Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

鈴木秀美/オーケストラ・ニッポニカ

2022年07月25日 | 音楽
 「芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ」が設立20周年を迎えた。それを記念して、今年度の3回の演奏会は日本人作曲家の作品を特集している。昨日はその第1回。1曲目は古関裕而(1909‐1989)の交響詩「大地の反逆」(原典版)(1928)。暗雲渦巻くロマン派風の作品だ。古関裕而の習作といっていいと思う。

 プログラムノートによれば、本作品は1923年に発生した「関東大震災に題材をとったといわれる」そうだ。それにしても「大地の反逆」という大仰な題名には、まだ10代の古関裕而の気負いが感じられる。微笑ましいというべきか。

 2曲目は早坂文雄(1914‐1955)の「ピアノ協奏曲第1番」(1948)。これは当演奏会の「発見」だった。隠れた名曲だと思う。全2楽章で、第1楽章は滔々たる流れのレント、第2楽章は活気のあるロンド。作曲当時の時代背景を思うと、第1楽章は敗戦の悲劇、第2楽章は戦後の復興を感じさせる。

 ピアノ独奏は務川慧悟。若いピアニストがこのような作品に取り組んでくれるのは嬉しい。いずれ再演の機会があるのではないか。というよりむしろプロのオーケストラが務川慧悟を招いて再演の機会を提供するように望みたい。

 アンコールが2曲弾かれた。わたしの知らない曲だったが、演奏会場の紀尾井ホールのホームページによると、早坂文雄の「室内のためのピアノ小品集」より第12番と第14番だった由。

 プログラムの後半は芥川也寸志の代表作2曲。まずは「エローラ交響曲」。マグマのようなエネルギーが噴出する演奏だった。それにしてもこの曲は、本来は実験的な性格をもっている。芥川也寸志は次のように書いている。「全20楽章。これらは2ツの性格に分けられています。レント、アダージョの楽章と、アレグロの楽章です。各楽章の演奏順位は指揮者に一任され、ある楽章を割愛することも、重複することも自由です(ただし、第17楽章から第18楽章へ、第19楽章から第20楽章へは常に続けて演奏される。)」と。ところが実際の演奏では、演奏順位は固定化されているらしい。わたしがいままで聴いてきた演奏もみなそうだったのだろう。いつか異なる演奏順位の演奏も聴いてみたいものだ。

 最後は「交響管弦楽のための音楽」。第2楽章アレグロが鮮烈な演奏だった。オーケストラの名称に「芥川也寸志メモリアル」と冠する当団体の面目躍如たるものがあった。なお最後になってしまったが、指揮者は当団体との関係も長い鈴木秀美だった。オーケストラをよくまとめていたと思う。
(2022.7.24.紀尾井ホール)
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