吉行淳之介の作品は、
こちらが思うよりも恋愛ものが少ない。
「闇のなかの祝祭」は実生活を材にした恋愛もので
「私の文学放浪」中に、
「この作品を書くために、……中略……わたしの実生活から持ってきたことは
失策だったかもしれない。
しかし、自分の掌で掴んでたしかめた体温の残っている材料に対する未練が、
作家として捨てきれなかった」
と書いている。
女優と家庭のはざまで「死んだらラクになるとしばしば思う」
切羽つまった状況が描かれている。
体温の残っている材料だからこそ、胸に響く作品なのだと納得。