最近監査方法がどんどん細かくなってきた。そして2015年には、IFRSという会計ビックバンのセカンドステージが待ち構えている。そういう状況の中で、公認会計士の資格を持っている者が不足気味である。
さらに追いうちをかけるように、不正監査の責を負い、みすず監査法人が閉鎖され、多くのクライアントが野に放たれた。そして、これらのクライアントを受け入れる他の大手監査法人は益々人手不足となる。
とにかくインフラが整わないのに、あれこれとアメリカの言うことばかりに、忠実に従い過ぎるお国柄なのである。まあその問題は何度も触れているので、ここでは語らないことにするが、とにかく監査する人が圧倒的に少ないのは紛れもない事実なのだ。
そのうえ決算が3月に集中し、決算発表の早期化が叫ばれる時代である。それで短期間に業務が集中し、経理マンはもとより監査を行う会計士も、毎日徹夜の連続となってしまった。だから体調を崩し、精神面でもだんだん嫌気がさしてくるのだ。こうして監査法人を退職した会計士を何人も知っている。
このまま放置しておけば、学生たちが公認会計士に抱く魅力が薄れてゆくことは否めない。やがては、わざわざ難しい国家試験を受験してまで、公認会計士になろうとする若者はいなくなるだろう。
そのうえ監査の仕事は、年々細かくなり毎年のように法律や監査指針が追加・変更されている。しかも毎年監査報酬を大幅値上げする訳にはゆかないし、機械化出来るわけでもないので、当然給科は上がりっこない。さらに不正を見逃せば、資格剥奪どころか資金力のない監査法人はたちまち倒産し、個人レベルの無限責任までつきまとうのだから堪らない。
現状のままでは、日本の公認会計士には未来がないといってもよいくらいだ。この現状を打破するには、いくつかの提案がある。
まず米国の監査法人なみに、有限責任にすることを検討すべきだ。なぜ米国では出来て、日本では出来ないのか。それには日本の社会構造や監査法人の歴史などが、深く関わってくる。
米国の監査法人が有限化出来たのは、自己資本が充実しているからにほかならない。それに比べると、日本の監査法人は個人事務所の集合体に始まり、徒弟制度のなごりを引きずっており、監査報酬には限界がある。また会計士たちの給料も米国ほど高くない。
そして当然の帰納として、自己資本も大きくはならないため、米国の監査法人のように有限化出来ないと言われている。また唯一の収入源であった税務の仕事も、税理士法人として別会社に分離されてしまった。
また米国の監査法人のようなコンサルタント收入もない。このコンサル収入が一番大きいのだが、日本では大手証券会社等がこの役割を担っているのである。もっとも米国においても、エンロン事件以降、企業との癒着を防止するために、コンサル部門は別会社に分割されてしまった。だがそれまでの膨大な蓄積があったのだろう。
結局大小を問わず大合併をして、二大政党よろしく二大監査法人に大統合するのが関の山かもしれない。ところで経費削減も睨んで、次のような改革を行ってはどうだろうか。
●ほとんどの会計士が判断を持たず、マニュアル通りの監査しか行わないのだから、公認会計士補以上の有資格者だけで監査をするのはもったいない。会計士補の下に、日商簿記1級や税理士試験科目合格者を、アシスタントに出来る制度改革をしてはどうだろう。こうすれば、不足人員の確保と同時に人件費も削減出来るかもしれない。
●大手監査法人の大部分が、地価の高い場所に建つ豪華なビルをオフィスにしている。しかもシニアクラスは、欧米並に個室を使用しているのだ。これは日本では無駄使いだろう。まして会計士はほとんど出張しているのだから、大部屋に長テーブルで充分ではないか。
本来こうした企業努力があって、初めて利益を捻出できるのである。他人に対する経営アドバイスもよいが、まずは監査法人自身の経営改革を行ってみたら如何であろうか。
★下記の2つのバナーをそれぞれクリックすると、このブログのランクが分かりますよ! またこのブログ記事が役立った又は面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。