家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

「新しさ」の陳腐化

2007年07月24日 | 家について思ったことなど
新製品はその「新しさ」においてまもなく陳腐化する。
これまでにない機能、これまでにないデザインのモノが世に出たとして、その「新しさ」が評価される時間は短い。PCなどハイテク機器の周辺を眺めてみればすぐ分かる。
ハイテク機器はともかく、家のように長い期間使うものは、その時点での新しさにあんまりとらわれすぎない方がいいと思う。「新しい機能」「新しいデザイン」が気に入っていたとしても、その新しいこと自体に満足できる期間はすぐに終わるからだ。
機能にしろ、デザインにしろ、それが新しくとも、新しさという点ばかりに目を向けず、「確かさ」とか「普遍性」というような観点で見つめた方がいい。機能やデザインが長い期間にわたって評価され続ける場合、それは「新しさ」という評価軸から離れてみてもなおかつ価値があるときだ。

新しさに価値判断のウエートを置きすぎると、計画的陳腐化戦略の罠にはまりやすくなるということもある。

***********************************************************
「計画的陳腐化」 (「Marketing Square」の「ワードファイル」より)

プロダクト・ライフサイクルを短縮し、主に新製品の購買促進を目的として企業が行なう戦略のこと。
物理的陳腐化,心理的陳腐化,機能的陳腐化の3種類がある。
物理的陳腐化は、製品の部品ないしは製品全体を一定の時期が来ると老朽化するように意図的に組み立てるものである。
心理的陳腐化とは、製品またはパッケージのデザインを変えることで、消費者にそれを所有することが「新鮮である」と感じさせることで購買を促すものである。最近ではソニー「プレイステイション2」や日産「フェアレディZ」がその代表例となる。高価格の製品でよく用いられる。
機能的陳腐化とは、製品の機能をグレードアップすることで、新製品への買い換え需要を促進するものである。マイクロソフトの「Windows」「Office」やインテルの「pentium」などPC関連機器でよく用いられる
***********************************************************

住宅において、もし上記3種のうちの物理的陳腐化策をとっていたらそれは欠陥住宅に近しいと判断すべきであろう。 さすがにそこまでの愚劣な商品戦略をとる住宅業者は少ないだろうが、水準の高い住宅を作る業者でも、新しい機軸の住宅を売り出そうとすれば自然に「心理的」ないし「機能的」な計画的陳腐化策に似た行動をすることになる。
そう考えると、「新製品」を次々と打ち出すハウスメーカーの存在が日本の住宅の短命さに少なからず影響しているようにも見えてくる。
施主としてはこうした業界の動きにまどわされるのは損だ。だから「新しさ」を観点とした評価はほどほどにしておいたほうがいい。
新しいものを評価するなということではない。新技術がその後の本流となることは少なくないからだ。新しいものを「新しい」ことばかりに着目して選択すると、遠くない将来その価値にありがたみを感じられなくなり、別の新しいものの方がよく見えてしまうことに気をつけたいということ。それは、まだ使えるものをゴミ化する方向に働く。
貧乏性の私の発想としては、現在新しいものが将来新しくなくなったらどうなるのかということに想像をめぐらすこと、そして「古い」ことの良さが分かって「古さ」を満足できる価値観を持つこと、が長い目で見て得なことだと思うのだ。