劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立の「ドン・パスクワーレ」

2024-02-05 13:24:30 | オペラ
2月4日(土)の昼に新国立劇場でドニゼッティのオペラ「ドン・パスクワーレ」を見る。14時開演で、25分間の休憩を挟み、終演は16時40分頃。公演回数は3回と少なめだが、客の入りは8~9割で満席とはいかなかった。喜劇調の面白いオペラで、演出も昔からのオーソドックスなものなので、もっと入ってもよさそうだが、知名度が低いオペラだと、動員しにくいようだ。

話は、若い娘と結婚しようという金持ちの老人を凝らしめるため、貞淑でうぶな娘と見せかけて、結婚するやわがままで浪費家の妻に大変身して男を慌てさせるというたわいないもの。見ていると、登場人物はイタリアの古い即興劇ドメディアデッラルテの典型的なキャラクターと気付く。金持ちの老人役はパンタローネでバス。これをたぶらかす若い娘はコロンビーナでソプラノという具合だ。懲らしめるためにいろいろと仕組んで、若い恋人たちを結び付けるのはドットーレ(バリトン)となる。

現代の視点で見ると、「老人虐め劇」とか「頂き女子劇」のようにも見えるが、紳士面の下に好色さを持つ男性や、優しいように見えて実は意地悪だという女性の本性を描いているところが、現在の目で見ても面白く感じる。

美術や衣装、演出はずいぶん昔に製作されて、好評なので引き継がれてきたものだけあって、見ていて退屈しなかった。

加えて歌手陣も、今回の舞台は充実している。主演の老人役のミケーレ・ペルトゥーシはベテランのバスで、最も充実した歌唱を聴かせた。若い娘役のラヴィニア・ビーニはイタリアの新進のソプラノで、美しく力強い歌唱だった。老人の甥で若い娘との結婚を望んでいるテノールはファン・フランシスコ・ガテルで、リリックで美しい声。力強くはないが、役にあった声だった。日本人では医者役の上江隼人がバリトンで歌い、外国勢に負けない歌を披露した。

オーケストラはレナート・バルサドンナ指揮の東京交響楽団で、これも充実。とても充実して面白い舞台なので、もっと観客が入ればよいのにと残念に思った。

家に帰って食事。サラダ、ビーフのトマト煮込み、キーマ・カレー。ペールエールを飲む。