風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

物忘れ

2011-03-05 10:08:02 | 口は災いのもと

 人の名前、場所の名前、あらゆる名称がすぐに出てこない。
すわっ、ボケがはじまったか! と戦々恐々の日々である。

 先日も、友だちと話していて、昔、近所に住んでいた人の名前が思い出せない。

「ほら、公園から数えて三軒目の家よ」
「ええと……」
 まだ顔も名前も思い出せない。
「ご主人が浮気をしたお宅よ」
「ああ、あの家ね」

 ここでにわかに記憶が鮮明になる。
「そうそう、奥さんが、相手の女性に慰謝料を請求して評判になったよね」
「100万円払わせて、うちの主人の値打ちはたったの100万円だったのって自分で言いふらしたって話だったよね」

 名前は忘れても、この手の話は忘れないものである。
100万円の金額まで覚えているのだからたいしたものである。

 ついに名前は出てこなかったが、物事の核心部分だけは記憶しているからまだ大丈夫だろうと安堵した。



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