風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

後悔のかずかず

2018-04-05 10:13:36 | 日記

 振り返れば、後悔はかぎりなくあるけれど、

なかでも、悔やまれるのが子育てである。

 ふたりの息子は今やすっかりオッサンになったが、

それぞれ穏やかに暮らしている。

親としてとくに不満はないが、思うことはいくらもある。

 男性だから、仕方がないとしても、まず無口である。

花をめでる、星を見つめる……という人生を楽しむすべを持たない。

 それが不満なのではない。

もっと楽しく生きられたほうがらくだろうと案ずる親心である。

 

 風子は子供たちを産むころ、体調がすぐれず、

入院していて、ほとんど寝たきりで産んだ。

だから、胎教というものまで気がまわらなかった。

世間と隔絶して病院の天井ばかり見ていたのだから、

胎教どころではなかった。

 すまなかったなあ。

 大きなお腹で野山のスミレを眺め、桜を見上げ、元気な笑い声をあげて走り、

バッハやビートルズや北島三郎や、幅広い音楽を胎児に聴かせ……、

ああ、あれもこれも、しておけばよかったかなあ。

 80歳になるおばあさんは、いまさら悔やんでもせんないことを、

心のなかでしきりに詫びながら、

息子とふたり、食事中なのである

 

 

 

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