家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

「緑のオーナー制度」のしょうもなさ

2007年08月08日 | 山小屋・ログハウス
数日前の話題だが…
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「緑のオーナー制度」9割元本割れ、林野庁リスク説明せず
8月4日0時32分配信 読売新聞
国有林のスギ、ヒノキの育成に出資して伐採時に配分金を受け取る林野庁の「緑のオーナー(分収育林)制度」を巡り、満期を迎えた個人、団体の契約1万件のうち9割以上が契約時の払込額を下回る「元本割れ」となっていることがわかった。
 同庁では年3%の利回りを想定していたが、輸入木材に押され、国産木材の価格が低迷しており、今後満期を迎える約7万6000件についても、見通しが立っていない。
 公募当初、同庁は、金融商品ではないなどとして元本割れのリスクは説明していなかった。
 同制度は1口50万円か25万円を出して国有林の樹木の共有者となり、満期(最短で15年)を迎えた後に伐採、販売代金を配分する。公募は1984~98年度に行われ、個人・団体から計約8万6000件の出資で約500億円を調達した。
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国がやる商売はなんともずさんである。
今回もそれを証明してしまった。

この件につき、いろいろ考えてみた。
私はそもそも、この制度が出てきたとき、元本保証でないことは明らかだと直感的に思った。いわば「立木の先物買い」なのだから元本が保証できるわけはないのだ。半ば寄付感覚で参加するものかとも思ったが、今回の問題化でそういう人ばかりではなかったことが分かった。
「緑のオーナー制度」を利殖手段として提供したというならば、まさにずさんだ。国がやる事業だから安心だ、というような思わせぶりな広報をしていたとしたら一層罪深い。
マスコミもいまになって騒いでいるが、発足当時、なぜリスクについて突っ込まなかったのかを批判したい。「緑の」という耳障りの良い言葉のせいか、むしろ好意的記事が目立っていたと記憶している。
これは前述したように「先物買い」なのである。しかも転売も途中解約もできないリスクの高さ。素人の利殖手段として適しているはずがない。そんなことも見抜けなかった記者のことを考えると、やっぱり「投資教育」は必要だなあと思う。林野庁は糾弾されるべきだが、マスコミ自身も反省を要する。

さて、私は「緑のオーナー制度」には参加しなかったが、数年前に小面積ながらも山林は購入している。そして、山林を購入してよかったと思っている。その違いは何か。
そもそも山林購入はログハウスをセルフビルドするための土地と材を調達するのが目的。
立木を自家消費したことで、一般の市場価格より安く仕入れることができた(※注)という満足感がある。
山林購入ならば、どの木が自分のものかわからないような制度と違って、リアルに自分の木を実感できる。山林としては狭いが宅地に比べたらかなり広い面積を相当に安い値段で占有できることも、そこはかとなくうれしい(笑)。
また、満期などというものが存在しないので、残った立木はいつでも処分できる。いつでも処分できるのであれば、株式よろしく「塩漬け」で持ち続けることも可能だ。もちろん将来はリカバリーするという根拠の無い「夢」を持ちながら…(笑)。
満期があるとその時点で清算することになり、取引価格が値下がりしていたら確実に売却損が発生する。

今にして思えば、緑のオーナー制度もしっかり証券化して金融商品にするべきだったろう。
せめてクローズド期間(例えば5年)のようなものを設けておいて、期間開けに現金で清算する以外に、立木のまま持ち続けることや、現物(伐採した丸太)での受け渡し(現渡し)を認めればよかったのではないか。
持ち続ければ含み損はあるが前述した「塩漬け」で気分的に楽になれる。
現物での受け渡しを認めるのならば、我が家が自家消費したようにこれから家を建てる人が木材を施主支給する、なんてこともできたかもしれない。自前の木で家を建てるなんてそれはそれでちょっとロマンもある(関連エントリ→)。

この制度が発足してから、材木価格は下がり続けていた
結果的に儲けるチャンスはなかったと言える。ところがここへきて徐々に潮目が変わってきている。国際的に資材の価格が上昇しているからだ。
国産木材の上昇がすぐに本格化するとまでは思わないが、儲けようとしたらこれからかもしれない。しかし、これまでの緑のオーナーは最安値近辺で無理やり清算させられる。ここからさらに新規購入する気力もおきまい。投資家層の育成をむしろ大きく阻害したわけで、つくづく林野庁はしょうがないことをしでかしたとしか言いようがない。

これから仕切り直すなら、しっかり証券化した上で、CO2排出権ビジネス(この場合はCO2吸収源ビジネスか)、税制優遇などと絡めて魅力的な金融商品に組み立てるようなことをしてほしい。それはそれで林野庁の手に負えるものではなく、金融庁から国税庁、政府、はては京都議定書を管轄する国連まで巻き込んで調整する必要があり、実現させるには相当な労力がいりそうだ。

林野庁はとりあえず、「緑のオーナー」などというまどろっこしいことをあきらめて単に国有林を売るのがいいかもしれない。伐採と転売に関するルールを定め、管理コストを林野庁に支払うことを条件にして。
そうなればできれば販売代理店をやらせてもらいたいくらいである。個人から見た山林の魅力を知っているから、いいセールスマンになる自信がある(笑)。
私に貯金ができれば購入する気もある。それどころか年をとって死にそうになったらそれまでに貯まった財産の大半を国有林購入に充ててもいいくらいだ。他の資産より相続税は安くあげられそうだし、「子孫に美林を残す」なんてかっこいいじゃないか。


(※注)ただし購入後、伐採に時間を要し、さらに1年は乾燥のために寝かせていたため、その間の値下がりはある。結果的にどの程度コストが安くなったのかは検証していない。


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3 コメント

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緑のオーナー (aiai)
2007-08-09 21:58:48
顧客にリスクを説明せず、商品の価値を高める努力もろくにせず林野庁、国には本当にあきれますね。ひょっとして予見できなかったのでなく、確信的犯行だったのかも。
特権的で投機的な香りのする「緑のオーナー」ではなく「緑の支援者」と「緑の守護神」かのネーミングにすれば、元本割れしても納豆するお客さんが集まったのかもしれないですね。
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まったく (garaika)
2007-08-11 11:54:48
林野庁といい、社保庁といい、公務員というものはまったく人のカネをなんだと思っているのか、という感じです。
一度、シビアな民間の現場で修行させてから、お金を扱うセクションにつけるべきです。

それはそれで「納豆する」とはかわいい誤字(笑)。
お腹すいてましたか?
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はい (aiai)
2007-08-12 10:59:28
お腹すいてた上に酔っぱらってました(笑)
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