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クセジュの「シェイクスピアとエリザベス朝演劇」

2017-10-14 13:15:03 | 読書
白水社のクセジュ文庫で出ている「シェイクスピアとエリザベス朝演劇」を読む。新書で150ページほどの分量なので、簡単に読める。翻訳本の出版は1964年だが、原著も1964年の出版のようだ。クセジュだから当然ではあるが、著者はフランス人で、フランスの読者向けの内容となっている。

シェイクスピアなのだから、英国の本で読めばよさそうだが、簡便にまとまっているようなので、フランスから見たシェイクスピア像にも興味があり、読んでみた。フランスの立場としては、当然にフランス古典演劇との対比の上でのシェイクスピア像となる。

英国における王の正当性の争いは長く続き、血なまぐさい争いが多かったので、エリザベス朝演劇にしても当然にそうした内容となっていて、そこがフランスの演劇とは大きく異なるが、英国演劇の三一致の法則にとらわれない自由奔放さも、フランス人から見ると大きな特徴のようだ。

もう一つ、エリザベス朝で開花した演劇は、特にシェイクスピアの場合には時のエリザベスに気に入られるように書かれていたらしい、ということがこの本を読むとよくわかる。

この本の中では、エリザベス朝演劇が扱った演劇のジャンルとその背景の説明、シェイクスピアの先駆者たちの説明、シェイクスピアについては、喜劇、歴史劇(年代記)、ローマ劇、四大悲劇に分類した説明がある。こうした分類はオーソドックスだが判りやすい。

最後に、ジョン・フォードに代表される、シェイクスピア後の話が出てきて、またしても血なまぐさく、異常な演劇の紹介と、清教徒のそれに対する反撥とをあげて、エリザベス朝演劇の終焉を説明している。

短く簡潔にこの時代の演劇を説明しているという点では、判りやすい本で、お勧めできる。