一人では外食ができないという女性はわりに多い。
風子は、わりに平気である。
平気ではあるが、一人のときは、蕎麦屋とかちょっとしたランチの店とかを選ぶ。
どちらかといえばラーメン店は、バアサン一人では入りにくい。
今日、ひる少し前、通りがかったラーメン店の扉を開けた。
早かったのか、まだ客は誰もいない。
いらっしゃい、とこちらを見たカウンターのオッサンは
「うちはね、超濃厚こってりとんこつ味ですが大丈夫?」
にこりともしない。
いけませんか? と訊いた。
「いけなかないけど、超濃厚こってりだよ」
こういう親父さんを風子は案外好きなのである。
「かまいません」
「薄めましょうか」
「大丈夫です」となんだか、悲壮なラーメン注文となったが、
結果は、親父さんが言うほど濃厚でもこってりでもなかった。