2013年下半期第150回直木賞受賞作。
「パピルス」誌第36~55号連載、307頁。
昭和30年代生まれの女性と、彼女に縁のあった犬たちとの物語。
シベリア帰りの父と養護教員の母という子育て放棄の両親の元、いつも身近にいた「犬」こそ、人生を共に歩むかけがえのない存在であった。
その犬たちも時代とともに変わるが、彼女の変わらぬ愛情はどの犬にも受け入れられ、それが彼女の励みともなった。
随所に出てくる昭和の風俗が何とも懐かしい。身をもって昭和を生きた小生らにとって、これ以上の贈り物はない。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)
選者評:浅田次郎氏
「同氏は、まこと頑迷に孤高に天賦の才を磨き続けた結果、ついに「昭和の犬」という傑作を書き上げた。読後おそらくすべての人が感ずるにちがいない、青空を見上げるような清潔感は、作者の品性そのものであろうと思う。かくも独自の手法を貫いて、なおかつこうした普遍の感動を喚起せしめることは奇跡と言ってもよい。」