Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

トマ・チャバのギターリサイタル

2016年09月05日 | 音楽
 近頃、わたしの住んでいる街に、いくつかのサロン・コンサート用の会場ができた。いつかは行ってみたいと思っていたが、そのうちの一つの会場でギターの演奏会があったので、この機会に行ってみた。会場は50人も入れば一杯になるようなサロンで、居心地がよかった。

 演奏者はトマ・チャバThomas Csaba。1992年生まれのフランス人。2014年の東京ギターコンクールで優勝した。プログラムが本格的だ。いかにも若者らしい意欲にあふれたプログラム。

 1曲目はカステルヌオーヴォ=テデスコ(1895‐1968)の「24のゴヤのカプリチョ」より「画家」と「類は友を呼ぶ」。カステルヌオーヴォ=テデスコはイタリア生まれだが、ギター曲を多数書いているのはなぜだろうと、(よい機会だから)調べてみたら、ギターの巨匠アンドレス・セゴビア(1893‐1987)と親交があったらしい。本作もその縁で書かれたものか‥。スペイン的な情緒が漂う曲。それにしても人間の愚かさを風刺したゴヤの銅版画に基づく曲があるとは驚きだ。

 2曲目はミゲル・リョベート(1878‐1938)のカタロニア民謡の編曲「盗賊の歌」、「アメリアの遺言」そして「聖母の御子」。リョベートという人は知らなかったが、セゴビアの師匠だそうだ。3曲ともスペイン情緒満点の曲。

 3曲目はカステルヌオーヴォ=テデスコのギター・ソナタ「ボッケリーニ賛歌」。堂々とした大作。チャバのトークによると、カステルヌオーヴォ=テデスコはギターが弾けなかったので、技術上の問題については、セゴビアに相談していた。本作も一般に流布している譜面にはセゴビアの手が入っているが、最近オリジナルの草稿が発見されたので、(部分的には演奏不能だが)できる限りオリジナルで演奏してみるとのこと。どこがどう違うかは、わたしには判別できないが、その意欲を買いたい。

 4曲目はベンジャミン・ブリテン(1913‐1976)の「ノクターナル」。ダウランドの「来たれ、深き眠りよ」に基づく自由な変奏。最後にダウランドのテーマが現れる。いかにもブリテンらしい渋い曲。なお、演奏に合わせて、チャバが制作した映像が映写された。

 5曲目はジャック・エトゥ(1938‐2010)の「組曲」。この人も知らなかったが、カナダのフランス語圏の人。ギターを鳴らすのがうまいと思った。

 終演後、歩いて家まで5分。
(2016.9.3.プリモ芸術工房)
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