風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

「昔日の客」 関口良雄

2015-01-08 11:05:39 | 読書

平成22年、名著復刊で、32年ぶりの復刊。

大森馬込の古本屋さんが

正宗白鳥、尾崎士朗、尾崎一雄、上林暁、野呂邦暢、多くの文学者との交流や

日々の思いを綴っている。

「本」に寄せる著者のその思いの篤さが読んでいて心地よく伝わる。

 

 上林暁を初めて訪ねたとき、署名を願ったら、

「本を愛する人に悪人はいない」と書いてくれたとある。

 

 尾崎士朗が危篤になり、

「おれの好きだった歌を唄ってくれ」と言うので

誰からともなく「桜井の駅」が歌われたが、実は彼が歌ってほしかったのは

「白虎隊の歌」だったとか。笑いもいっぱい。

 

 「虫のいどころ」には、声を出して笑った。

厠の5燭の電燈を消されたことからの夫婦喧嘩の顛末。

5燭とは懐かしい。

 

30数年前に書かれた本が、今読んでも少しも古びていないどころか

心にのこる「昔日の客」だった。

      夏葉社   2200円