奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その274)

2017-05-25 00:53:15 | 奈良・不比等
「ゴリラは戦わない~平和主義・家族愛・楽天的(山極壽一・小菅正夫共著・中公新書ラクレ2017刊)」を読んだ。------
山極壽一(やまぎわじゅいち1952生れ)氏は京都大学総長であり霊長類学を専攻され野生のゴリラの生態研究の第一人者である。小菅正夫(こすげまさお1948生れ)氏は北海道大学獣医学部卒で旭川市旭山動物園・園長として動物園の再建に尽力された事績は有名である。------
猿学から見ると、人間社会はゴリラではなくてチンパンジーやニホンザルの社会に似ているそうだ。そしてゴリラは人間よりも思慮深く賢いと云う。同じ霊長類でもゴリラは慎重でありチンパンジーは若干軽率で初めてのことでも軽くトライするそうである。人間の「種の起源」を考えるときどうやら遺伝距離はゴリラ属よりもチンパンジー属に近いのかも知れない。------
山極壽一氏は「京都大学霊長類研究所・(財)日本モンキーセンター」でも職務経歴があり、アフリカのゴリラ研究と合わせて霊長類学の重鎮であり日本だけでなく国際霊長類学会の会長を務めておられる。------
数学界では「直ぐには社会の役に立たない数学」という評価が数学者への褒め言葉であるように、「人類学・霊長類学」の生態研究の成果は人間社会にどのように役立てられるのかといった些末(さまつ)な物言いは相応しくない。-----
一方、小菅正夫氏は旭山動物園を日本一入場者の多い動物園にするため、集客のための様々な工夫を自ら編み出し実施して閉園の危機を救った方であり、山極壽一氏の学問の極みと動物園ビジネスの泥臭さを対比することになるので、対談しても議論が噛み合わないのではと思ったが、年齢は上の小菅正夫氏の方が山極壽一氏を「師と仰いでいる」と云っているように、動物園の振興策に山極壽一の著書を参考にしたことが数知れないとのこと。-----
飼われている動物も幸せな動物園でなければ入場者も楽しくないとの考え方は動物学の学問の極みのエッセンス(野生の生態研究)が動物園ビジネスに繋がることが実証されたと云えるのでしょう。------
奈良県には「あやめ池遊園」も「ドリームランド」も閉園されてしまい、奈良公園の鹿は別格として、一般的な動物と触れ合える施設は「宇陀アニマルパーク」になるのだが、奈良県民にとっては大切な公的施設としてその存在価値は益々高まることだろう。
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