奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1105)

2019-09-03 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「旅のモザイク(澁澤龍彦著・河出文庫2002刊/1976版の文庫化)」を読んだ。澁澤龍彦(しぶさわたつひこ1928~1987)氏は、東大(仏文科)卒で、マルキドサドの著作を日本に紹介した。人間精神/文明の暗黒面に光を当てる多彩なエッセイや小説を書き広く読まれた。-----

「旅のモザイク」は、決して旅好きではなかった澁澤龍彦氏が、初めて書いた旅の本であるとのこと。3章構成で、“ぺトラとフローラ(文芸展望1975冬季号)”、“千夜一夜物語紀行(太陽1971.12)”、“日本列島南から北へ(旅1975.1~4)”が初出だそうである。ぺトラとフローラは南イタリア旅行、千夜一夜物語紀行は中近東への旅、日本列島南から北へは沖縄/珊瑚礁、熊本/火の山、風と光と影/青森、流氷/北海道である。-----

単なる旅行ガイドとは異なり、広く深い教養をお持ちの澁澤龍彦氏らしい旅の印象が克明に読者も実際に旅して共に感動してしまいそうな文面で旅の現地に誘い込んでくれるのである。このような文筆力を持った作家は数少ないのではないだろうか。イラク/イランへの旅などは今では外務省から渡航を禁じられているような地域であり、良い時代に澁澤龍彦氏は出掛けられたのである。また、南イタリアの旅も、ローマやフィレンツェやヴェネツィアなどのメジャーな地域ではなくて、ローカルなそれでいてとても興味津々な地方を探訪しているのである。また、日本でも珊瑚礁と阿蘇山と流氷はメジャーかも知れないが、竜飛岬の強風を物ともせずに訪れている処などはご愛嬌なのである。4半世紀経っても価値ありとして出版社が文庫化したのは正しいようだ。

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