Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

B→C 上野耕平

2016年04月20日 | 音楽
 東京オペラシティのB→C(バッハからコンテンポラリーへ)シリーズにサクソフォン奏者の上野耕平が登場した。

 上野耕平は2015年9月の山田和樹指揮日本フィルの定期に出演して、イベールの「アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内協奏曲」を演奏した。すごい才能だと思った。1992年生まれ。まだ20代前半の若者だ。

 その上野耕平がB→Cシリーズに登場するというので、楽しみにしていた。チケットは完売。当日券はなし。やはり注目されている存在なのだろう。

 意欲たっぷりのプログラムだ。全曲がサクソフォンのソロ。ピアノ伴奏はなし。こんなプログラムはそうそう組めるものではない。B→Cシリーズだからこそ組めるプロだろう。

 前半はソプラノ・サクソフォンで3曲。1曲目はバッハの無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調BWV1013。バッハの名作の一つ。ピリオド楽器を含めたフルートの演奏が耳に残っているので、サクソフォンだと感じが違う。音の質量が重いというか、フルートのように抜けるような音ではないので、勝手が違った。

 2曲目はカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの無伴奏フルート・ソナタ イ短調Wq132。原曲を知らないからか、これには違和感がなかった。たとえていうなら、夜の都会のビルの谷間で、だれかが無心にサクソフォンを吹いているような、そんな現代的な感覚があった。

 3曲目は棚田文紀(1961-)の「ミステリアス・モーニングⅢ」。石川亮子氏のプログラム・ノーツによると「最初から最後まで、ビズビリャンド(同じ高さの音を運指を変えて演奏する)、微分音、重音を含む特殊グリッサンド、声を出しながら吹くなど、考えられるすべての現代奏法を駆使し続ける難曲」だが、のん気に聴いているわたしには、たとえば雨上がりに、蜘蛛の巣にびっしり水滴がついて、その糸の1本が垂れ下がり、ゆらゆら揺れているというような、そんな美しいイメージが湧いた。

 後半はアルト・サクソフォンで4曲。リュエフ(1922-1999)、西村朗(1953-)、鈴木純明(1970-)、坂東祐大(1991-)の曲が演奏された。それぞれに面白いポイントがあったが、なにしろ密度の濃い力演が続いたので、年寄りは(わたしのことだが‥)ぐったり疲れてしまった。でも、これが若さの特権だ。B→Cの意義でもある。
(2016.4.19.東京オペラシティリサイタルホール)

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