振り返れば、後悔はかぎりなくあるけれど、
なかでも、悔やまれるのが子育てである。
ふたりの息子は今やすっかりオッサンになったが、
それぞれ穏やかに暮らしている。
親としてとくに不満はないが、思うことはいくらもある。
男性だから、仕方がないとしても、まず無口である。
花をめでる、星を見つめる……という人生を楽しむすべを持たない。
それが不満なのではない。
もっと楽しく生きられたほうがらくだろうと案ずる親心である。
風子は子供たちを産むころ、体調がすぐれず、
入院していて、ほとんど寝たきりで産んだ。
だから、胎教というものまで気がまわらなかった。
世間と隔絶して病院の天井ばかり見ていたのだから、
胎教どころではなかった。
すまなかったなあ。
大きなお腹で野山のスミレを眺め、桜を見上げ、元気な笑い声をあげて走り、
バッハやビートルズや北島三郎や、幅広い音楽を胎児に聴かせ……、
ああ、あれもこれも、しておけばよかったかなあ。
80歳になるおばあさんは、いまさら悔やんでもせんないことを、
心のなかでしきりに詫びながら、
息子とふたり、食事中なのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます