風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

挨拶

2010-07-28 17:22:09 | ほのぼの
近所の顔見知りに出会った。
それほど親しい相手ではない。
お久しぶり……、と決まり文句を口にした。

こちらと同年輩の相手は、
「賢そうでなにより」と思いがけない挨拶を返してきた。
お元気そうでなにより、というのはよく使うが、賢そうで、という挨拶は初めてである。
え! っと一瞬つまった。すぐに彼女の言葉続いた。
「このごろ、物忘れはするし、判断力は衰えるし」
と自分の頭脳の衰えを訴えはじめた。
 それで、なんとなく、さきほどの「賢そうで……」に納得がいった。別に、本気でこちらを賢いとみているわけではないのだ。
お互いに齢をとったけど、あなたはまだ正常なようね、というくらいのことらしい。

 思えば、挨拶言葉というのは変なのが沢山ある。
お暑いですね、お寒いですねと、かんかん照りや空っ風の日にわざわざ言わないでも分かり切ったことである。
 あら、お出かけですか……、などというのも、お節介きわまりない。
お元気そうでだって、見た目でどうしてわかるか! ってもんだ。
 しかし、雨のあと、よいお湿りで……などというのは、なかなかおつなものである。
お天気はおよそ農耕民族だったころのみんなの関心事だったはずである。
 そうしてみると、このごろ年寄りが増えたのだから、「お賢そうで……」などというのも、案外おかしくない挨拶ということになるのかもしれない。


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1 コメント

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笑いました (nampoo)
2010-07-28 22:24:31
風子さんのエッセイは思わず、笑い出すのが多々ありますが、
今回も思わず笑ってしまいました。
「賢そう・・・」とてもユニークです。
季節の挨拶は、ときどき言わずもがなと思いつつ、
仕方なく言ってますものね。
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