アンテナ

少し前に書いた「秒速５センチメートル」の評価をネット上で見たら、
賞賛する意見がある一方、コテンパンにこき下ろす意見も少なからず見られ、
少しショックを受けた。

私は、人間には、それぞれ異なる見えないアンテナがついていると思っている。

鹿の角のように強くて太いアンテナがついている人もいれば、
ミジンコのうぶ毛のように細かいアンテナがついている人もいる。

当然、それぞれがキャッチできる情報も異なっている。

何に感動するか、何をよいと思うかは、人によって違うということだ。

そして、大切なのは、自分のアンテナでキャッチできなかったことを、
価値のないものと決めつけないことだと思う。

アンテナの種類に違いはあるけれど、優劣はないからだ。

また、一人の人間が、全てのアンテナを備えることもできないように思う。
どうしても自分にはよさが分からないものが、世の中にはあるものだ。

私にも随分、そういうものがあった。
他の人が熱狂しているのに、自分にはそのよさが分からないと、寂しい気持ちになる。
自分がおかしいのではと思ったこともあった。

でも、それは、仕方のないことなのだ。

さらに、このアンテナは、歳を経ると変わってくることもある。
若い頃は刺激の強いものしかキャッチできなくても、
歳をとるにつれて奥深い滋味が味わえるようになることもあるだろう。

これは、生きていて楽しいと思えることの一つだ。

色々と書いたけど、自分にはよさの分からないものに出会ったときは、
自分には感知しえない未知の世界があるんだなと思って
触れずにそっととっておくのがいいんじゃないかと思う。
将来、そのよさが分かるときが
もしかしたら来るかもしれないから。





　
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