Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

サントリーホール・サマーフェスティバル2023:三輪眞弘がひらく

2023年08月28日 | 音楽
 サントリーホール・サマーフェスティバルの今年のプロデューサーは作曲家の三輪眞弘。テーマは「ありえるかもしれない、ガムラン」。ガムラン音楽に触発され、ガムラン音楽の人と人のゆるい関係を築く機能、ゆっくり流れる時間などの(一言でいえば)ガムラン音楽の神髄を現代に生きる我々の蘇生に役立てられないか、というコンセプトだ(わたしの解釈だが)。

 ザ・プロデューサー・シリーズは毎年凝った企画だが、三輪眞弘の企画は破格だ。小ホールを使った「En-gawa」と大ホールを使った「Music in the Universe」の2本立て。まず「En-gawa」は小ホールで3日間、各々7時間の「ひらかれた家」を提供する(写真↑)。そこでは各種のイベントが開かれる。屋台も出る。インドネシアのスナック菓子や衣料品などが販売される。

 わたしが行ったのは8月27日の午後だ。イベントはジャワ舞踊の佐久間新のダンスパフォーマンスと影絵師の川村亘平斎の影絵パフォーマンス。まずダンスパフォーマンスは佐久間新の指導のもとで、観客をふくめたダンスのワークショップが行われた。たとえば「波」の模倣。大きな波が寄せては返す。その動きを見ていると、日常生活を忘れて、潮風に吹かれ、波の音が聞こえるようだ。

 影絵パフォーマンスも楽しかった。ストーリーも楽しいが、影絵を操りながら歌う川村亘平斎のバリ島の歌(?)がエスニックだ。影絵が終わってから(即興で?)演奏されたバリ島のガムラン(?)はロックのようなノリだった。

 大ホールで開かれた「Music in the Universe」は5人の作曲家の曲が演奏された。1曲目は藤枝守(1955‐)の「ピアノとガムランのためのコンチェルトno.2」。ピアノ(ミニピアノ)独奏は砂原悟。ガムランはマルガサリ(以下同じ)。大人しい曲だ。2曲目は宮内康乃(1980‐)の「SinRa」。ガムランに女声コーラス(「つむぎね」)が入る。当夜の5曲中ではこの曲に一番惹かれた。まるで絵本を見ているような鮮明なイメージだ。

 3曲目はホセ・マセダ(1917‐2004)の「ゴングと竹のための音楽」。ガムランに邦楽器の龍笛、西洋楽器のコントラファゴットそして児童合唱(東京少年少女合唱隊)が入る。国境をこえた世界音楽を目指す曲だろうが、ホセ・マセダにしては民衆的な力に欠け、上品に聴こえたのは演奏のせいか。4曲目は小出稚子(1982‐)の「Legit Memories(組曲 甘い記憶)」。さとうじゅんこの独唱が入る。どこか沖縄風だ。5曲目は野村誠の「タリック・タンバン」。柴田南雄の「ゆく河の流れは絶えずして」やシュトックハウゼンの「暦年」を思わせるシアターピース、ないしはそのパロディだ。
(2023.8.27.サントリーホール)
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