北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「父のこと(吉田健一著・中公文庫2017刊/1956他版の文庫化)」を読んだ。吉田健一(よしだけんいち1912~1977)氏は、ケンブリッジ大学中退で、英仏文学の翻訳、文藝批評などで活躍した。吉田茂元首相の長男であり、“父”とは、勿論、吉田茂(1878~1967)のことである。-----
「父のこと」の大部を占める“大磯清談”は吉田茂VS吉田健一の親子対談である。それが時を経て読むととても味わい深くて、上質な読み物となっているのが分かる。収録されたのは昭和31年(1956)のことで、戦後日本もかなり落ち着いた頃であり、吉田茂氏は既に首相(1946~1947、1948~1954)を辞して、2年後であり、1963年に政界を引退するまで、隠然たる影響力を持っていた。-----
吉田茂の外務官僚としての一線からの左遷/退職(1939)、更に、前妻・吉田雪子の逝去(1941)と、戦時中(1941~1945)は吉田茂の不遇の時代であった。長男の吉田健一氏としては、後妻の吉田喜代子(99歳にて2003没)さんが気に入らなかったことだろう。実母・吉田雪子の没後、吉田健一氏は結婚(1941)している。-----
「父のこと」は吉田親子の激動の時代が過ぎた時に、対談されているので、安心して読める。そして、父親・吉田茂氏が息子・吉田健一氏の文筆活動の足しになるように協力したのであることが、端々に分かるのである。本当にとても吉田茂氏親子の愛情あふれる遣り取りが記されていて、人生の必読の書の一つだと思った。
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