金沢市木越町にカフェと讃岐うどんの店「ハスネテラス」がオープンして三年がたった。一見、普通の飲食店だが、スタッフの半分は障害のある人たち。工夫を凝らした料理を、少したどたどしくても心を込めて提供し、人気を呼んでいる。(小室亜希子)
毎日新メニューのランチ
ハスネテラスは二〇一四年八月、一つの建物にカフェとうどん店が同居する形でオープンした。無垢(むく)材が豊富に使われた開放的な店内。ショーケースの中のケーキは洗練され、いかにもおいしそうだ。
十七人の主に知的障害のあるスタッフに対し、健常のスタッフは十五人。調理師やパティシエとして経験豊富な、いわばプロだ。季節に応じたメニューを考え、流行の食材も積極的に取り入れる。日替わりランチは毎日新しいメニューを考え、これまで一度も同じ内容で提供したことがないというこだわりぶりだ。
「きちんと働きたい。でも働ける場所がない。そんな人たちの思いに応えたかった」。運営する「ケアパーク金沢」社長の斉藤晃宏さん(51)は話す。
斉藤さんはこれまで就労支援施設を複数手掛けてきたが、受注による仕事が中心で、外部への広がりという点でいまひとつだった。新たな施設を開くにあたり元パティシエの職員が「カフェをやりたい」と手を挙げ、これを機に調理師をハローワークなどで求人し戦力を増やしていった。
「福祉の人間が飲食をやるのではなく、雇った人に福祉を学んでもらう。よりいいものを提供すれば、お客さんが来てくれることが分かった」と斉藤さん。
売り上げは一年ごとに10%ずつ増えており、スタッフの作業工賃に反映させ、自信にもつながっているという。ともに働く調理師の猪村利恵さん(47)は「伝えたいことはゆっくり話せば、理解してもらえる。一生懸命な姿に私自身が感じるものがある」と話す。
玉川図書館の喫茶も好評
ハスネテラスは今年六月、空きになっていた金沢市玉川図書館(玉川町)の喫茶コーナーに出店し、「喫茶室ハスネカフェ」として営業している。
軽食は人気のカレーライスをはじめ、ドリアやロコモコ丼など十五種類を基本とし、日替わりランチは木越町の本店と同じで毎日新しい内容で出している。ケーキは本店でその日朝作ったものを提供。ドリンクの種類も豊富で、コーヒーにもこだわりがある。
見晴らしのいい窓辺やカウンター席で、本を手にゆっくりと食事を楽しめる。斉藤さんによると、九月からはパスタやピザもメニューに入れるという。
開放的な「ハスネテラス」のカフェスペース 6月に玉川図書館内にオープンした喫茶室ハスネカフェ
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