「脚の魂がなくなった」。そう話す少年が失ったのは、歩き、走り、滑るという自由。いまは、逆境に立ち向かい、再び氷上を縦横無尽に駆ける。
大阪府東大阪市の小学4年生、岡田樹(いつき)君(10)が熱中するのは「アイススレッジホッケー」。両手のスティックでソリをこいでパックを打つ障害者スポーツだ。猛スピードで飛ぶパックをめがけ選手がぶつかり合う。
臨海ジュニアアイスホッケークラブ(大阪府高石市)で、練習する樹君は「ビューって滑って涼しい風を感じるのが楽しい」と瞳を輝かせる。
幼稚園からアイスホッケーを始めた樹君が事故にあったのは一昨年9月。母親の紅子(べにこ)さん(38)の車で練習へ向かう途中、対向車がセンターラインを越え、正面衝突した。
「ホッケーができなくなった」と感じていた樹君が、退院後、クラブの紹介で出会ったのが、アイススレッジホッケーの日本代表チームコーチだった青木栄広(よしひろ)さん(40)。青木さんは「障害を持っていることを全然見せない。あの年齢で受け止めてるあいつに惹(ひ)かれちゃったんです」と、指導を決めた理由を語る。
撮影していて感じたのは、ハンディを負っても変わらない、持ち前の朗らかさ。自宅でも学校でも、にぎやかな輪の中心にいる。車いすバスケットにも夢中で、将来の夢は、2種目でパラリンピック金メダルを獲得すること。
「iPS細胞を使って、立ちたいときに立って、オリンピックのアイスホッケーとバスケで金メダル!」
4種目の頂点に立っても、まだゴールではない。
「偉人になりたい。お札の肖像になる!!」
【岡田樹(おかだ いつき)】2005(平成17)年9月、大阪市生まれ。臨海ジュニアアイスホッケークラブ所属。14年9月、大阪府八尾市での交通事故で脊椎を損傷、下半身の自由と感覚を失う。退院後、15年5月にアイススレッジホッケーを始める。趣味は将棋。
2016.2.14 産経ニュース
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