北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「すべて忘れて生きていく(北大路公子著・PHP文芸文庫2018刊)」を読んだ。北大路公子(きたおおじきみこ1963生れ)女史は、北海道/札幌生まれで、関西の大学で日本文学を専攻し7年滞在したが、以降、札幌でエッセイスト、小説家として活動している。------
「すべて忘れて生きていく」は、北大路公子女史が彼方此方の雑誌などに掲載された近年の記事(エッセイ)を纏めて、さらに短編小説2編を併載して文庫化されたものである。携帯しやすく、どこから読んでも面白い。女性特有の脱力系のエッセイであり、力む必要もなく知らず知らず不思議な世界に引き込まれるのである。相撲のエッセイは纏めて1章になっていて、これも編集者の工夫だろう。とても短いエッセイが多くて、意味を探るには2度読みが必要な処もあるが、分からなければ飛ばしても気にならない。-----
北大路公子女史がお酒を嗜まれるところは北の大地で暮らすには避けて通れないのだろうと、これも納得である。とても気分よく旨そうにお飲みになるので読んでいても楽しいお酒である。-----
タイトルの「すべて忘れて生きていく」はあとがきを読むと分かるが、“すべて忘れて死んでいく”だったそうだが、多分出版社が心得ていて書き換えたに違いない。田辺聖子(1928~2019)女史が他界されたが、この穴埋めが出来る実力派のエッセイストの一人だろうと思った。