Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ロジェストヴェンスキー/読響

2016年09月27日 | 音楽
 ロジェストヴェンスキーは今年85歳だそうだが、その演奏は衰えていない。指揮棒の先であたりを払うような動きに変化はなく、昔ながらの切れ味鋭い演奏だ。

 1曲目はショスタコーヴィチのバレエ組曲「黄金時代」。作曲者若き日の作品だ。バレエ音楽といっても、チャイコフスキーやグラズノフ、あるいはプロコフィエフなどとはまったく異なる音楽。シニカルで乾いた、薄い響きがする。バレエとして上演した場合、どんな振付になるのか、想像もできなかった。

 2曲目はショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番。これも怖いもの知らずの若き日の作品。ピアノ独奏は(いうまでもなく)ポストニコワ。運動神経がまったく感じられない演奏だが、第2楽章のテーマが、甘く暖かく、ノスタルジックに弾かれたことが収穫だ。まるでショパンのようだった。

 今更こんなことをいっても始まらないが、ロジェストヴェンスキーとポストニコワとは抱合せ販売のようなものなので、ピアノがどうだ、こうだといっても仕方がない気がする。2人はリハーサルなどほとんどしないで演奏するのだろうなと思いながら聴いた。

 3曲目はショスタコーヴィチの交響曲第10番。ロジェストヴェンスキー特有のじっくり構えたテンポで曲のすべてを克明に描く演奏。テンポが(加齢によって)遅くなった感じはしなかったが、実際はどうだったのだろう。たとえ少し遅くなっていたとしても、テンポよりも、演奏の克明さのほうを感じた。

 第1楽章の複雑な構成は、道に迷わず、冴えわたった視野のもとで演奏され、第2楽章のスケルツォは、グロテスクというよりも、ストレートな表現で演奏された。第3楽章の(当時ショスタコーヴィチが想いを寄せていた)エリミーラのテーマは、印象深く演奏され(首席ホルンの松坂さんの好演)、第4楽章は、熱狂に身を任せずに、整然とした音楽の形を保っていた。

 正直にいうと、わたしはこれで溜飲を下げた。先日の某人気指揮者の第8番を聴いたときの不満が、これで解消した。というのも、今回はショスタコーヴィチの様式に触れたと感じられるからだ。先日はオーケストラの鳴らし方の面白さしかなかった。

 読響の演奏も鮮やかだった。パワーが炸裂したが、一本調子にはならずに、弱音への配慮も怠りなく、そのコントラストが効いていた。音色の変化も適切だった。読響の実力が発揮された演奏だ。
(2016.9.26.サントリーホール)
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