大自然とともに、
宇宙と会話し、
心身のバランスも完璧に取れて、
一人でいることを十分に満喫した仙人が、
なんと、人里に下りてきたの。
今度は、人と一緒にいたい、と思った。
そして、自分が仙人であることをすっかり忘れた。
仙人には、
普通の人の気持ちが分からない。
だから、心に浮かぶ本当を言うと、
KY呼ばわりされたり、
言葉がきついと、言われてしまう。
それに、仙人の、穏やかに晴れ渡る空のような心持ちと違い、
人は感情の揺れが激しくて、
仙人は、そのアップダウンをもろに感じて、
一緒になって、揺れ動くから、
人と一緒にいると、ものすごく、疲れるの。
山の中では、すべてが自分だっから、
誰かに何かを伝えるなんて必要がなかったから、
思いを表す、なんてことも、よく分からない。
「どうして、もっと、楽に人といられないんだろう。」
仙人は、苦しくてしかたない。
でも、ひとりでいたいわけじゃない。
そんなの、たくさん、やってきたから。
目の前で、女の子の皮をかぶった仙人が、そんなふうに話して、
ぽろぽろと涙を流すものだから、
私は、少しかわいそうに思い、何とかポジティブを探そうなどとする。
でも、その無駄な努力は、
ことごとく、圧倒的なネガティブに打ち砕かれる
とうとう、私は、続けていた悪あがきをやめて、
ネガティブを受け容れる
どうにかしようとせずに、
仙人の涙の美しさにみとれる
すると、どこかで、反転が起こる。
仙人は、仙人であることを否定して、
人間の作法で自分を染めようとするからつらい。
仙人はひとになるために人里に下りてきたのではなくて、
ひとを仙人化するためでもなくて、
仙人のままでひとを知ることを経験したいんだ。
「変わっている」自分のままで、
「普通」の人たちと一緒にいられる情景は、
かなり長い年月をかけて取り組むプロジェクトだと判明し、
でも、未来に、確かに、そのヴィジョンを置いた。
いいじゃない、
先は見えた。
季節は春。
嫌でも新しい何かが展開していく。
心情を吐露して、泣いて、
すっきりして去った仙人は、
またひとつ、ひととしての経験を、重ねたんだね
Things will be only better