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経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

社長を尊敬し右腕として仕事を遂行する

2011-11-29 09:38:12 | 達人経理マンへの道

  中小・零細企業の創業者社長は、ほとんどが営業畑か技術畑出身の人間である。稀に経理マンや人事屋から起業する者もいるが、余程のコネがないと起業は難しいだろう。従って中小・零細企業の社長たちは、自分の不得手な分野である事務処理能力の高い人材を求めているはずである。しかしながらお金が絡むため、現実には、赤の他人の経理マンを雇うより、多少能力は劣っても縁故で信用できる者に経理を任せがちである。そうして難しい事務処理は税理士頼みというパターンが多いようだ。

 しかし将来会社を大きく発展させようという野望をもった社長なら、間違いなく有能な経理マンを雇おうと考えるはずである。またそうしないことには、いつまでたっても個人企業から脱却出来ないのだ。 
  また税理士に出来ることは、基本的には税務と会計に関することだけであり、会社経営全般についての相談や社内の細かい事務処理などを頼むわけにはゆかない。もし頼めたとしても法外なコンサル報酬を請求されるか、的外れで無責任な回答しか得られないだろう。会社のことは会社の内部で毎日事業を運営している者が一番よく判っているものなのだ。ただトップを恐れる余り、それを誰もが納得できる理論としてまとめたり、進言したりしないだけの話である。

 トップに対して、会社の行く末について冷静に話し合うためには、一にも二にも信頼関係を築くよりないだろう。そのためには、職務能力を発揮するだけではなく、秘書的な役割も進んで行い、トップと常に行動を共にし、心底トップを尊敬していると信じさせることが肝要である。
 私の知っている中小企業の社長室長は、真夜中に社長宅から自宅に電話があっても、直ちに駆けつけ、それが社長宅のゴキブリ退治などというバカバカしい用事であっても、決して嫌な顔をせず対処したという。そして彼は20ヶ月以上の賞与を獲得していたのだ。ここまですると少し嫌味でやり過ぎの感もあり、ただのゴマスリと見られる可能性もある。ただ時としては、このような心意気が必要であることは間違いないだろう。

 少なくとも、仕事は正確にテキパキとこなし、決して不平不満は漏らさず、会社の発展のためには、プライペートな時間も献上するくらいの心構えを持たなくてはならない。また社長の趣味の中で、多少でも興味が持てるものがあれば、今日からでも研究してみよう。そして社長に教えを乞うのである。
 それから間違っても、社長より上達してはいけない。だからといって下手糞でも相手にされないだろう。囲碁でいえば、一目くらい弱いのが一番である。
 これはあくまでも信頼を勝ち取るための布石であり、決して単純なゴマすりではない。そして信頼を勝ち取ったら、いよいよ本番である。今度こそは仕事の話しや会社の将来の展望について、酒でも飲みながらじっくり話し合おう。

 だが図に乗ってはいけない。調子に乗りすぎると、せっかく築いた信頼関係が崩れ落ちてしまう場合があるからだ。急いては事を仕損ずるのだ。あくまでも頭は社長であり、経理マンはその右腕に過ぎないということを肝に銘じておかねばならない。
 利口な社長なら、有能で信頼できる部下は大切にするはずである。もし一生懸命、誠実に、これだけ礼を尽くして話しても、話を聞こうとしない社長であれば、そんな会社には未来がないだろう。その時は残念だが、さっさとそんな会社は見限ってしまうことである。

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役に立つ会社設立の実務手順

2011-11-28 11:19:23 | 達人経理マンへの道

 達人経理マンたるもの、会社設立の実務処理くらいは覚えておこう。通常は子会社の設立にしか役立たないが、少なくとも大まかな手続きを知る事で視野が広がり、思わぬときに役立つものなのだ。また子会社の設立には、他部署の人がたずさわるので、即座に設立に必要な資料の指示などが出来れば、「あいつはプロだという評判」が立つこと間違いなしである。その風評こそが肝心なのである。達人になるには、まず他人に「あいつは達人だ」と思わせなくてはならないのだ。

(1)株式会社設立の手順

①会社の商号(名前)、本店の所在地(住所)、会社の目的(事業内容)の決定をする 

②法務局での類似商号の調査 
本店の所在地がある市区町村内に同業・同名(または類似している)会社が登記されているかどうかを調査することである。会社法施行後は、従来の類似商号規制は廃止されたものの、同一の所在場所における同一の商号の登記は禁止されているので、既に登記している会社から損害賠償請求をされるリスクがないわけではない。従って、登記所には会社法施行後も類似商号調査簿が置かれているので、自主的に「同一の所在場所」における「同一の商号」を調査しなくてはならない。

③印鑑の作成および印鑑証明の取得
類似商号の調査が終わり、とくに問題がなければ、会社の運営上で必要になる代表印の作成をして印鑑登録する。また、以後の手続きに必要になるので、印鑑証明書も取得しておくこと。

④定款作成および定款の認証 
会社の商号、本店、目的以外で決めなくてはならない事項を定め、会社運営上での基本的ルールとなる定款を作成する。定款は公証人役場で認証を受け、はじめて法的効力を持つことになる。このとき必要な書類は次の通り。
定款 3通
発起人全員の印鑑証明書
発起人全員の実印
認証手数料50,000円と謄本の交付手数料2,000円程度
収入印紙40,000円分(電子認証の場合は不要)

⑤出資金の払込み 
出資金を払い込む方法は、「金銭による払込み」と、「現物出資による給付」の2通りがあるが、通常は前者が一般的である。
 まず設立時の発行株式について、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、引換えに払い込む金額、成立後の株式会社の資本金及び資本準備金に関する事項を決定する。そのためには、発起人全員の同意を証する「発起人同意書」を作成する必要がある。
但し前記の項目について、既に定款で定めている場合には、「発起人同意書」の作成は不要となる。従って簡単に進めるためにも、全て定款に記述しておこう。
次に発起人代表の個人口座を新設し、そこに出資金を振り込む。
 
⑥議事録などの必要書類および登記申請書の作成 
会社設立の登記の申請書及び添付書類として必要になる取締役及び監査役選任決定書、就任承諾書、取締役会議事録、調査報告書を作成する。

⑦設立の登記の申請 
申請書類一式が揃ったら、会社設立の登記を法務局(登記所)に申請することになる。そして、登記申請年月日が会社の創立日になるわけである。

⑧諸官庁への届出 
会社設立の登記が終わったら、税務署、都道府県、市町村、社会保険事務所、労働基準局などに設立届出書を提出し、法的な届出は終了することになる。

 設立登記申請書類一式については、日本法令の設立登記申請届出様式集が5000円程度で販売されている。従って、これを使えば簡単に書類の作成が出来るし、届出の手順も全て網羅されているので判り易い。
 会社設立の手順と事務手続きについては、前述した通りだが、では一体株式会社は、何人の発起人が必要でいくらあれば設立出来るのだろうか。

 旧商法時代は、7人以上の発起人と1000万円以上の資本金が必要であった。ところが会社法施行後は、これが非常に簡単になり、発起人1人、資本金1円で株式会社の設立が出来るようになってしまったのだ。
 従前は形式上の発起人を決め、それらの人全員に印鑑証明書の取得等をお願いして歩かねばならなかった。これが一番面倒であり、また個人で1000万円用意するのも大変であった。とにかく会社法施行は零細企業にとっては非常にありがたい法律改正だったのである。
いずれにせよ、機会があれば一度会社設立登記事務をしてみることだ。「この会社は私が創ったのだぞ!」と思えば、かなり自信が出てくるはずである。

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中小企業こそ有能な経理マンが必要なのだ

2011-11-26 09:12:55 | 達人経理マンへの道

 大企業と中小企業の経理が、いかに異なるかは前稿で述べた通りであるが、大企業の最大の欠点は、セクショナリズ厶に偏っていることだろう。本来は大企業の人材のほうが優秀なはずであるが、そもそも仕事をしなければ話にならない。実力とは、仕事を覚えるところが始まりだからである。
 以前TVのドキュメンタリー番組で、上場会社が頭を下げて、零細企業の技術を買いにくる、という話を観たことがある。また米国のミサイルに、錆び止めメッキを施しているのも大田区の零細企業だという。世界一小さな穴を開ける職人も中小企業に勤務している。

 このように技術的な仕事は、一番能力発揮がし易いし、他人にもはっきり見えるものだ。分かり易い点では、営業活動に関しても同様であるが、信用力という面で大企業に軍配があがってしまう場合がある。
 では経理のような事務屋の場合はどうであろうか。大部分の零細企業では、社長の奥さんが経理を握っている。安全性と人件費の節約という面では、この体制で十分なのだが、将来会社を大きくしようと考えているのなら、いずれ経理も他人に委ねなくてはならない。

 このような状況だから、零細・中小企業で経理の仕事といえば、とにかくお金のやりくりと、目前の事務作業をこなすことが最優先で、成果や中味の質などはどうでもよいと思われ易い。また面倒なことは、税理士に頼めばよいと考えている社長も多く、経理マンにそれほど多くを望まない会社が多いことも否めない。
 だが良く考えてみて欲しい。会社が小さくなればなるほど、経理マンの職域も広くなるのである。単に金の出し入れと、帳簿付けだけの事務員を雇うのは、逆に無駄使いというものである。

 大企業流に言えば、経理、財務、経営企画、秘書、人事、総務、業務の全ての仕事をこなせる人材が必要なのである。また逆に言えば、こんなスーパー経理マンは、大企業ではなかなか見つからない。これらの仕事を全てこなすには、時間が不足し過ぎているからだ。
 だが絶対的な仕事量の少ない中小・零細企業であれば、1人で十分にやりこなせる可能性がある。従って中小・零細企業は、スーパー経理マンが生れるインフラが整備されていると考えられるのだ。あとは本人のやる気と、社長の理解と包容力次第であろう。

 

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税理士の有効な使い方

2011-11-24 10:39:02 | 達人経理マンへの道

 大企業の場合は、国税局あがりの税理士を顧問に抱えている例が多い。というのは経理部の中には、税理士以上の税務知識を持っている者が多いからである。だから本を読めば判るような通り一遍の知識ではなく、税務当局の本音や運用面での取扱いのほうを知りたいのだ。
 税務というものは、白黒ハッキリしない事例が多く、国税局側の調査方法や是・否認の判断基準を知っていれば、事前に対策を練り易い。敵を一番知る者、すなわち敵を仲間に引き入れることが有利となるからである。

 以前は国税局調査部の統括官が、直接担当企業を訪問して、税務職員の定年後の天下り顧問を依頼するパターンが一般的であった。現在では、担当調査部門の統括官が企業に直接出向くのは誤解の元になるという事で、国税局の総務部門が企業にお願いに来る。
 まあいずれにしても、民間サラリーマンには縁のない制度なので、一種の天下りには違いない。バブル絶頂期には、こうして天下りしてくる税務職員を、顧問税理士として7名も雇っていた超大企業もあった。

 さて大企業の場合は、前述した通り税務調査における軍師として、国税出身の税理士を使いたい。そのためにも、法人税の調査現場を経験している者を選んだほうがよいだろう。さらに海外取引の多い企業では、大手監査法人系の税理士法人と付き合っておかねばならない。その場合、かなり報酬が高額になるので、顧問契約を結ぶかスポット依頼をするかは、状況を見ながら慎重に判断すべきである。

 また中小・零細企業では、大企業のように何人も税理士を雇うわけにはゆかない。優秀な経理マンがいれば、税理士の役割は税務調査時の用心棒位である。だが、中小・零細企業は、税務調査が行われる頻度が極めて低いので、場合によっては不要ともいえる。しかしながら、全てを経理マンに任せ過ぎると不正の原因になりかねない。従って前項でも述べた通り、税理士に年二回程度「税務監査」を依頼することにより、内部統制機能を働かせるほうがよいだろう。

 もちろん社長や奥さんが経理をやっているような超零細企業では、税理士は「帳簿屋」と割り切るしかない。たぶん税理士のほうも、報酬に見合った働きしかしないだろう。
それが不満なら税理士などあてにせず、優秀な経理マンを雇い自前でなんでもやることである。但しそのほうが事務コストは高くなるので、会社を今後どのようにしたいのか、また税理士に何を求めるのかを明確にしてから再判断すべきだろう。

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税務調査なんて怖くない

2011-11-19 09:16:53 | 達人経理マンへの道

 原則として我が国の納税制度は、自主的に納税額を計算し、申告・納税する仕組みになっている。だからといって全ての納税者が、100%完璧な納税をしているとは言い切れない。
 それには単純な計算ミスもあるし、税法解釈の違いもある。あるいは意図的に脱税をする輩もいる。しかしながら、税金は国家の重要な財源であり、不正や間違いによる租税負担のゆがみを是正し、公正・平等を確保しなくてはならない。

 それで税務当局は、循環的に各企業を回って、申告・納税が正しく行われているかを検証している。これがいわゆる税務調査と呼ばれる調査であり、法的にもこれを拒むことは出来ない。そうした法的義務が課されており、相手は国家権力なので、どうしてもビクビクしてしまうのだ。
 だが、意図的に脱税をしていなければ、なにもオドオドすることはない。間違いは誰にでもあるし、実務的な税法の解釈も多岐に亘るのだから・・・。と言い聞かせても、やはり税務調査が終了するまでは落ち着かないものである。

 だが税務調査が嫌な理由は、決して税務当局が怖いのではなく、おおむね次の二つの理由があるからであろう。
①税務調査でミスや解釈の違いを指摘され、更正処理を食らえば、上司なり社長に「お前の能力がないからだ」と思われるのが怖い。
②忙しい時に長期間拘束されて、税務当局への書類の提出や説明をするのが非常に辛い。
 しかし嫌でも応でも、税務調査がなくなるわけではない。常日頃から、税務調査は来るのが当然と考えて、いつ来られてもよい準備をしておこう。

税務調査の種類についての知識
①任意調査
通常の調査。質問に対する不答弁、検査の拒否・妨害等については罰則が規定されているので、くれぐれも注意が必要である。
②強制調査
国税局の査察部が行うもので、国税犯則取締法に基づき、裁判所の令状をもとに行われる。この強制調査は、相当多額で悪質な脱税が探知された場合に行われる。
③特別調査
多額の申告漏れがありそうな場合、調査の対象範囲が広域にわたる場合、調査案件が複雑な場合等に、国税局の資料調査課等を中心に行われるもので、任意調査ではあるが、実質は強制調査に近いといわれている。

税務調査の周期と調査日数について
 国税局の人事異動は7月に行われ、事務の引き継ぎや年間調査スケジュールなどがあるため、通常調査は8月中旬頃からスタートする。逆にいうと7月に来た時はなにかあると考えたほうがいい。税務調査に来る周期と期間は、企業規模によって異なるため一口では言えないが、通常は概ね次に記載したスタンスであろう。
 超大企業なら、毎年来てほぼ半年間の調査期間を要するが、中堅どころの上場企業なら、2年に一回ほぼ1ヶ月の調査期間。中小企業なら3~5年に一回で1~2週間の調査期間。零細企業に至っては、10年に一回なんてこともある。だがこれは大体の目安であり、業種によっては、中小・零細でも頻繁に来ることがあるので楽観しないで欲しい。

調査内容と調査対象期間について
 通常は資本金1億円以上の企業は国税局が、それ以外の法人や個人は、税務署が調査を行うことになっている。但し国税局管轄の場合でも、源泉所得税の調査は、事業所ごとの所轄税務署が行うことになっている。
 中小企業の場合は、法人課税部門の担当者が2人位で来て法人税、消費税、源泉所得税などの調査を行う。従って、帳簿書類・証憑類、決算書、申告書作成の基礎資料、株主総会議事録、取締役会議事録、稟議書などの提出を求められることになる。
 日本の場合は時効が7年となっているが、通常は過去2~3年間程度しか調べない。税務当局だって、費用対効果の関係を重視するのである。調査の順序は直近の事業年度から始めるが、もしここで問題事項を発見すれば、少なくとも同様の事項を5年間遡って厳格に調査を行うので要注意。それがかなり悪質な脱税なら、更に2年間遡ることになる。

税務署の調査先の選択
 税務署の調査だって費用対効果を重視すると前述したが、調査に行くか行かないかの判断はどうしているのだろうか。
①タレ込みはかなり重視される情報源なので、機密事項を握っている従業員とのトラブルはなるべく避けることである。
②当然のことだが、過去に脱税歴がある場合や脱税率の高い業種の場合は要注意。
③売上や利益が急激に変化している場合や、過去に比べて決算書の数値や率に不自然さがある場合も見逃さない。従って事前に説明できるよう分析しておくことである。

調査時に注意すべきこと
 税務調査が来ることを全社員に連絡し、喫煙ルームなどにおいて、社員間で会社の悪口や内部事情等の余計な話をしないよう徹底しておく。また社員の注意を促すために、調査時に使用する会議室の扉などに、「税務調査中」の貼り紙をしておくのも良いだろう。
 また調査時の質問に対して、経理以外の部署の者が回答する場合は、各部署から実務を良く知っている課長等を選任し、不用意な発言をしないよう事前にリハーサルをしておくとよい。とかく知っていることは、ペラペラと余計なことまで喋り、知らないことは知ったかぶりをしたくなるものだ。
  だが税務調査においては、不明確なことや微妙な問題については、決して即答してはならない。知らないことは恥だと考えず、「あとで確認して回答します」と言えば良いのである。そして経理マンや税理士と相談したうえで回答したほうが良い。
 但し何でもかんでもペンディングにすると、もっと実務が判る人に変わってくれと要求されるので、ほどほどにしておこう。このあたりの判断は、ある程度実力がないと出来ないため、実務を良く知っている課長等を選任するのである。

調査官との対応方法
 悪いことをしていないなら、へりくだることもなく誠実さを失わない範囲で、堂々と応対すれば良いのである。ただし言葉遣いには注意しよう。どんなに頭に来ても、穏やかに敬語を使って話をしたほうがよい。また調査官の立場を理解し、頼まれた資料はすぐに提出してしまおう。またいつまでも回答を曖昧にしてはいけない。
 調査官も人の子である。誠実で迅速な対応をすれば、意地の悪いことは考えないはずである。そして昼食などを一緒に食べる機会があれば、世間話や趣味の話をして、少しでも気楽に話が出来るムード作りをしておこう。これが以外と効果があるのだ。従って調査官の気が緩む工場等への出張調査の時がチャンスなのである。だから私は必ず出張調査に同行することにしていた。

あくまでも税法の解釈で戦うこと
 大昔の税務調査では、いろいろな問題が出た場合、最後に税理士が調整役となって、調査官と取引をしたこともあった。だが現代の若い調査官や女性調査官たちは、そうした裏取引を極端に嫌がるし、場合によっては上司に不満を訴える。また社会の風潮も欧米化し、国民の目線も厳しくなっている。
 現在そうした裏取引は、基本的に出来ない状況といってよい。先日も税理士が、別室で私と統括主査の三人で話をしようと持ちかけたら、女性の調査官がベッタリ同行してきたのである。結局税理士も当たり障りのない話しかできなかった。

 従って話合いは、あくまでも税法を睨みながら理論的に行う必要がある。ただ税法といっても、法律や通達に全く同じ事例が書かれているわけではない。ちょっとした解釈の違いでセーフかアウトか微妙な事例が沢山あるのだ。それが税務の難しさであり、ある意味面白さでもある。
 達人経理マンならば、少なくとも税法解釈のコンメンタールや参考書、判例集などをよく読み、微妙な事例については、この参考書等の事例を参考にしたと言えるようにしておこうじゃないか。
 税務調査は怖くないというのは、備えあれば憂いなしということであり、決して税務当局を侮っているわけではない。敵は決して調査官ではなく、不勉強で空気の読めない自分自身にあると理解しておこう。

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全く異なる上場企業と中小企業の経理

2011-11-18 10:45:29 | 達人経理マンへの道

 素人からみれば所詮経理なんて金庫番で、銭勘定をしているだけの部署にしか映らないようだ。職務分掌規定や職能要件書を作っている人事部でさえ、新入社員達を引率してきて「ここは経理部で、経費の支払いをしてくれる部署です」なんてバカな説明をしている。
 冗談言っちゃいけない、支払業務なんて、経理業務のほんの一部じゃないか、資金繰りや決算を忘れてもらっては困ると怒鳴ってやった。しかし皆キョトンとしている。そもそも資金繰りや決算って何なのかさえ、誰も知らないのだから情けない。

 経理部は地味な存在だ。しかしその役割と責任は計り知れないのである。だが誰もその役割を知らないのだから淋しい存在だよね。
 ことに大企業の経理部では、業務が細分かつ専門化するので、馴染みのない詰まらない仕事に見えるのだろう。もっともやっている経理マンはもっと退屈なのだから苦笑せざるを得ない。
 ところが中小企業の経理は全く違うのだ。中小零細企業で経理といえば、「事務屋」のことを指す。つまり商事会社なら、販売以外の仕事は全て経理なのだ。だから大企業のいわゆる「管理部門」よりも、ずっと守備範が広いのである。

 大企業の「管理部門」は、通常「人事部」「総務部」「経理部」「経営企画室」「広報室」「秘書室」「情報システム室」などを総称していう。そして経理部はその中のワンセクションに過ぎない。
 ところが中小零細企業の経理とは、この「管理部門」の職務に加えて営業事務や在庫管理などの業務も加わるのだ。いやはや膨大な守備範囲だが、絶対量が少なく法的規制も緩いので、場合によってはこれらの仕事を全て1人でこなすこともある。いわゆる零細企業の通称「1人経理」である。

 結果として全社の組織と仕事の流れを掌握し、事務手続の全てを司るわけだから、この人がいないと会社が機能しなくなる。だから勢い権力を持ち、周囲の人々も機嫌をそこねないように気を使う。
 実は私も20代のときに、ある中小出版社で、この「1人経理」を経験している。当時仕事の遅い編集者に対して、「貴方の仕事が遅いから、資金繰りが回わらない。だから今月は給料が遅配になりますよ」とよく先輩たちを脅したものだ。
 もちろん脅すだけでなく、何度か本当に遅配にした。もちろん遅れた者だけではなく、全員が遅配となるため、仕事が遅れた編集者は、全社員に怨まれることになる。

 20代の若造が独断でこれだけの処置をとっても、社長をはじめとして、誰も文句が言えないのだ。それだけではない、銀行との折衝でも中心的な存在であり、支払先にはペコペコ頭を下げられる。
 監査がある訳ではないから、細かい会計基準なんて無視・無視。商法(現在の会社法)の根本から外れず、税法さえ遵守していれば、自分流の会計で全く問題がなかった。

 そもそも上場企業の会計は、株主や債権者のために存在する。それどころか最近は極論すると、公認会計士の保全のための会計に成り下がってしまった。だから会社自身の経営には余り役に立たない。それで別途「管理会計」なるものが登場したのであろう。

 それに比べて中小零細企業では、かなり自由な会計処理が出来るので、初めから財務会計を管理会計用として活用出来るのである。
 これだけ権限を持ち、創造性と実行力が発揮出来るのが、中小零細企業の経理マンなのである。ただし大企業でのうのうとハンコだけ押してきたオジさんや、専門バカに育ってしまった大企業の経理マン達には、厳しく難しい仕事だろうな。ということだから、中小企業の経理マンは思い切り胸を張りなさい。

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達人経理マンの勉強術

2011-11-09 09:32:10 | 達人経理マンへの道

 税理士試験にチャレンジ
 達人を目指すなら、まず日商簿記2級合格がスタートラインである。そのあと日商簿記1級は飛ばして、いきなり税理士試験の「簿記論」を受験してしまおう。日商簿記1級は「原価計算」が含まれているため、税理士試験よりも難解な部分があるからだ。そのくせ、世間一般では簿記論のほうが格上にみられる。それなら、日商簿記1級でウロウロしているより、簿記論を受験したほうが利口というものだ。

 また簿記論は税理士試験の必須科目であるが、簿記経験のある者にとっては、財務諸表論と並んで、税理士試験科目の中ではとっつき易い。最近合格率がやや厳しくなったが、まだまだ税法に比べれば楽なほうである。

 さて話が後先になってしまったが、税理士試験制度について簡単に説明しておこう
 税理士試験とは、税理士として必要な学識及びその応用能力を有するかを判定する試験で、国税審議会が行う国家試験である。試験科目は会計科目の「簿記論」と「財務諸表論」、税法科目の「法人税法」、「所得税法」、「相続税法」、「消費税法又は酒税法」、「国税徴収法」、「住民税又は事業税」、「固定資産税」に分類される。

  このうち必須科目は、会計科目の二科目と、税法のうち「法人税法」又は「所得税法」の三科目となる。そして残りの二科目は自由選択となり、合計五科目合格しなくてはならないが、一度にまとめて合格しなくてもよい、というところが社会人向きの試験だといえる。

 各科目別の合格率をみると、平均10%~20%で推移しているものの、税法科目のほうが会計科目より遥かに難易度が高いことは間違いない。というのは、税法科目に比べると会計科目の受験者数が圧倒的に多いからだ。つまり余りにも税法が難し過ぎて、途中で受験を放棄してしまう人が多く、税法科目を受験する人は精鋭に絞られてくる。だから合格率が同じ10%なら、税法のほうが遥かに難関と言えるのではないだろうか。

 また税理士試験に合格しただけでは、税理士業務が出来ないどころか、「税理士」と名乗ることさえ許されない。税理士という肩書きを使いたい場合や、税理士業務を行いたいなら、実務経験を2年以上積み、税理士会に入会し税理士登録する必要があるのだ。ただし税理士会に入会すると、毎月高額の会費を支払わなければならない。

 従って税理士開業が目的でない限り、わざわざ時間を掛けて五科目とっても余り意味がないのである。3年以内に五科目合格しなければ、もう税理士試験は受験しないほうがよいだろう。あくまでも達人経理マンになることが目的であり、税理士試験はその手段に過ぎない。ここで過剰に時間を掛けることは得策ではないのだ。

 税理士試験の目標は、二~三科目合格程度としておこう。また経理の仕事に役立つので是非法人税法にチャレンジして欲しい。会社に勤めながらだと、これでもかなり厳しいはずである。三年間は飲み屋通いを止める覚悟も必要だろう。

経理に関連ある法律知識を身に付ける
 さて一応税理士試験が一段落したら、次は会社法の勉強をしておこう。大企業では会社法だけでなく金融商品取引法という法律にも準拠して会計処理を行うのだが、中小・零細企業は会社法と法人税法に基づいて会計処理を行うことになる。また別項で述べる総務的な仕事にも、会社法の知識は必須である。

  また現金預金などの資金を扱う関係上、手形・小切手法なども覚えておく必要がある。先日大銀行の窓口で、横線(銀行渡し)小切手の意味を知らない女子行員に遭遇し、びっくりするより呆れてしまった。達人経理マンになろうとする者なら、銀行取引を円滑に行うために、手形・小切手に関する最低限の知識は身に付けておこうじゃないか。

  またある程度民法のことも知っておいたほうがよいだろう。会社が行う契約の有効性や効果、解釈について理解する必要があるからである。また会社の債権・債務の取扱いマニュアルとして活用することになるし、さらに社長一族の相続があった場合にも役立つことになる。

いつどこで勉強するのか
 勉強といっても、書斎を作って一日中閉じこもればいいというわけではない。というより、平日は仕事で勉強どころじゃないという人も多いだろう。だからといって、休日だけ勉強漬けにしても、決して能率はよくない。本人さえやる気になれば、勉強などいつでもどこでも出来るものである。

  私が税理士試験を受験したときは、一度も税理士講座などには行かず、全て独学で済ましてしまった。受験用の本を一冊購入して、その本がボロボロになるまで読み続けたのだ。通勤途上の満員電車の中で、電卓片手に立ったまま、というより体をよじらせながら計算問題も解いた。ただそれだけで、家ではほとんど勉強しなかったのである。

  ことに法人税法や所得税法などの必須の税務科目については、理論問題と計算問題を二時間で解かなくてはならない。理論問題は「○○について述べよ」方式で、1問につきレポート2枚に、趣旨、処理方法、事実関係などをびっしり書き連ねる必要がある。それが2問もあるのだ。さらに計算問題は、10頁前後に亘り書き込まれた諸条件に基づき、税務申告書の作成などを行うという猛烈なボリームなのである。

  とてもじゃないが、考えながら解答していたのでは、2時間で半分も終わらないだろう。私の場合は、理論問題50問を丸暗記、計算問題はひたすら毎日繰り返して解く訓練を行ったのである。所得税法を受験したときは、たまたま理論問題のヤマが二問とも当たった。だが、その解答を暗記したとおりフルスピードで書きなぐるだけでも時間が足りないくらいであったのだ。

  税理士試験の場合は、とにかく時間との戦いとなる。だから堅実で慎重な仕事を行う大企業の経理マンでは、必ず時間が足りなくなってしまうだろう。満点を取る必要はなく、60点とれば合格するのだから、つまらぬことに拘らず、柔軟な姿勢で対処することである。この柔軟さこそ、まさに税理士や中小・零細企業の経理マンに求められているのであろう。

  一方、公認会計士試験のほうは、多種に渡る科目を一度に受験して、全てクリアしなくてはならないため、勉強時間が膨大となり、とてもじゃないが、仕事をしながら受験するのは難しい。それでほとんどの受験者が大学生なのである。

 ただし、某若手公認会計士いわく、一つ一つの問題の難易度は、税理士試験のほうが遥かに高いという。まあ公認会計士自身が言うのだから、決して嘘ではないだろう。それほど税理士試験、ことに税法科目は難しいということを言いたいのだ。だがやる気とパワーさえあれば、いつでもどこでも勉強出来るという事実も覚えておいて欲しい。

 私の場合は、税理士試験のうち、「簿記論」、「財務諸表論」、「所得税法」の必須三科目まで合格したが、その後は受験していない。その頃、零細企業から上場企業に転職して、残りの税理士試験科目を受験しようとするパワーと気力が消失してしまったのである。
 繰り返すが、私自身の体験からも、勉強とは本人のやる気とパワーが全てであり、場所や時間を選ばないのだということを理解して欲しい。

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帳簿がないところからバランスシートを創る秘術

2011-11-06 10:10:14 | 達人経理マンへの道

 大企業では考えられないことだが、創業以来帳簿を付けたことがないという異常な会社も存在する。もちろん帳簿がないのだから決算書もある訳がない。こんな状態では税務申告書も提出できないし、銀行も相手にしてくれないだろう。

 ともかくスタートラインもなく、途中経過も断面すらなにもない。事実そうした会社に入社して途方に暮れたことがある。このままでは永久に帳簿は出来ない。だからといって途中から帳簿を作成しても、残高が分からないのでバランスシートが創れない。ないないづくしの中で、とりあえず現断面でのバランスシートを創ることにした。(便宜上、現在日=決算期末日とする)

●現状での資産・負債・資本の棚卸をする

①まず資産項目から始める
 手提げ金庫の中の現金及び保管小切手などを数えて合計額を現金勘定残高とする。
 預金通帳を全て記帳し、銀行から残高証明書を手に入れる。双方をチェックし、合計額を預金勘定残高とする。
 銀行に取り立て依頼していない手持ちの受取手形と取り立て依頼しているが、いまだ期日の到来していない取立依頼済手形を集計し、合計額を受取手形勘定残高とする。]

 掛売りで未入金のものがないか、営業及び社長に確認する。あれば得意先別の残額合計が売掛金勘定残高となる。
 事務所、倉庫内にある商品在庫数を種類別にカウントする。いまそれを購入したら単価はいくらなのかを調べ、カウントした実在庫数にその単価を乗じ、それらの合計額を商品勘定残高とする。(製造業の製品は、もっと複雑になるためここでは省略した)

 社長を含め全従業員に貸付金残高または、未精算の仮払金残高がないかを聞きとり調査する。もし契約書やメモがあれば、それらとの整合性をチェックする。これらの残高があれば、それぞれ分類集計し、貸付金勘定残高または仮払金勘定残高、或いは前渡金勘定残高とする。

 事務所や倉庫が会社の資産の場合は、土地と建物を分離し、それぞれの固定資産税の評価額を土地勘定と建物勘定の帳簿価額とみなすしかないだろう。また賃借物件の場合は、賃貸借契約書に記載してある敷金(退去時に返却予定のもの)の額を敷金勘定残高とする。

 現在購入したら20万円以上と思われる備品類を個別にカウントし、現在の市場価格を調査して、それらの合計額を器具備品勘定残高とする。社有車等があれば、購入時の請求書から購入価額を計算できる。但し請求書等の証憑類も紛失してしまった場合は、購入したディーラーに聞いた金額を車両運搬具勘定残高とする。

 ほかに発見できた資産があれば、その性質により正規の勘定科目残高として分類・追加する。

②次に負債項目の調査を行う
 自社で手形を発行している場合は、手形帳の耳をみて期日未到来分があれば、その手形金額を集計し、その合計額を支払手形勘定残高とする。
 商品仕入先から届いている請求書金額のうち、いまだ支払いをしていないもの(手形を発行したものは除く)を、社長に確認しながらピックアップし、その合計額を買掛金勘定残高とする。

 その他商品以外の請求書も同様に確認し、未払額を集計して、未払金勘定残高とする。
 預金の残高証明書を銀行に発行してもらうとき、同時に借入金の残高証明書も発行してもらう。その残高があれば返済期日を確認し、1年以内のものを短期借入金勘定残高、1年を超えるものを長期借入金勘定残高とする。

 その他社長や従業員からの借入金があれば、借用証書等を参考にしながら、返済期日を確認して、前述した短期借入金勘定残高または長期借入金勘定残高に加算する。
 従業員等から預かった、源泉所得税、社会保険料等で未納付のものがあれば、預り金勘定残高とする。

ほかに発見できた負債があれば、その性質により正規の勘定科目残高として分類・追加する。

③最後に資本の部を計算する。
 簿記を知っている人なら、すぐに資産=負債+資本という計算式が頭に浮かぶだろう。法定資本金は会社の登記簿謄本をみればすぐに判るので、残っている剰余金(欠損金)の金額は、前述した計算式を分解し、資産-負債-法定資本金で導き出せるのである。

 従って、その逆算した剰余金が創業から現在までの利益の累計額ということになる。(但し過去に株主配当や役員賞与を支給していないことが前提となる)

 これで現在のバランスシートが出来たことになる。これで各勘定科目の残高が確定したので、今後継続して帳簿を作成出来るようになったのである。

 それから税務署に行き、作成したバランスシートの剰余金金額を、過去の累計利益総額として一括して税務申告書の提出をしたい旨を、誠意を持って相談することである。この方法が絶対とはいわないが、少なくとも私の経験の中では、その方法で税務署は了解してくれている。

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会社法の概略と会社の機関

2011-11-05 09:02:52 | 達人経理マンへの道

 さて今回は、少し固い話になるが、達人経理マンになるためには、どうしても避けて通れない『会社法』について簡単にまとめてみた。退屈だと思う人は読み飛ばして、明日に期待して欲しい。

 従来「商法」、「有限会社法」と呼ばれていた法律を統合・再編成して会社法と題する法律が制定された。公布は2005年7月26日で、2006年5月1日に施行されている。

 またこれにより有限会社法は消滅し、新規に有限会社の設立は出来なくなった。ただし会社法施行以前に有限会社であった会社は、特例有限会社として存続することになる。

 従って会社形態を取る限り、上場企業であろうと、零細企業であろうと、この会社法を無視するわけにはいかない。また会社法では、会社の機関として「株主総会」、「取締役」、「取締役会」、「監査役」、「監査役会」、「三委員会(指名委員会・監査委員会・報酬委員会)」、「執行役」、「会計監査人」、「会計参与」を定めている。

 このうち「株主総会」と「取締役」は、全ての株式会社に必ず設置しなければならない機関となっているが、それ以外の機関については、会社の区分により異なることになる。

 会社法では、資本金5億円以上かつ負債総額200億円以上の会社を「大会社」、それ以外を「中小会社」に分類している。また株式の譲渡制限がない場合は、公開会社、それ以外は非公開会社という分類もしている。(注:公開会社=上場会社ではない)それらを加味したうえで、さらに会社を分類すると次の4パターンとなり、それぞれに応じた規定が設定されている。

(1)中小会社&非公開会社

 日本の会社の約90%は、ほとんどこの分類に該当する。いわゆる「中小企業」と呼ばれている会社である。機関設計の選択肢が最も多く自由度が高い。理論上は21種類のパターンが考えられるが、取締役のみ1名という選択も出来るので、零細企業ではそれを利用しない手はないだろう。

(2)中小会社&公開会社

 会社の規模は余り大きくないが、多くの出資者を集めたいという会社。将来株式上場を目指している会社等が該当する。

(3)大会社&非公開会社

 会社の規模は大きいが、限定的な株主のみで構成されている会社。大部分は大企業の子会社が該当するが、オーナー一族が運営する有名な非上場会社等にも該当企業がある。

(4)大会社&公開会社

 会社の規模が大きく、出資者数も多い会社。一般的には、上場企業が該当する。また上場企業の場合は、会社法だけではなく、金融商品取引法という法律も遵守しなくてはならない。

 大企業では、総務部の中に「法務部門」を置いて、会社法や金融商品取引法なども十分に研究している。だから大企業の経理マンとしては、それらの法律の基本的な部分と、会計に関連する部分だけをしっかり理解していればよい。
 ところが中小企業では、「法務部門」どころか、総務も人事も含めて経理マンの仕事になっている場合が多い。だからといって、大企業のような複雑な事態は頻繁に起こらないし、金融商品取引法の適用もない。従って会社法についても、大企業のような勉強をする必要もないだろう。

 ただ中小企業の場合は、全てが経理マンに委ねられているため、広く浅い知識を持ち、臨機応変に対処する能力が求められる。そこで本章では的を中小企業に絞って、経理マンが知っておくべき会社法の知識と、その活用方法について述べることにしたい。

(1)大会社にしないことが肝要

 前述した通り、資本金5億円以上かつ負債総額200億円以上になると、会社法上の大会社と区分されてしまい、上場会社でなくても、会計監査人の設置義務を負い(会社法328条)、結果的に「企業会計基準の強制適用」を受ける事になってしまう。また会社の機関についても、中小・非公開会社のような簡便的な組織は認められない。

 これでは一大事である。金はかかるし、いろいろと束縛される事になる。だから現実には、資本金を4億9千万円に抑えている会社が多い。社長を説得して、絶対に中途半端な増資はさせないことである。

(2)取締役会と株主総会の運営 

 平成15年4月に施行された商法改正において、「委員会設置会社」制度が導入され、会社法に引き継がれた。だがほとんどの中小企業は、この馴染みのない制度を選択せず、従来どおり「取締役会設置会社」を続けている。

 従ってここでは「委員会設置会社」は無視することにし、昔ながらの「取締役会設置会社」の取締役について簡単に説明しよう。

 公開会社でない株式会社であれば、定款で取締役が株主でなければならない旨を定めることができる(会社法331条2項但し書)ので、これを有効に利用したほうがよいだろう。

 取締役は、株主総会で選任され、原則として定足数として株主の議決権の過半数の賛成が必要。また三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上にあたる株主の出席が必要であり、その出席した株主の議決権の過半数で決せられる。

 先に述べた通り、取締役一人の株式会社であれば、たぶん株主も同一人物一人であり、全く面倒な問題は起こり得ない。会社法が制定される前の商法では、実質は一人株主・一人役員であっても、法の上ではそれが認められず、形式だけ整えるのにいろいろ面倒であった。

 だが会社法では、実態を考慮した簡便な手続きが認められるので、実務者にとっては非常にありがたい。取締役一人の会社の場合は、当然取締役会は不要だが、株主総会だけは必要となる。といっても一人株主なら、総会といっても、独り言のようなものである。実際に総会を開催していなくとも、形式的な議事録の作成をしておけば特に問題はない。

 また一人取締役会社は、取締役会がないため、会社運営に関するほとんどの事項が、株主総会の決議事項となるのだが、通常は次のような議題に絞られるはずである。

●   定款の変更 
 法律などの改正で定款の変更が必要になる場合以外はほとんどないだろう。

●   役員の選任
 通常は取締役の任期が2年、監査役の任期が4年だが、株式譲渡制限会社の場合は10年
迄延長できるのだ。当然、一人取締役会社は、事務経費削減のため、これを利用しない手はないだろう。

●   役員報酬の決定
 ここで決めた報酬額が、法人税法上の適正報酬の判定基準になるため、しっかりと決めておかねばならない。

さて株主総会前後の事務手続きの流れだが、おおむね次の通りとなる。

①招集通知の発送
 通常は株主総会の日の2週間前までに、株主に対して総会の開催日時及び場所、議題等を記載した招集通知を発送する。ただし取締役一人の会社では、取締役会がないため、株主総会での決議事項は増えるものの、招集通知については、口頭で1週間前までに通知すれば良い事になっている。ほとんどが、自分が自分に通知するのだから、当然といえば当然だろう。

②総会当日の報告・承認決議

③総会議事録の作成

④総会で承認された事項の登記
 定款変更や役員変更がある場合に必要となる。自分で登記手続きをやってもよいが、総会議事録などの必要書類さえ揃えておけば、司法書士に頼んでも手数料はさして高くない。従って、勉強のために経験してもよいが、通常は時間の節約のため、司法書士に頼んでしまうほうが無難である。

 なお株主総会に関連する一連の書式は、ネットにいくらでも掲載されているので、ワードなどを使って自社向けの書式に手直ししておこう。

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経理マンの本来の役割を知ろう

2011-10-31 09:55:08 | 達人経理マンへの道

 まず『経理』という漢字をよく見てもらいたい。『経理』とは『経営管理』という言葉を略したものである。つまり数字の計算だけやるのは「経理」ではなく、「計理」なのである。年配の方なら、大昔「計理士」という資格があったことを覚えているだろう。

   そう、当時は経理マンも、文字通りの計算屋でよかった。ところがコンピューターの出現により、計算自体は人間の仕事ではなくなってしまったのである。だから企業や社会は、「計理」という名称を切り捨てて、人間にはもっと付加価値の高い経営管理を目指すよう、「経理」という名前が与えられたはずである。

 そう言ってしまえばなるほどと思うものの、この意味を本当に理解している者は少ない。ましてや、理解するだけでなく実践している経理マンが、年々少なくなっているのも嘆かわしい現実である。

 また経営管理などと言うと、いかにも派手で偉そうな仕事のように錯覚する者も多いだろう。そもそも経営とは、経営者の専売特許ではなく、従業員が行う仕事も含めたところの、事業を営むこと全搬をいうのだ。

 

 だから経営管理とは、経営者を含む全従業員が働き易くなるための環境整備であり、全体の調和と効率を計るコントローラーともいえる。ところが一般には、目にみえる経営効率を追求することだけが、経営管理であると思い込んでいるふしがある。

 

 結果として、借りてきたようなプレゼンテーションや中味の伴わないスタンドプレイに走ったりするのだ。大企業の経営企画室などに、こうした思い違いをしている人物が実に多い。それを中小企業の経理マンは、絶対に真似てはいけない。

 

 「経営管理」、つまり経理の本来の役割とは、地味で当たり前の仕事の集合なのである。金の管理、人の管理、物の管理に始まり、法の管理や利益の管理まで幅広くこなしてゆかねばならないのだ。

 大企業ではこれらを人事部・総務部・業務部・企画室などに分割しているが、中小企業では、これらを全て経理部門が賄っている。そうしなければ、生き残ってゆけないし、「経理」とは、本来そうしたものなのである。

 

 経理のベテランからみれば、そんなことは百も承知と苦笑されそうだ。だが私が言いたいのは、まず大企業精神はドブに捨て、全ての事務作業を快く引き受けることがスタートラインだということを認識して欲しいのだ。

 

 もちろん、ただ漫然と事務作業を行うだけなら、本ブログを熟読する意味はない。精度が高く、経営に役立つ仕事を、能率良くこなさなくてはならない。それらを実行するための具体的な技は、おいおい伝授してゆくとして、まずどんな仕事にもどん欲になろう。そして、他の従業員や経営者のお役に立つために働いているのだという自覚を持とうではないか。

 

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