
彦根藩の当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の
井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと兜(か
ぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-
【季語と短歌:4月27日】
合歓木の若葉茂れるジュブリタン
高山 宇
🪄ラーゴ(大津)、コリーナ(近江八幡)、彦根美濠の舎と「たねや」は
は繁盛し、妬み餅かっているかも(笑)。今朝も、二人で松原の「ジュブ
リタンで朝食を頂いた。元トヨタの保養所があった。廃食油の回収でお
世話になり、夏は。鳥人間コンテスト会場(読売放送主催)の松原でも
あり、もう45年になるのかと彼女と話していたが、ここはホンモロコの
産卵場でもあった。今はやっていないが「ルバンベール」(松風という
南仏風イタリアンレストラン)でお世話になった。そして、水素社会を
担う番組スポンサーの岩谷産業だから、よくよく環境問題と関係が深い
紅い糸で結ばれているのだと、深い詠嘆を伴い俳句を詠む。(感謝)
✳️ 水に不溶有機物を水で還元する光触媒
【成果】
開発した光触媒反応系の概念図:水溶液相(水色)において半導体固体光
触媒が水を酸化し、有機溶液相(黄色)において金属錯体光触媒が有機物
を還元変換する。フェロセニウム(Fc+)/フェロセン(Fc)が自発的に液相
間を移動し電子輸送することで、酸化と還元反応を結びつける。
【展望】
開発した光触媒系により、これまで水分解とCO2還元にほぼ限定されて
いた人工光合成反応を、有機物の変換反応に適用できることを示した。
本研究の成果は、創薬や材料開発などに欠かせない様々な有機合成反応
を、光エネルギーとクリーンな水資源により進行させる技術へと発展す
る可能性を秘めている。
今後は本光触媒系を様々な分子変換反応へと適用するとともに、電子輸
送の効率を高めることで(太陽)光エネルギー変換の観点でも意義のあ
る技術へと展開させることを目指す。
図S15:水中での電子受容体としてFc+を使用したBi4TaO8Clによる(a)水
酸化のための光誘起電子移動のエネルギー図および(b)電子供給体としてFc
を使用した[Ir(C6)2(dmb)](PF6)によるBn-Brの還元的カップリングのエ
ネルギー図。
【関連論文】
タイトル:Phase-Migrating Z-Scheme Charge Transportation Enables
Photoredox Catalysis Harnessing Water as an Electron Source (相間移
動型Z-スキーム電荷輸送が可能にする水を電子源とした光レドックス触
媒反応)
掲 載 誌:Journal of the American Chemical Society
DOI:10.1021/jacs.5c02276
✳️ 最新特許技術事例
1️⃣ 特開2024-125594 二酸化炭素還元装置および人工光合成装置 株
式会社豊田中央研究所(審査中)
【背景技術】近年、石油や石炭等の化石燃料の枯渇が懸念され、持続的
に利用できる再生可能エネルギーへの期待が高まっている。そのような
エネルギー問題、さらに環境問題等の観点から、太陽光等の再生可能エ
ネルギーを用いて二酸化炭素を電気化学的に還元し、貯蔵可能な化学エ
ネルギー源を作り出す人工光合成技術の開発が進められている。
二酸化炭素を還元する方法の一つとして、水溶液中に溶解させた二酸化
炭素を電気化学的にギ酸に還元する方法が挙げられる。しかし、従来の
二酸化炭素還元電解装置は、溶液中に溶解した二酸化炭素を還元する手
法であった。この例では、二酸化炭素還元触媒として銅(Cu)等の金
属ナノワイヤ、水(H2O)酸化触媒として白金(Pt)が用いられて
いる。
近年では、ガス拡散型の二酸化炭素還元電極の開発が進められており、
ガス拡散型の二酸化炭素還元用の負極(カソード)と、H2O酸化用の
正極(アノード)との間に、負極室用の電解質溶液(炭酸水素カリウム
(KHCO3)水溶液)、イオン電導性メンブレン膜および正極室用の電
解質溶液(水酸化カリウム(KOH)水溶液)が配置された二酸化炭素
還元装置が報告されている。この例では、二酸化炭素還元触媒として酸
化スズ、水酸化触媒としてニッケル(Ni)が用いられている。
別の例として、非特許文献2では、ガス拡散型の負極と、正極との間に、
陰イオン交換膜、水溶液層および陽イオン交換膜からなる3室方式の二
酸化炭素還元装置が記載されている。この例では、二酸化炭素還元触媒
としてスズナノ粒子、水酸化触媒として酸化イリジウム(IrO2)が
用いられている。
特許文献1のような、電極浸漬方式の場合、水溶液中に溶解する二酸化
炭素の濃度は室温、常圧では希薄であるため、二酸化炭素に優先して、
共存するプロトン(H+)の還元が進行し、水素(H2)が副生される。
また、水溶液中での二酸化炭素の物質拡散が遅いため、二酸化炭素還元
の反応電流密度の理論限界は<30mA cm-2と小さい。非特許文献
1,2のようなガス拡散方式の場合、二酸化炭素ガスを水蒸気ガスと混
合して負極に直接供給するので、水に対する二酸化炭素の濃度比が大き
いため、水素(H2)の副生が抑制される。また、拡散速度の速い気相
中で反応が進行するので、反応電流密度の限界が大幅に増大する。さら
に、正極室と負極室に異なる電解質溶液を用いることができるので、正
極を水の酸化が容易なアルカリ性環境としながら、負極に二酸化炭素を
供給し、両極におけて最適な反応環境を構築することができる。ギ酸の
回収の観点からは、特許文献1や非特許文献1の方法では、電解質溶液
中にギ酸が生成するが、ギ酸はpKa3.75であるため、これより高
いpH環境では、ギ酸イオン(HCOO-)に電離する。しかし、酸性
条件では、二酸化炭素の還元に優先して水素(H2)の生成が進行する
ため、中性付近の電解液を用いなければならず、ギ酸の電離は避けられ
ない。【0008】 また、従来技術のほとんどにおいて、二酸化炭素還元
触媒は、スズ(Sn)等の金属またはその酸化物であった。一方、二酸
化炭素還元触媒として金属イオンと有機配位子とからなる金属錯体が知
られている。金属イオンと有機配位子とからなる金属錯体の場合、有機
配位子の設計を自在に変調できることから、触媒の性質を大きく変える
ことができる。しかし、従来技術のほとんどで用いられている金属また
は金属酸化物は、その性質を金属-金属結合や、金属-酸素結合の調整
によってしか変調することができない。このため、触媒としての二酸化
炭素還元反応における活性化エネルギーを小さくし、反応電位を低下さ
せることが困難である。
【0010】
以上のような理由から、従来技術の二酸化炭素還元装置の動作電位は
まだ高い。すなわち、動作のときの電気エネルギーから化学エネルギー
へのエネルギー変換効率が低い。例えば、セル電位2Vの二酸化炭素の
電解でギ酸イオン(HCOO-)を生成する場合のエネルギー変換効率
は53%に相当する。セル電位1.5Vでの動作を実現すれば、エネル
ギー変換効率は74%に達する。望ましくは、エネルギー変換効率90
%以上に相当する1.24V以下での駆動が望まれる。
【要約】
下図1のごとく、水を酸化して酸素を生成するアノード16、およびアノ
ード16にアノード溶液を供給するアノード溶液流路18を備えるアノー
ド部10と、二酸化炭素を還元してギ酸を生成するカソード22、およ
びカソード22に二酸化炭素ガスを供給するガス流路24を備えるカソ
ード部12と、アノード部10とカソード部12によりアノード部10
側から順に挟持される、カチオン交換膜14、イオン交換樹脂懸濁液層
36、アニオン交換膜34と、を備え、カソード22は、アニオン交換
膜34側から順に、カソード触媒として金属錯体を含む触媒層26と、
ガス拡散層28と、を備え、アノード溶液として、電解質溶液を供給す
る、二酸化炭素還元装置1である。
図1. 二酸化炭素還元装置の一例を示す概略構成図
【符号の説明】
1,3 二酸化炭素還元装置、10 アノード部、12 カソード部、14
カチオン交換膜、16 アノード、18 アノード溶液流路、20 アノー
ド集電板、22 カソード、24 ガス流路、26 触媒層、28 ガス拡
散層、30 カソード集電板、32 電源、34 アニオン交換膜、36
イオン交換樹脂懸濁液層、38 イオン交換膜。
【発明の効果】
本発明により、低いセル電位かつ高い変換効率でギ酸を得ることができ
る二酸化炭素還元装置および人工光合成装置を提供することができる。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】水を酸化して酸素を成するアノード、および前記アノード
にアノード溶液を供給するアノード溶液流路を備えるアノード部と、二
酸化炭素を還元してギ酸を生成するカソード、および前記カソードに二
酸化炭素ガスを供給するガス流路を備えるカソード部と、前記アノード
部と前記カソード部により前記アノード部側から順に挟持される、カチ
オン交換膜、イオン交換樹脂懸濁液層、アニオン交換膜と、を備え、
前記カソードは、前記アニオン交換膜側から順に、カソード触媒として
金属錯体を含む触媒層と、ガス拡散層と、を備え、
前記アノード溶液として、電解質溶液を供給することを特徴とする二酸
化炭素還元装置。
【請求項2】請求項1に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記金属
錯体は、中心金属として、Ru、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、
Reからなる群より選択される少なくとも1つの金属を有し、配位子と
して、ジイミン配位子を有することを特徴とする二酸化炭素還元装置。
【請求項3】請求項2に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記ジイ
ミン配位子は、電子求引性の置換基が導入されたジイミン配位子である
ことを特徴とする二酸化炭素還元装置。
【請求項4】請求項3に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記電子
求引性の置換基は、構造式が-COORのカルボン酸エステルであり、
Rは、アルキル基とピロール部位からなる化学構造を有し、前記ピロー
ル部位は、ポリピロール鎖により重合していることを特徴とする二酸化
炭素還元装置。
【請求項5】請求項1に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記触媒
層は、イオン伝導体およびバインダーとなる高分子化合物と、導電性カ
ーボンと、を含むことを特徴とする二酸化炭素還元装置。
【請求項6】請求項1に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記ガス
拡散層は、疎水性多孔質カーボン基材を含むことを特徴とする二酸化炭
素還元装置。
【請求項7】請求項1に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記アノ
ードは、Ni、Ti、Fe、Cからなる群より選択される少なくとも1
つの材料から構成される基材を備え、前記基材は、多孔体、メッシュ材、
繊維焼結体からなる群より選択される少なくとも1つの形状を有し、
前記アノードは、アノード触媒として、Ni、Fe、Co、Mn、Ru、
Irからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む金属、前記
金属を含む酸化物、前記金属を含む水酸化物、および前記金属を含むオ
キシ水酸化物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特
徴とする二酸化炭素還元装置。
【請求項8】請求項7に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記アノ
ードは、前記アノード触媒として、オキシ水酸化鉄およびオキシ水酸化
ニッケルからなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴と
する二酸化炭素還元装置。
【請求項9】請求項1に記載の二酸化炭素還元装置であって、前記電解
質溶液は、水酸化物イオン、硫酸、炭酸、リン酸、またはホウ酸を含む
ことを特徴とする二酸化炭素還元装置。
【請求項10】請求項1に記載の二酸化炭素還元装置と、前記アノード
および前記カソードに供給される電力を生成する太陽電池セルと、を備
えることを特徴とする人工光合成装置。
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📖【科学・工学的背景】
参考文献1:太陽とCO2で化学品をつくる「人工光合成」、
今どこまで進んでる?資源エネルギー庁
図 タンデムセル型光触媒と太陽光エネルギー変換効率の推移
参考文献2:世界初、100%に近い量子収率で水を分解する光触媒を開
発ー収率低下要因を完全に抑える高活性な光触媒の設計指針 2020年5
月29日 NEDO
参考文献3:Artificial Photosynthesis: Current Advancements and
Future Prospects;<button class="cursor-pointer text-no-underline bg-transparent border-0 padding-0 text-left margin-0 text-normal text-primary" type="button" aria-controls="journal_context_menu" aria-expanded="false">Biomimetics (Basel)</button>. 2023 Jul 9;8(3):298.
doi: 10.3390/biomimetics8030298
特許文献1:特開2017-057438 還元電極とその製造方法、および電解
装置
非特許文献1:ACS Sustainable Chem. Eng. 2021, 9, 11, 4213-4223
非特許文献2:https://dioxidematerials.com/technology/formic-
acid/
---------------------------------------------------------------------‐--------
【詳細説明】【課題を解決するための手段】【0014】
本発明は、水を酸化して酸素を生成するアノード、および前記アノード
にアノード溶液を供給するアノード溶液流路を備えるアノード部と、二
酸化炭素を還元してギ酸を生成するカソード、および前記カソードに二
酸化炭素ガスを供給するガス流路を備えるカソード部と、前記アノード
部と前記カソード部により前記アノード部側から順に挟持される、カチ
オン交換膜、イオン交換樹脂懸濁液層、アニオン交換膜と、を備え、前
記カソードは、前記アニオン交換膜側から順に、カソード触媒として金
属錯体を含む触媒層と、ガス拡散層と、を備え、前記アノード溶液とし
て、電解質溶液を供給する、二酸化炭素還元装置である。【0015】
前記二酸化炭素還元装置において、前記金属錯体は、中心金属として、
Ru、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Reからなる群より選択
される少なくとも1つの金属を有し、配位子として、ジイミン配位子を
有することが好ましい。【0016】
前記二酸化炭素還元装置において、前記ジイミン配位子は、電子求引性
の置換基が導入されたジイミン配位子であることが好ましい。【0017】
前記二酸化炭素還元装置において、前記電子求引性の置換基は、構造式
が-COORのカルボン酸エステルであり、Rは、アルキル基とピロー
ル部位からなる化学構造を有し、前記ピロール部位は、ポリピロール鎖
により重合していることが好ましい。【0018】
前記二酸化炭素還元装置において、前記触媒層は、イオン伝導体および
バインダーとなる高分子化合物と、導電性カーボンと、を含むことが好
ましい。【0019】
前記二酸化炭素還元装置において、前記ガス拡散層は、疎水性多孔質
カーボン基材を含むことが好ましい。【0020】
前記二酸化炭素還元装置において、前記アノードは、Ni、Ti、Fe、
Cからなる群より選択される少なくとも1つの材料から構成される基材
を備え、前記基材は、多孔体、メッシュ材、繊維焼結体からなる群より
選択される少なくとも1つの形状を有し、前記アノードは、アノード触
媒として、Ni、Fe、Co、Mn、Ru、Irからなる群より選択さ
れる少なくとも1つの元素を含む金属、前記金属を含む酸化物、前記金
属を含む水酸化物、および前記金属を含むオキシ水酸化物からなる群よ
り選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。【0021】
前記二酸化炭素還元装置において、前記アノードは、前記アノード触媒
として、オキシ水酸化鉄およびオキシ水酸化ニッケルからなる群より選択
される少なくとも1つを含むことが好ましい。【0022】
前記二酸化炭素還元装置において、前記電解質溶液は、水酸化物イオン、
硫酸、炭酸、リン酸、またはホウ酸を含むことが好ましい。【0023】
本発明は、前記二酸化炭素還元装置と、前記アノードおよび前記カソ
ードに供給される電力を生成する太陽電池セルと、を備える、人工光合
成装置である。【0028】
図1に示す二酸化炭素還元装置1は、水を酸化して酸素を生成するア
ノード16、およびアノード16にアノード溶液を供給するアノード溶
液流路18を備えるアノード部10と、二酸化炭素を還元してギ酸を生
成するカソード22、およびカソード22に二酸化炭素ガスを供給すガ
ス流路24を備えるカソード部12と、アノード部10とカソード部1
2によりアノード部10側から順に挟持される、カチオン交換膜14、
イオン交換樹脂懸濁液層36、アニオン交換膜34と、を備え、カソー
ド22は、アニオン交換膜34側から順に、カソード触媒として金属錯
体を含む触媒層26と、ガス拡散層28と、を備え、アノード溶液とし
て、電解質溶液を供給する装置である。二酸化炭素還元装置1は、アノ
ード集電板20とカソード集電板30とを備える。【0029】
二酸化炭素還元装置1は、二酸化炭素ガスをカソード22の触媒層26
に直接供給するガス拡散型電解フローセルである。二酸化炭素ガスとは、
二酸化炭素を含むガスであり、好ましくは二酸化炭素および水蒸気を含
むガスである。【0030】
アノード部10とカソード部12との間には、カチオン交換膜14と
アニオン交換膜34に挟まれてイオン交換樹脂懸濁液層36が形成され
ており、アノード部10とカソード部12とはカチオン交換膜14、イ
オン交換樹脂懸濁液層36、およびアニオン交換膜34により分離され
ている。アノード16は、カチオン交換膜14とアノード溶液流路18
との間に、それらと接するように配置されている。アノード溶液流路18
は、アノード16にアノード溶液を供給する流路であり、例えば、アノ
ード集電板20に設けられたピット(溝部または凹部)により形成され
ている。カソード22は、アニオン交換膜34とガス流路24との間に、
それらと接するように配置されている。ガス流路24は、カソード22
に二酸化炭素ガスを供給する流路であり、カソード集電板30に設けら
れたピット(溝部または凹部)により形成されている。【0031】
アノード集電板20には、例えば、溶液導入口と溶液導出口(いずれも
図示せず)とが接続されている。そして、アノード溶液が、溶液導入口
を介してアノード溶液流路18内に導入され、アノード16と接触しな
がらアノード溶液流路18内を通り、アノード溶液導出口から排出される。
【0032】 カソード集電板30には、例えば、ガス導入口とガス導出
口(いずれも図示せず)とが接続されている。そして、二酸化炭素ガス
が、ガス導入口を介してガス流路24内に導入され、ガス拡散層28を
介して触媒層26に接触しながらガス流路24内を通り、ガス導出口か
ら排出される。【0033】
イオン交換樹脂懸濁液層36には、イオン交換樹脂の粒子が懸濁され
たイオン交換樹脂懸濁液が含まれている。イオン交換樹脂懸濁液層36
には、例えば、懸濁用液導入口と懸濁用液導出口(いずれも図示せず)
とが接続されている。そして、懸濁用液が、懸濁用液導入口を介してイ
オン交換樹脂懸濁液層36内に導入され、イオン交換樹脂と接触しなが
らイオン交換樹脂懸濁液層36内を通り、懸濁用液導出口から排出される。
【0034】 二酸化炭素還元装置1は、アノード16とカソード22と
の間を電気的に接続し、電力を供給する電源32を備える。【0035】
次に、図1に示す二酸化炭素還元装置1の動作例について説明する。
【0036】 アノード16とカソード22との間に電源32から電流
が供給されると、アノード溶液と接するアノード16で水(H2O)の
酸化反応が生じる。具体的には、アノード溶液中に含まれる水(H2O)
が酸化されて、酸素(O2)とプロトン(H+)が生成する。【0037】
カソード22側では、ガス流路24からガス拡散層28を介して触媒層
26に供給された二酸化炭素(CO2)ガスに含まれる二酸化炭素(C
O2)が還元されてギ酸アニオン(HCOO-)が生成する。【0038】
カソード22側では、二酸化炭素の還元によって生成したギ酸アニオン
(HCOO-)が、アニオン交換膜34を介してイオン交換樹脂懸濁液
層36へと移動する。一方で、アノード16側では、水の酸化によって
生成したプロトン(H+)またはアノード溶液に含まれる陽イオンが、
カチオン交換膜14を介してイオン交換樹脂懸濁液層36へと移動する。
その結果、これらのイオン移動によって電気伝導がもたらされ、イオン
交換樹脂懸濁液層36でギ酸(HCOOH)またはギ酸塩が得られる。
全体としては、下記の式(1)の反応式に示すように、二酸化炭素(C
O2)からギ酸(HCOOH)が生成する。
CO2+H2O → HCOOH+1/2O2 ΔG=274kJ/mol・・・(1)
【0039】 以下、アノード部10、カソード部12、カチオン交換膜
14、アニオン交換膜34、およびイオン交換樹脂懸濁液層36の各構
成について説明する。【0040】
アノード16は、前述したように、アノード溶液中の水(H2O)の酸
化反応を促し、酸素(O2)や水素イオン(H+)を生成する電極(酸
化電極)である。【0041】
アノード16は、酸化反応の過電圧を低減させることが可能な点で、
Ni、Ti、Fe、Cからなる群より選択される少なくとも1つの材料
から構成される基材を備えることが好ましい。Ni、Ti、またはFe
の金属材料は、Ni、Ti、Feの金属を少なくとも1つ含む合金も含
まれる。また、基材は、カチオン交換膜14とアノード溶液流路18と
の間でアノード溶液やイオンを移動させることが可能な構造であること
が好ましく、例えば、多孔体、メッシュ材、繊維焼結体からなる群より
選択される少なくとも1つの形状を有することが好ましい。【0042】
アノード16は、アノード触媒を含む。アノード触媒は、酸化反応の過
電圧を低減させることが可能な点で、例えば、Ni、Fe、Co、Mn、
Ru、Irからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む金属、
前記金属を含む酸化物、前記金属を含む水酸化物、および前記金属を含
むオキシ水酸化物からなる群より選択される少なくとも1つを含むこと
が好ましい。これらは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
アノード触媒は、水の酸化を低電位で進行させることができる等の点で、
オキシ水酸化鉄およびオキシ水酸化ニッケルからなる群より選択される
少なくとも1つを含むことが好ましい。アノード触媒を用いる場合には、
前述の基材上にアノード触媒を担持することが好ましい。【0043】
アノード集電板20は、化学反応性が低く、導電性が高い材料を用いる
ことが好ましい。そのような材料としては、TiやSUS等の金属材料、
カーボン等が挙げられる。【0044】
アノード溶液は、電解質溶液である。電解質溶液としては、例えば、ア
ルカリ性溶液が挙げられる。アルカリ性溶液としては、水酸化カリウム
水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素カリ
ウム水溶液等が挙げられ、水酸化物イオン濃度が高いほど水の酸化に有
利に進行することから、1mol/L以上の濃度の水酸化カリウム水溶
液、水酸化ナトリウム水溶液等の水酸化物イオンを含む水溶液が好まし
い。【0045】
アノード溶液は、例えば、セル電圧の低下等の点で、pH12以上のア
ルカリ性水溶液であることが好ましい。【0046】
電解質溶液は、アルカリ金属イオン等の塩を含まない電解質溶液、例
えば、硫酸、炭酸、リン酸、またはホウ酸を含む水溶液であってもよい。
電解質溶液が硫酸、炭酸、リン酸、またはホウ酸を含む水溶液である場
合、カチオン交換膜14を通過するカチオンはプロトン(H+)であり、
イオン交換樹脂懸濁液層36ではギ酸アニオン(HCOO-)とプロト
ン(H+)が会合したギ酸(HCOOH)が生成する。電解質溶液が例
えば水酸化カリウム水溶液である場合、カチオン交換膜14を通過する
カチオンはカリウムイオン(K+)であり、イオン交換樹脂懸濁液層36
では、ギ酸カリウムが生成する。この場合であっても、高濃度(例えば
1M)の電解質溶液中にギ酸カリウムが生成するわけではないので、電
解質塩の除去は行わなくてもよい。【0047】
カソード22は、前述したように、二酸化炭素(CO2)の還元反応を
促し、ギ酸(HCOOH)を生成する電極(還元電極)である。【0048】
カソード22を構成するガス拡散層28は、触媒層26と電源32との
電気的導通を確保し、かつ二酸化炭素ガスを触媒層26に効率よく供給
するものであればよく、特に制限されないが、例えば、疎水性多孔質カ
ーボン基材、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
ガス拡散層28は、アノード16側から移動してきた水の量を減らすこ
とができる等の点で、疎水性多孔質カーボン基材であることが好ましい。
【0049】 カソード22を構成する触媒層26は、前述したように
、二酸化炭素ガス中の二酸化炭素の還元反応を促し、ギ酸(HCOOH
)を生成する。触媒層26は、カソード触媒として金属錯体を含む。触
媒層26は、さらにイオン伝導体およびバインダーとなる高分子化合物
と、導電性カーボンと、を含むことが好ましい。触媒層26は、二酸化
炭素ガスの拡散性を向上させる等の点で、基材としてカーボンペーパー
等の多孔質構造体を含むことが好ましい。触媒層26の厚みは、例えば、
5~200μmの範囲である。【0050】
カソード触媒である金属錯体は、例えば、中心金属と、ジイミン配位子
と、を有する金属錯体である。金属錯体の中心金属は、二酸化炭素の還
元反応を触媒する金属であればよく、特に限定されないが、例えば、二
酸化炭素の還元反応における過電圧を低減させることが可能となる点で、
Ru、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Reからなる群より選択
される少なくとも1つの金属であることが好ましく、MnまたはRuで
あることがより好ましい。【0051】
金属錯体のジイミン配位子は、例えば、2,2’-ビピリジン誘導体、
1,10-フェナントロリン誘導体等が挙げられる。ジイミン配位子は、
二酸化炭素の還元反応による過電圧を低減させることができる等の点で、
電子求引性の置換基が導入されたジイミン配位子であることが好ましい。
【0052】 ジイミン配位子に導入される電子求引性の置換基は、カル
ボン酸基、カルボニル基、ニトロ基等の他に、構造式が-COORのカ
ルボン酸エステル等が挙げられる。ここで、Rは、例えば、炭素数1~
10の範囲の直鎖または分岐のアルキル基である。Rは、ジイミン配位
子と電源との電気的導通を確保することができる等の点で、アルキル基
とピロール部位からなる化学構造を有し、ピロール部位は、ポリピロー
ル鎖により重合していることが好ましい。【0053】
金属錯体は、好ましくは、中心金属Ruであり、2,2’-ビピリジン
とピロールが-COORのカルボン酸エステル(Rは、炭素数1~10
のアルキル基)で化学結合により連結された分子、またはこのピロール
部位が、ポリピロール鎖により重合して多量体化したポリマー等である。
【0054】 金属錯体として、例えば、下記化学式で表される金属錯
体[Ru{4,4’-di(1H-pyrrolyl-3-propy
lcarbonate)-2,2’-bipyridine}Cl2(C
O)(CH3CN)]が挙げられる。
【化1】
【0055】 触媒層26に含まれる導電性カーボンは、例えば、ケッ
チェンブラックやバルカンXC-72等のカーボンブラック、活性炭、
カーボンナノチューブ等が挙げられる。導電性カーボンは、上記金属錯
体が担持される担体として使用されることが好ましい。上記金属錯体を
導電性カーボンに担持することによって、例えば、還元反応性を高める
ことができる。【0056】
触媒層26に含まれるイオン伝導体およびバインダーとなる高分子は
、ナフィオン(登録商標)(デュポン社製)、フレミオン(登録商標)(
旭硝子(株)製)等のカチオン交換樹脂、ネオセプタ(登録商標)やセ
レミオン(登録商標)、サステニオン(登録商標)等のアニオン交換樹脂
等が挙げられる。【0057】
触媒層26は、触媒活性を高めることができる点で、フェノールまたは
その塩を含んでもよい。【0058】
カソード集電板30は、アノード集電板20と同様に、化学反応性が低
く、導電性が高い材料を用いることが好ましい。そのような材料として
は、Tiやステンレス(SUS)等の金属材料、カーボン等が挙げられ
る。【0059】
カチオン交換膜14としては、例えば、テトラフルオロエチレンとパ
ーフルオロ[2-フルオロスルホニルエトキシプロピルビニルエーテル
]の共重合体の膜(例えば、デュポン社製、ナフィオン(登録商標)や
フレミオン(登録商標))等のカチオン交換膜が挙げられる。【0060】
アニオン交換膜34としては、例えば、イミダゾール基を有するポリス
チレンの膜(例えば、Dioxide Materials社製、サステ
ニオン(登録商標))等のアニオン交換膜が挙げられる。
【0061】 イオン交換樹脂懸濁液層36に含まれるイオン交換樹脂
としては、例えば、スルホン酸基を有するスチレン-ジビニルベンゼン
共重合体の多孔体粒子(例えば、デュポン社製、Dowex(登録商標
))、スルホン酸基またはカルボン酸基を有するアクリル酸-ジビニルベ
ンゼン共重合体の多孔体粒子(例えば、デュポン社製、Ambelite
(登録商標))等のカチオン交換樹脂が挙げられる。【0062】
イオン交換樹脂懸濁液層36においてイオン交換樹脂を懸濁するため
の懸濁用液としては、純水等の水、メタノール、エタノール等が挙げら
れ、イオン交換樹脂の膨潤性やイオン電導性等の点から、純水が好まし
い。【0063】
電源32は、特に限定されるものではなく、化学的電池(一次電池、
二次電池等を含む)、定電圧源、太陽電池セル等が挙げられる。電源32
として太陽電池セルを用いることにより、二酸化炭素還元装置1と、二
酸化炭素還元装置1のアノード16とカソード22に供給される電力を
生成する太陽電池セルと、を備える人工光合成装置とすることができる。
本実施形態に係る人工光合成装置は、二酸化炭素還元装置1のアノード
16とカソード22が太陽電池セルを介して接続され、太陽光をエネル
ギー源として駆動される。【0064】
アノード16とカソード22との間のセル電圧が2V以下であることが
好ましく、1.5V以下であることがより好ましく、1.2V以下であ
ることがさらに好ましい。
【0065】 本実施形態に係る二酸化炭素還元装置を用いることによ
って、低いセル電位で大きな反応電流密度を生じさせ、かつ高い変換効
率でギ酸を得ることができる。本実施形態に係る二酸化炭素還元装置は、
低いセル電位、大きな反応電流密度、高い選択性で、二酸化炭素(CO2
)を還元してギ酸(HCOOH)にするとともに、水(H2O)を酸化
て酸素(O2)を生成することを可能にするものである。全体として、
上記(1)の反応式で表される、電気エネルギーを化学エネルギーに貯
蔵する反応を進行させることができる。イオン交換樹脂懸濁液にギ酸を
蓄積させることによって、アノードでのギ酸の酸化反応がほとんど起こ
らず、高濃度に蓄積することが可能である。また、アノード溶液として
アルカリ金属イオン等の塩を含まない電解質溶液(硫酸、炭酸、リン酸、
ホウ酸等)を用いれば、イオン交換樹脂懸濁液にギ酸イオンではなくギ
酸(HCOOH)が得られる。これらによって、化学原料、エネルギー
キャリアとして応用する際に、酸の添加や濃縮のプロセスを省略するこ
とが可能となる。【0066】
本実施形態に係るガス拡散型の二酸化炭素還元装置を用いることによ
って、二酸化炭素の気体としての供給が可能となり、二酸化炭素還元反
応の電流密度が増大するとともに、水素(H2)の副生を低減すること
ができる。【0067】
アノードの水(H2O)の酸化は、アルカリ性溶液で進行しやすいが、
二酸化炭素はアルカリ性環境では、HCO3-およびCO32-との平衡
により、二酸化炭素として存在できない。両極をカチオン交換膜で分離
することによって、アノードをアルカリ性環境としながら、カソードに
二酸化炭素を供給し、両極におけて最適な反応環境を構築することがで
きる。【0068】
カソード側にアニオン交換膜を用いることによって、二酸化炭素の還元
で生成するギ酸アニオン(HCOO-)が、イオン交換樹脂懸濁液へと
移動する。一方で、アノード側に陽イオン交換膜を用いることによって、
水の酸化で生成するプロトン(H+)またはアノード溶液に含まれる陽
イオンが、イオン交換樹脂懸濁液へと移動する。その結果、これらのイ
オン移動が電気伝導をもたらし、電解質を含まない純水等の懸濁用液で
膨潤させたイオン交換樹脂懸濁液では、ギ酸(HCOOH)またはギ酸
塩が得られる。
【0069】 さらに、ジイミン配位子として電子求引性の置換基が導
入された配位子を有するRu錯体等の金属錯体は、低電位での二酸化炭
素還元ギ酸生成触媒として作用することができるため、極めて低電位で
二酸化炭素を還元してギ酸(HCOOH)を生成することが可能である。
【0070】 また、水の酸化用のアノードに、水の酸化用のアノード触
媒を導入することによって、さらなる低電位化が可能となる。【0071】
本実施形態に係る二酸化炭素還元装置と同様にカソード触媒として金属
錯体を用いる例として、例えば、図2に示す2室の構成からなる二酸化
炭素還元装置が考えられる。【0072】
図2に示す二酸化炭素還元装置3は、水を酸化して酸素を生成するアノ
ード16、およびアノード16にアノード溶液を供給するアノード溶液
流路18を備えるアノード部10と、二酸化炭素を還元してギ酸を生成
するカソード22、およびカソード22に二酸化炭素ガスを供給するガ
ス流路24を備えるカソード部12と、アノード部10とカソード部12
により挟持されるイオン交換膜38と、を備え、カソード22は、イオ
ン交換膜38側から順に、カソード触媒として金属錯体を含む触媒層
26と、ガス拡散層28と、を備え、アノード溶液として、アルカリ性
溶液を供給する装置である。二酸化炭素還元装置1は、アノード集電板
20とカソード集電板30とを備える。二酸化炭素還元装置1は、アノ
ード16とカソード22との間を電気的に接続し、電力を供給する電源
32を備える。イオン交換膜38は、カチオン交換膜またはアニオン交
換膜である。【0073】
アノード16とカソード22との間に電源32から電流が供給されると
、アノード溶液と接するアノード16で水(H2O)の酸化反応が生じ
る。具体的には、アノード溶液中に含まれる水(H2O)が酸化されて、
酸素(O2)が生成する。【0074】
カソード22側では、ガス流路24からガス拡散層28を介して触媒
層26に供給された二酸化炭素(CO2)ガスに含まれる二酸化炭素(
CO2)が還元されてギ酸(HCOOH)が生成する。【0075】
イオン交換膜38としてカチオン交換膜を用いる場合、生成するギ酸
は電離せず、HCOOHの形で得ることができる。全体としては、上
記の式(1)の反応式に示すように、二酸化炭素(CO2)からギ酸(
HCOOH)が生成する。【0076】
イオン交換膜38としてアニオン交換膜を用いる場合、生成するギ酸
(HCOOH)は電離して、ギ酸イオン(HCOO-)の形で得られる。
カソード22で得られたギ酸イオン(HCOO-)は、アニオン交換膜
を透過して、アノード部10のアノード溶液中に得られる。全体として
は、下記の式(2)の反応式に示すように、二酸化炭素(CO2)から
ギ酸イオン(HCOO-)が生成する。
CO2+OH- → HCOO-+1/2O2 ΔG=215.7kJ/mol ・・・(2)
図2参考例1,2で用いた2室ガス拡散リアクターを示す概略構成図
【0077】 図2に示す二酸化炭素還元装置3では二酸化炭素還元触
媒として金属錯体を用いることによって、低い電位での二酸化炭素の還
元を達成することができる。しかし、イオン交換膜38としてアニオン
交換膜を用いる場合、生成したギ酸がアニオン交換膜をギ酸イオン(H
COO-)として透過するため、アノード部10のアノード溶液(アノ
ード電解液)中にギ酸塩が生成する。このため、アノードでのギ酸イオ
ンの酸化が起こりえるため、ギ酸の高濃度化が困難である。また、ギ酸
イオンが生成するので、実用ではギ酸の回収のために酸処理、分離、濃
縮工程が必要である。【0078】
イオン交換膜38としてカチオン交換膜を用いる場合、カチオン交換
膜によってアノード溶液(アノード電解液)中へのギ酸イオンの流出は
抑制され、カソード上にギ酸が残留するが、回収工程で溶液でのカソー
ドの洗浄が必要なため、ギ酸が希釈されることによるギ酸濃度の低下や、
洗浄液への触媒の流出にともなう性能の低下がある。また、金属製集電
板のギ酸による腐食などの懸念もある。これらの結果として、連続運転
に問題がある。【0079】
一方、本実施形態に係る二酸化炭素還元装置では、カソード上でギ酸
がほとんど蓄積せず、安定的に二酸化炭素の還元によるギ酸の生成を進
行させることができる。また、イオン交換樹脂懸濁液層36の懸濁用液
中にギ酸が蓄積するので、電解質塩を含まない溶液中でギ酸を得ること
ができる。特に、アノード溶液として硫酸や炭酸、リン酸、ホウ酸等の
電解質塩を含まない水溶液を用いれば、ギ酸塩ではなく、ギ酸(HCO
OH)をイオン交換樹脂懸濁液層36に得ることができる。【0080】
本明細書は、以下の実施形態を含む。
[1]水を酸化して酸素を生成するアノード、および前記アノードにア
ノード溶液を供給するアノード溶液流路を備えるアノード部と、
二酸化炭素を還元してギ酸を生成するカソード、および前記カソード
に二酸化炭素ガスを供給するガス流路を備えるカソード部と、 前記ア
ノード部と前記カソード部により前記アノード部側から順に挟持される、
カチオン交換膜、イオン交換樹脂懸濁液層、アニオン交換膜と、
を備え、前記カソードは、前記アニオン交換膜側から順に、カソード触
媒として金属錯体を含む触媒層と、ガス拡散層と、を備え、 前記アノー
ド溶液として、電解質溶液を供給する、二酸化炭素還元装置。【0081】
[2][1]に記載の二酸化炭素還元装置であって、 前記金属錯体は、
中心金属として、Ru、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Reか
らなる群より選択される少なくとも1つの金属を有し、配位子として、
ジイミン配位子を有する、二酸化炭素還元装置。【0082】
[3][2]に記載の二酸化炭素還元装置であって、 前記ジイミン配位
子は、電子求引性の置換基が導入されたジイミン配位子である、二酸化
炭素還元装置。【0083】
[4][3]に記載の二酸化炭素還元装置であって、 前記電子求引性の
置換基は、構造式が-COORのカルボン酸エステルであり、Rは、ア
ルキル基とピロール部位からなる化学構造を有し、前記ピロール部位は、
ポリピロール鎖により重合している、二酸化炭素還元装置。【0084】
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置であ
って、 前記触媒層は、イオン伝導体およびバインダーとなる高分子化
合物と、導電性カーボンと、を含む、二酸化炭素還元装置。【0085】
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置であ
って、 前記ガス拡散層は、疎水性多孔質カーボン基材を含む、二酸化
炭素還元装置。
【0086】
[7][1]~[6]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置であ
って、 前記アノードは、Ni、Ti、Fe、Cからなる群より選択され
る少なくとも1つの材料から構成される基材を備え、 前記基材は、多
孔体、メッシュ材、繊維焼結体からなる群より選択される少なくとも1
つの形状を有し、 前記アノードは、アノード触媒として、Ni、Fe、
Co、Mn、Ru、Irからなる群より選択される少なくとも1つの元
素を含む金属、前記金属を含む酸化物、前記金属を含む水酸化物、およ
び前記金属を含むオキシ水酸化物からなる群より選択される少なくとも
1つを含む、二酸化炭素還元装置。【0087】
[8][7]に記載の二酸化炭素還元装置であって、 前記アノードは、
前記アノード触媒として、オキシ水酸化鉄およびオキシ水酸化ニッケル
からなる群より選択される少なくとも1つを含む、二酸化炭素還元装置。
【0088】
[9][1]~[8]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置であ
って、 前記電解質溶液は、水酸化物イオン、硫酸、炭酸、リン酸、また
はホウ酸を含む、二酸化炭素還元装置。【0089】
[10][1]~[9]のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元装置と、
前記アノードおよび前記カソードに供給される電力を生成する太陽電
池セルと、を備える、人工光合成装置。
【実施例】【0090】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明
するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。【0091】
カソード触媒として下記(i)に示す化学構造のRu錯体ポリマーを
用いて、図1に示すような二酸化炭素還元装置を作製し、評価を行った。
【0092】[電極の作製]
(カソードの作製)
<Ru錯体触媒担持ガス拡散型負極の作製>
ガス拡散層としてカーボンペーパーを用い、この上に触媒である金属
錯体とイオン伝導体およびバインダーとなる高分子化合物と導電性カー
ボンとの混合物を含む触媒層を積層した。具体的には、金属錯体として
下記(i)の化学構造を有する[Ru{4,4’-di(1H-pyrr
olyl-3-propylcarbonate)-2,2’-bipy
ridine}Cl2(CO)(CH3CN)]17.1mg(0.02
44mmol)を2.55mLのアセトニトリルに溶解させ、そこに
0.5vol%ピロールのアセトニトリル溶液137μLおよび0.2
MのFeCl3エタノール溶液686μLを加えることによって、下記(
i)の構造式で表される金属錯体ポリマーの溶液を調製した。この溶液
に導電性カーボンとしてカーボンブラック(Cabot社製、Vulc
an XC-72R)を27.5mg、イオン伝導体およびバインダー
となる高分子化合物として5質量%Nafion(登録商標)117の
アルコール-水混合溶液(Aldrich社製)229.5μLを加え
た後、超音波分散を行った。この懸濁液を、基材としての1.13cm2
のマイクロポーラス層付カーボンペーパー(Avcarb社製、GDS
3250)の上に、41μL滴下し、60℃で乾燥させる操作を30回
繰り返すことによって担持した。12時間以上暗所下で静置した後、水
中で洗浄し、反応触媒であるFeCl3を除去した。【0093】
【化2】
(i)
図3実施例1、二酸化炭素電解還元電流の経時変化を示すグラフ
この項つづく
● 今日の言葉:
春が来ても、鳥たちは姿を消し鳴き声も聞こえない。
春だというのに自然は沈黙している。
レイチェル・カーソン 『沈黙の春』
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