本を読むのも新聞を読むのも好きである。
常に目の前に紙類を置く。
食事中でも何かが手もとにないと寂しい。悪癖である。
活字は映像よりも想像力が膨らむ。
なにもなければとりあえずチラシの類でもかまわない。
マンションの間取りを見ながら、ここにパソコンを置いて、
ここに観葉植物を並べて、
孫たちが来たらここに寝かせてと想像するのは楽しい。
求人案内のチラシでは時給を確認する。
ふうん、850円で午前中だけ3時間働いたらいくらになるかなあ。
自転車を買い替えたいなあ。
こうして、チラシを眺めているだけで時は過ぎて行く。
そうして、はっと我に返る、風子はすでに80歳になっている。
もうマンションを買える年齢でも
スーパーのレジ係、マンションの管理人、どれも出来ない。
介護士、看護師さんたちには……、お世話になる側にいる。
自転車なんぞ買い替えるどころか乗るのは危険である。
それでも、想像の世界で遊ばせてもらえるのは
活字と紙類のおかげである。
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