ許してはくれない。そしてその中間決算(現在は第二四半期決算という)が終わったと思ったら、今度は第三四半期決算が待っているのだ。そのあとには、予算の策定などの実務が待ち構えているので、全く休む間もなく、今度は本決算に突入してしまうのである。

 年がら年中決算で休む暇も勉強する暇もない。そのうえこれでもかとばかりに会計制度の変更が繰り替えされる。経理マンは常に勉強しなくてはならないのに、それどころじゃない。だからだんだん質が低下する。
 経理のコンピューター化は、かなり早かったため、大部分が既に機械化されていて、さらに改善する余地などほとんど残っていない。逆にホストからPC化に移行しているため、従来システム部門が行っていたオペレーションまでやらされる始末である。

 こんな状況だから、経理をやりたいなどという奇特な若者はいなくなる。若者どころか我々おじさんのほうが、もっと嫌になっているのだ。だからといって、経理マンをやみくもに増やしても解決出来ない。もともと利益を生み出す部署ではないし、人数が増えても質が落ちたら意味がないのである。
 何度も言うようだが、上場会社は本当につまらない。やれガバナンスだ、コンプライアンスだ、ISOだ、J‐SOXだ、早期情報開示だとうるさくて堪らないのだ。

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