【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「女の子ものがたり」:五ノ橋バス停付近の会話

2009-08-29 | ★亀29系統(なぎさニュータウン~亀戸駅)

「ポスター、貼り紙はお断りします」って、落書きもいけないのかしら?
当たり前だろ。
でも、廃屋の壁にかわいらしい絵を描くのはいいわよね。
森岡利行監督の「女の子ものがたり」みたいに?
そう。西原理恵子の自伝的漫画の映画化。緑しかない片田舎の廃屋に高校生の大後寿々花がパステル調の絵を描く。
そんな女の子は、やがて都会へ出て漫画家になる・・・。
漫画家になった後を演じるのは、深津絵里。
田舎の女の子三人の小学生時代からおとなになるまでの友情物語だから、時代によって演じる女優が変わる。
でも、不自然さは全然なかった。
なるほど、こういう女の子が、こういう風に成長するんだろうと納得させられる。
いい若手女優がそろったっていう感じよね。
女の子の友情物語といっても、家が貧乏で、いじめと男の暴力にまみれた青春の話だから、相当悲惨な境遇なんだけど、女優たちのはつらつとした姿と、過剰さを避けた落ち着いた演出で、画面から受ける印象は、さわやかな青春映画に仕上がっている。
廃屋の絵のように、映画全体がパステル調に彩られている感じ。
とくに、女の子たちの身にまとう服の色が印象的だった。
青、ピンク、黄色・・・。絶望の中に小さな希望がゆらめくようで、鮮やかに目に映える。
ラストの主題歌を持田香織が歌っているんだけど、映画全体に、彼女の歌声そのままの感じの優しい視線が注がれていた。
世間から見れば決して恵まれているとは言えない女の子たちに、小さく、ファイト!って声をかけているような映画よね。
本当は、幼い頃から将来が見えてしまった女の子たちの、あきらめにも似た青春物語なんだけどね。
夢とか希望とかハナから捨てている、ドン詰まりの青春。
どんよりとした田舎から出ることもなく、母親たちの世代のように、じめじめと生きていかなければいけないと、若くして悟ってしまっている。
だから、せめて漫画家志望の女の子にだけには自分たちの果たせない夢を託す。
とても逆説的な言い方でな。
何て言ったかは、映画を観てもらうしかないんだけど、ああいう形でしか友情を示せない状況がどうしようもなく悲しくて、胸が痛む。
映画の表面的な口当たりの良さとうらはらに、世の中の不条理が心に重く残る。
「女の子ものがたり」なんていいながら、相当おとなの映画よね。
監督の森岡利行は、ボクサー森岡栄治を描いた「子猫の涙」といい、高く飛ぶことのできない青春を描かせたら、とても手堅い映画監督で、本来もっと評価をされてもいいんじゃないか。
じゃあ、「森岡利行をもっと応援しよう」って、貼り紙でもしようかしら。
それはダメだ。貼り紙禁止だ。
だよね。




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ふたりが乗ったのは、都バス<亀29系統>
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2 コメント

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同感です! (真紅)
2009-09-01 19:33:00
ジョーさん、こんにちは。
この映画よかったですね。。今年の邦画のベスト作の一本ではないでしょうか。
ホント、もっと評価されていい監督、作品だと私も思います!
■真紅さんへ (ジョー)
2009-09-02 21:40:14
残念ながら映画館は閑散としていましたが、
もっと多くの人に観てもらいたい映画でしたね。

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