人が操作しなくても空を飛ぶことができる性能を備えた無人小型航空機、ドローンが、ほしいものを自宅まで届けてくれる。そんな日が近づいている。外出が難しい高齢者や障害者、近所にスーパーやコンビニエンスストアがない過疎地の住民といった“買い物弱者”の問題を解決するための実証実験が各地で始まっている。誰も排除されることのないインクルーシブ社会の実現に向け、ドローンへの期待は大きい。
「ちゃんと入ってるね」
海のそばの原っぱに置かれた箱を開け、注文した洗濯用の液体洗剤、固形洗剤、洗濯ネットが入っていることを確認して、中山結さん(40)は、娘の泉ちゃん(5)と見つめ合った。箱は対岸からドローンが運んできた。
仕事を終えた機体が対岸に戻るのを見送りながら、中山さんは「こんなふうに買い物がいつでもできれば、便利になりますね」と笑った。
電子制御で機体自身が自分の位置や目的地を判断して飛行するドローンを使って買い物代行をする実験が昨年11月15日、国家戦略特区に指定されている福岡市の博多湾に浮かぶ能古島(のこのしま)で行われた。
実験はNTTドコモ、ドローンメーカーのエンルート(埼玉県)、御用聞きなどの生活支援サービスを提供するMIKAWAYA21(東京都)が実施。4年前に市街地から引っ越してきた中山さん親子と、生まれてからずっと島に住む関敏巳さん(78)が参加し、使い勝手を確かめた。
島から注文した荷物をドローンが運ぶ。2度の実験のうち1度は成功したが、もう1度は風にあおられて荷物を降ろすためのロープがドローンの回転翼にからまり失敗した。
様子を見届けた関さんは「悪天候の時にこそ頼りにしたい」と、さらなる改善を期待した。
課題は多い。天候の影響、運べる重さや距離、安全のための規制との折り合い、バッテリー、住民の警戒心…。
それでも、ドローンには官民をあげて夢を託す。安倍晋三首相は平成27年11月、閣僚や企業経営者が出席した「官民対話」の会合で、ドローンを使った荷物配送の「3年以内の実現」を表明した。
経済産業省は、買い物弱者は26年時点で全国に700万人いると推計する。高齢化、過疎化の進展でさらに増えるのは間違いない。
実験に参加したMIKAWAYA21の青木慶哉社長は「まずは第一歩。今日見た住民の笑顔を全国に広げたい」と話す。
実験は福岡市以外でも、国家戦略特区の千葉市やドローン推進室を設け、町おこしに取り組む徳島県那賀町などでも行われている。
夢も運び、多くの人の暮らしを豊かにしてくれるドローンの挑戦は、これから本格化する。
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注文を受けた荷物を載せヨットハーバーを離陸したドローンは、海の向こうの2・5キロ離れた能古島に向かった=平成28年11月、福岡市
2017.1.1 産経ニュース
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