北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「食の実験場アメリカ~ファーストフード帝国のゆくえ(鈴木透著・中公新書2019刊)」を読んだ。鈴木透(すずきとおる1964生れ)氏は、慶應大学(文学部)卒、同大学院博士課程修了、現在は慶應大学(法学部)教授である。専攻はアメリカ文化、現代アメリカ論とのこと。-----
小学1年生のとき、父親の留学に際してアメリカに在住したそうである。研究対象をアメリカにしてきたのはその所為であろうと書いている。-----
アメリカの歴史に沿って、白人入植者の時代、後年の産業化の時代、そしてファーストフード帝国の時代と、大きく3つの時代に区分して、それぞれの時代の食について、日本人には馴染みの少ないアメリカ草創期からの食の概要を分かり易く書き出してくれている。先住インディアンから食糧を分けて貰っていた初期、黒人奴隷の食文化の流入、産業化社会の進展による自由時間の減少とその間に合わせのホットドッグなどの普及、そして更なる標準化としてファーストフードが出現し現在に至るまでを解説しているのだ。-----
ファーストフードは格差社会にも適合するのだが、肥満問題が顕在化したりして、未来志向から考えるともっと豊かな食文化に成長して欲しいと鈴木透氏はアメリカに期待を示している。日本などはアメリカの風下にいて、アメリカが変わらなければ動きようが無い状態なのだと、悲観的である。無形文化遺産の“和食”についての言及は一言もなかった。アメリカの話だから仕方がないが少し残念である。