日本にいると“rape”という言葉をよく耳にしたり目にしますが、アメリカでは日本のように見聞きしません。
僕が初めてこの言葉を聞いたのは1976年、映画「リップスティック」の公開によってでした。ミッシェル・ポルナレフが映画音楽を担当し、アーネスト・ヘミングウエイの孫で女優のマーゴ・ヘミングウエイとマリエル・ヘミングウエイが姉妹共演すると話題になりました。それで口紅業界の映画か、恋愛映画かと思っていたら、レイプをテーマとした社会派映画でした。この頃から暫く、“rape”という言葉がいろんなマスコミ媒体で使われるようになりました。
しかしながら、“rape”というのは「強姦」の意味です。日本ではそういう被害に遭われた方について、ニュースでも「強姦」されたとは言いません。被害者に配慮して「婦女暴行」という言葉を使います。再犯率の高い性犯罪に関する言葉は、使う際には要注意だと思います。
ところが最近はネットにおいては、“rape”という言葉をよく見かけるようになりました。昔に比べ、日本に滞在する外国人も増えています。(コロナで観光客は減少していますが)英語圏の人がこの言葉を聞いたら、あまりよい気持ちはしないと思います。エゲツない表現ですから。
だから、それに代わり英語では、“assault”つまり「暴行」という意味の(アソールト)と発音するこの単語を使います。この単語を辞書で調べて、他にも「攻撃」とかいろいろな意味が書いていますが、この単語が使われる時の意味は、一般的には“rape”以外の何物でもありません。
こういう言葉を“weasel words”、イタチ言葉と呼びます。そのものズバリを言い表さない曖昧な言葉という意味です。
後期高齢者医療制度を長寿医療制度と言うのもそうだし、「認知症」という言葉もそうです。
英語では“handicapped” という言葉も“challenged”と今では言い換えられています。
言い換えられた言葉も、それが定着して悪いイメージで使われると、結局また言い換えをしなくてはならなくなります。1番大切なのは、言葉を使う人の気持ちだと思います。