うるおいの木かげ道路かあ。
うるおいの木かげだらけの映画を最近観たな。
「湖のほとりで」でしょ。
美しい山々に囲まれた北イタリアの湖岸で起きる殺人事件。
「レイクサイド・マーダー・ケース」イタリア版といったところね。
その謎を追うのは、頭の禿げた老練な刑事。渋いコートをまとってひとり敢然と、おどろくべき謎に挑む。
ってあなたが紹介すると、なんか浮ついて、火曜サスペンス劇場の老人版みたいだけど、見所はこの田舎町に暮らす人々の複雑に入り乱れた思い。
みんなが胸に一物を持っていて、誰もが怪しい。果たして、時間内に事件は解決するのか。
って紹介すると、やっぱり火曜サスペンス劇場みたいだけど、実は一級のヒューマン・ドラマ。
わかった。じゃあ、こういう紹介の仕方はどうだ。「事件を通して浮かび上がってくるのは、謎解きの醍醐味以上に、人々の秘めた苦悩や言葉に出せない悲しみ。映画の力点は、あくまで深く、重い人間模様にあった」。
ま、そんなところかな。幼い息子を失った元夫婦や、脳腫瘍の少女や、ちょっと知恵の遅れた息子を抱えた老人といった登場人物が出てくるんだけど、彼らを捉える視線が上滑りしていないから、あざとい感じが全然しない。
刑事自身、アルツハイマーで入院中の妻と不登校気味の娘を抱えている。
だから、容疑者たちの心の内も痛いほどわかるはずなんだけど、そんな自分の身の上話はしない。彼らに「この気持ちは、経験した者じゃないとわからない」とか言われても、刑事としてじっと耳を傾けるだけ。
誤認逮捕も犯すんだけど、日本の刑事ドラマみたいに、必要以上にわめいたり叫んだりしない。
あせらず、じっくり事件に関わった人たちの感情を読み取ろうとする態度が一環してるんだけど、映画のつくり自身がまたそうなっている。
殺人の動機も、いまどき流行りのの理由なき殺人でもなければ、怨恨でも痴情でもない。
もっと人間の奥深くに隠れている感情。
それも含めて、静謐っていうことばが全編を覆っているような映画だった。
事件の舞台になる湖なんて、まるでタルコフスキーの映画にでも出てきそうな幻想的な風情だもんね。
ほとんどさざなみさえ立たないような深緑の水辺。
でも、映画の感触は近頃の日本映画でいうと、「ディア・ドクター」に似ている。
え、そうか?全然タイプが違う映画だけど。
人間を描こうとする姿勢が近い気がしたのよ。
まあ、舞台は緑あふれる田舎町だし。
物語の先を急ぐのではなく、丁寧に描写を重ねようと腐心しているし。
近頃珍しく、人間的なうるおいを感じさせる、映画らしい映画という点では一致するのかもしれないな。
うるおいの人かげ映画ね。
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私もレイクサイドマーダーケースのイタリア版だなあと思いました。
会話形式でこの映画の本質を見事に書いていて、感心しました。
「レイクサイドマーダーケース」を見ていない私には「ツインピークス」しか思い起こせませんでした。
あれは都会から来た人々の話で、
こちらは地元の人々の話という違いはあるものの、
ちょっと「レイクサイドマーダーケース」を
観直してみたくなりました。
映画は、たしかに「ツインピークス」イタリア版とも
言える空気感がありました。
デビッド・リンチに比べるとずっと正統派の映画では
ありましたが。
ミステリーでありながら人間を描いたヒューマンでもあるところも
通じるところがありましたよね~。
悲しいお話ではありましたけど、
全編に漂う雰囲気は湖のごとく静謐でしたね。
でも、湖のように静謐。
ほんとにそうですね。
近頃、騒がしい映画が多い中で貴重な1本でした。
確かに「静謐」映画でしたね。
残念なことにDLP上映で観てしまったので
景色からの情感が伝わってこなかったです。
最近多いんですが、どうなんでしょうね。
同じ入場料金払っているんだから、
フィルムと差がない質を保証してほしいですよね。